ダニエル・カーネマンの「速い思考」と「遅い思考」

あなたは、ダニエル・カーネマンの提唱した二つの思考システムについて耳にしたことがありますか?彼は、人間が日々使用している二種類の思考法について説明した理論を生み出した後、2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者です。
ダニエル・カーネマンの「速い思考」と「遅い思考」

最後の更新: 10 2月, 2021

あなたは、日々のタスクをこなしている際にご自分の脳が二つの思考システムを作動させていることに気づいていますか?また、ご自分がどのように意思決定をしているのかご存知ですか?このテーマに関してはたくさんの心理学的理論が存在しますが、その中の一つであるダニエル・カーネマンの思考理論は、特に高い影響力を保持してきました。

カーネマンは、2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者です。彼が2012年に執筆した『ファスト&スロー』という本はベストセラーとなっています。そしてこの本の中で彼が提唱しているのが、巧みに識別された二つの思考システムなのです。システム1がより直観的で素早く自動化されているのに対し、システム2の方はもっと思慮深く論理的で、ゆっくりとしています。では、これらのシステムについて他にどんなことを知っておくべきなのでしょうか?一体どんな時にそれぞれが使われるのでしょう?両システムは相互やり取りをするものなのでしょうか?読み進めてその答えを解明してください。

“強力な思考というのは、巨大な感情が付随しているものだ”
~ -バンガンビキ・ハビャリマナ- ~

ダニエル・カーネマン 速い思考 遅い思考

ダニエル・カーネマンによる、速い思考と遅い思考

カーネマンの思考システムは、『ファスト&スロー』と題された書籍のテーマとなっています。彼はパレスチナ生まれ、アメリカ合衆国で育った心理学者で、多くの人々から世界で最も重要な思想家の1人であると見なされている人物です。そして前述の通り、意思決定の合理的モデルが評価され、ノーベル賞も受賞しています。

彼の思想は、医学、政治学、経済学の多領域から影響を受けています。そんな彼が自著の中で説明しているのが、人間の思考を形作っている二つのタイプの思考法あるいはシステムです。システム1は速く、直観的で感情的である一方、システム2は遅く、思慮深くて論理的だとされています。

システム1(速い思考)

この思考システムは高速で自動的かつ感情的なシステムで、同時に類型的で潜在意識的なものでもあります。システム1が果たしているのは、人的タスクに有効な(常に役立つとは限りませんが)直観を生み出す機能です。このシステムは暗黙的システムとしても知られます。

また、システム1は直観とヒューリスティックスを介して動作します。私たちが歩いたり髪をとかしたりといった日常的タスクを行えるのはこのシステムの働きのおかげです。加えて、少なくともカーネマンの考えでは、新たな情報を既に脳内にあるパターンと関連づける作業もこのシステムが行なっています。要するに、頭脳は新たな経験をするごとに毎回新しいパターンを作り出している訳ではなく、システム1によって新たな情報と古い情報とを結びつけて有意義な関係性を作り出しているということです。

システム1はどのように動作する?

人間は、日常生活における大半の問題の決定にシステム1を用いています。つまり、このシステムによって素早くシンプルな決断を下したり、自動的に結論にたどり着くことができるのです。

システム2(遅い思考)

カーネマンの提唱したシステムの二つ目はゆっくりとした、より多くの労力を必要とする思考です。システム1ほど頻繁には使われず、こちらの方が論理的かつ計算的で意識的です。つまり、例えば問題を解決せねばならず、完全な覚醒状態にいる時などに、人はシステム2を採用しています。

その機能は、システム1によって生じた直観を観察して制御した後に最終決断を下すことです。システム1と異なり、システム2は言語の学習やある事柄についての熟考など、より複雑なタスクの実行を可能にします。

どのように動作する?

この二つ目のシステムは、複雑あるいは難しい決断を下すためのものです。したがって、より思慮深いタイプの思考ということになります。複雑なタスクと直面した時に優位になるシステムであるため、これを動作させる時にはより高い集中力が必要です。また、意識的な答えを出す際にもこのシステムが使われます。

ダニエル・カーネマンの「速い思考」と「遅い思考」

両システムの相互作用

これらの二つの思考システムは、人間の日常生活で絶えず活動しており、互いに作用し合っていますが、手元にあるタスクに応じてどちらか一方の勢力が強まります。

各システムにそれぞれの機能があり、システム1が周囲から知覚したものや視覚情報を関連する記憶に結びつけて思考を決定づける一方、システム2はシステム1が作り出した直観から結論を導き出す役割を担っています。後者の思慮深いシステムは、前者よりもスピードが遅く、高い集中力を要するため(意思決定においては集中力が中心的な要素となります)、複雑な意思決定を行う際に有効です。だからこそ、カーネマンはシステム2のプロセスを「遅い思考」と呼んでいるのです。

両者の相互作用についてお話すると、システム2が手一杯の時、人間の行動はシステム1の方からより多く影響を受けます。

簡潔に言えば、思考は脳内で意思決定や問題解決を行うために脳内で動作する二つの思考システムを介して表出するのだ、というのがダニエル・カーネマンの主張です。しかし彼があるインタビューで語ったところによれば、どちらのシステムが優勢で、どちらが大半の時間自身の行動を決定づけているのかについて、人々は深く考えずに生活しているそうです。

それはあなたに興味があるかもしれません...
「アベイラビリティ・バイアス」っていったい何?
La Mente es MaravillosaLeerlo en La Mente es Maravillosa
「アベイラビリティ・バイアス」っていったい何?

私たちはよく、頭に浮かんだ一つ目の考えを分析はおろか疑問にも思わないまま当然の事実として受け入れています。「 アベイラビリティ・バイアス 」と呼ばれるこの現象により、私たちは不適切な意思決定をしたり直近の経験を他の物事より重要視してしまうのです。



  • Garnham, A. y Oakhill, J. (1996) Manual de Psicología del Pensamiento. Ed. Paidós.
  • Kahneman, D. (2012). Pensar rápido, pensar despacio. Ed. Debate.