コロナウイルスのパンデミックと「分からないこと」への恐怖

04 8月, 2020
「分からないこと」への恐怖は、脅威の解読ができない時、単にそれが私達に理解しがたいという理由で、前面に出てきます。これにより感じる無力さに対応し、恐怖と向き合うためのより積極的な心の状態を作ることが大切です。

「分からないこと」への恐怖の概念は、ジークムント・フロイトが研究したもので、またコロナウイルスのパンデミックにより世界にもたらされたものとも関係します。幼少期以来感じたことのない恐怖を多くの人が経験しています。私たちは強力な力を前にし、自分の弱さや無力さを感じています。

この基本的な感情は、子どものストレスのような分からないことへの恐怖を体験する時に表象します。あらゆる方向から迫られるような恐怖を感じ、私達は苦しみ悩みます。自分で分かっている特定のものに対する恐怖とは違うもので、多くの影があり予期せぬものへの恐怖を感じます。

パンデミックにより、子どもの頃のように行動が大きく制限されています。つまり自分達は私達を導く何か、決定する何か、あるいは機会に完全に依存しているということです。まるで森に裸足で置き去りにされた子どものようです。

「最も古く、最も強い人間の感情は恐怖である。そして、最も古く、最も強い恐怖は、分からないことへの恐怖である。」

-H・P・ラヴクラフ、『文学と超自然的恐怖』-

分からないこと 恐怖

「分からないこと」への恐怖はどのように働くか?

フロイトがこれを研究する以前、分からないことへの恐怖は、単に分からないということから生まれる恐怖を生む脅威や何か新しいものだと考えられていました。しかし、精神分析学の父フロイトにより、この考え方は変わりました。フロイトはこれに関し、精通と未知という2つの概念を使って研究しました。

精通とは、自分が知っているものや日常的な経験のひとつとして安心感を得られるもののことです。人、状況、空間、考え、感情などは、私達が精通しているものです。

そして、未知とは自分の暮らす場所の外の世界のことです。知らないものというより、認識できないもののことです。それに関し、ほとんどあるいはまったく分かりません。日常的なものではなく、その道理を理解できず、どのように受け止め、対応すべきかも分かりません

精通と未知の関係

分からないことへの恐怖は、精通が未知になったり、未知が精通になる時に生じるとフロイトは言います。新しいことが恐怖を感じさせるのではなく、精通していると思っていたものが未知のものになったり、その反対が起こると恐怖を感じます。苦しみが生まれるのは、一方が他方に変わる時です。

ホラー映画は、これに基づいています。ドラキュラが怖いのは、人間と同じようであると同時に、まったく違うものであるためです。上品な姿から、忌まわしい怪物に恐ろしく変化する時、恐怖が増大します。

もしドラキュラがいつも恐い姿であったでも怖いでしょうが、そこで感じるのは、分からないことへの恐怖とは別のものです。視線をそらし、向き直り、考えないようにすることができます。しかし、ドラキュラが怪物であり、同時にそうでないからこそ、私達はドラキュラの存在のあいまいさにとらわれ、分からないことへの恐怖の領域に入り込むのです

反対に、未知から精通へと変わった場合も同様です。これはホラー映画に見られます。周りは自分と同じだと思っていた主人公が、突然奇妙なものに囲まれていることに気づいた時などです。例えば、『ローズマリーの赤ちゃん』では、分からないことへの恐怖を導く変化を目の当たりにします。

分からないこと 恐怖

パンデミックと分からないことへの恐怖

コロナウイルスのパンデミックは、分からないことへの恐怖に分類される要素すべてが含まれています。突然、私達は、周りのものすべてを疑いの目で見るようになりました。

比較的安全だと思っていた世界で、今ほぼすべての場所に危険が潜んでいます。大切にしていた人にリスクの可能性が迫ります。ウイルスの存在はどこにでもあり、またはどこにもない可能性もあります。分からないことへの恐怖が、見えないという現実によって増大します

これに加え、信頼できる親戚や友達さえも、ウイルスのリスクを抑えることはできません。分かっているのは、ウイルスの影響は非常に残酷なもので、私達にできる一番いい方法は、ウイルスから身を隠すことだということです。私達のとって未知であるウイルスは、今どこにでも広まっているようで、私達が見るものや知るものすべてを操っているようです。

分からないことへの恐怖への対処

分からないことへの恐怖には、どのように対処できるでしょうか? まず、その脅威を客観的に知ることです。コロナウイルスの場合、主に感染の形態に関しては、科学的に証明された情報を頼りにしましょう。私達全員がこのアドバイスを大切にすると感染は縮小します。問題の核心は、人や物の濃厚接触にあります。このような状況では、万全の注意を払う必要があります。

そして今の状況で、自分は子どものように感じるかもしれませんが、実際は大人であることを頭にいれておきましょう。大人であるからこそ、自律や選択ができます。制限されているかもしれませんが、状況をうまく使い、自分の気持ちや新たなルーティンをどのようにすべきかを考える必要があります。心を強くもち、そして個人としても生物としても、私達には自分達を守る術があると信じましょう。

Freud, S. (1973). CIX. Lo Siniestro. Obras completas, 3.