デイヴィッド・イーグルマンと、意識というミステリー

16 11月, 2020
デイヴィッド・イーグルマンはかなり独特な神経学者です。他の同業者たちとは異なり、彼は細かな点に関する議論を永遠に続けることを嫌い、ビッグデータを好みます。また、彼には偉大な発明家としての一面もあります。

デイヴィッド・イーグルマンは神経学者の中でも特に人気の高い人物です。彼の担当するテレビ番組、『The Brain with David Eagleman』は何百万人もの人々から視聴されています。学問的知識とエンターテイナー的素質とを併せ持っていることから、多くの人に「脳科学界のカール・セーガン」と呼ばれて親しまれているのです。

その名声や人気とは関係なく、デイヴィッド・イーグルマンは科学界に非常に興味深い形の貢献を果たしてきました。脳科学を学ぶ者として、彼は自身にとって非常に面白くて魅惑的なテーマである意識に関する疑問に焦点を当てています。そして実際にこれについての逆説的で好奇心をそそられるような情報を私たちに提供してくれているのです。

デイヴィッド・イーグルマンは、意識とは「脳というマンションの中の箒部屋」であり、過大評価され過ぎている、と述べています。彼はジークムント・フロイトの考えに同意しており、無意識に関するフロイトの理論の追従者です。結局、無意識の方が意識よりもよっぽど幅広くて奥深いものだと彼は考えています。

“結局、私たちの意識的な心、つまり自分で自分自身だと見なしている部分は、本当は脳内で起こっている現象の中で最も小さな部分に過ぎません。そしてほとんどの場合、情報を見つけるのもこの部分が一番最後なのです”

-デイヴィッド・イーグルマン-

デイヴィッド・イーグルマンと意識

意識というテーマには未だ謎が多いままですが、デイヴィッド・イーグルマンはかなり面白いことを指摘しています。彼は、人間が意識を理解しようとするのはまるで魚が水のない世界で生きる方法を模索するのと同じようなことだ、と主張しているのです。

実際、彼の主張は正しいと言えるでしょう。脳内で起きる現象の大半は、私たちが気づかぬうちに行われています。だからこそ、他の神経学者たちと同様にデイヴィッド・イーグルマンも「自由意志」のようなものの存在は信じていません。脳のある領域はその他の領域から突き動かされており、そのことから物理法則で発生するあらゆる現象を理解することができるのだ、というのが彼の信条です。

しかし一方で彼は偏見にとらわれない心も保ち続けており、「現代科学では理解できない何かが存在していて、その存在こそが頭脳における自由空間に対応している」という可能性を排除していません。さらに彼は、情動とは高度に複雑な現象であり、これらが私たちの周囲のあらゆる物事の意味合いを決定づけているのだ、とも主張しています。

理性が具体性の高い情報に合わせて働くのに対し、情動はもっと大きなスケール上の複数のデータに合わせて働きます。彼は最適な決定とは認知と情動が伴われたものだと指摘しました。さらに、理性のみによる決定は、特に倫理的観点から分析を行う際には危険なものとなり得る、とまで述べています。

デイヴィッド・イーグルマン 意識 ミステリー

レオナルド・ダ・ヴィンチとの類似点

デイヴィッド・イーグルマンに関する最も衝撃的な事実の一つは、彼が偉大な発明家であるという点です。TED Talkに出演した際に行われた彼の発明の公開展示は特に忘れられ難いものとなりました。番組の冒頭ではゆっくりとした話し方、動き方をしていた彼でしたが、講演の途中でシャツを脱ぎ、肌に直に着ていたチョッキを聴衆に披露します。

イーグルマンは、自身の発言全てがどのように「同時通訳され」て彼の肌に伝わっているのかを示しました。言葉が振動へと変換され、その振動が小さな無数のモーターを通じて彼の背中へと巡るという仕組みです。彼はこの振動を携帯電話のバイブのようなものだ、と例えています。

彼が何かを話すときに喉頭から発せられる信号は、皮膚が認識できるような振動へと変換され、今度はそれが脳に伝えられるのです。その結果、脳は元の音を特定することができます。これは一体どういうことなのでしょうか?簡単に言うと、デイヴィッド・イーグルマンは、このチョッキによって聴覚障害者が音声を認識できるようになることを私たちに見せつけたのです。

この講演の後、複数の企業がこの発明に関心を示したため、デイヴィッド・イーグルマンはそのうちの一企業と契約し、大量生産に向けた研究を進めています。現在のところ、このチョッキは約500ユーロほどの価格であることをお伝えしておきましょう。しかし、この神経学者が特許を有しているのはこの発明だけではありません。

生産的な科学者

彼は、強打を受けたスポーツ選手が脳震盪を起こしているかどうかを判定できる機器を創り出しました。この機器はビデオゲームのような働き方をするのですが、12の変数を評価して予備的な診断を行うことができます。

さらに彼は、ある人物がアルコールを摂取しているかドラッグを服用しているかに関する警察の判定を助けるような機器も設計しています。また、ここで彼の非常に大胆なアプローチについても触れておきましょう。実は、将来的には司法裁判においても評決を下す前に神経科学を考慮すべきである、というのが彼の意見なのです。

犯罪の裏には被告の「自由意志」を超えた要因がある、と彼は考えています。例えば、1960年代にアメリカ合衆国で生まれた人々は他の人々よりも法律を犯しやすいそうです。なぜでしょう?その理由は誰にもわからないのですが、これは事実なのです。実のところ、このトピックに関して彼は数年間研究を続けています。

現在デイヴィッド・イーグルマンが取り組んでいるのは、統合失調症に関連する機器の開発です。基本的に、この機器は統合失調症患者のポケットに入れて持ち運ばれ、特定の知覚エラーの修正を行います。成功すれば、この発明は本当に革命的なものとなるでしょう。

“現実は脳によって受動的に記録されるわけではなく、脳によって積極的に組み立てられるものなのです”

-デイヴィッド・イーグルマン-

Eagleman, D. (2013). Incógnito: las vidas secretas del cerebro. Anagrama.