司法神経心理学の定義、目的、採用について

09 11月, 2020
皆さんはこれまでに、神経心理学者たちは一体裁判の間に何をしているのだろうと疑問に思ったことはありますか?この記事では、司法神経心理学を詳細に解き明かしていきますよ。

皆さんは、司法裁判の間神経心理学者がどんな役割を担っているのか考えてみたことがありますか?ご存知かとは思いますが、神経心理学では脳と認知・行動・情動機能との関係性が研究されています。こういったあらゆる研究が、疾患や日々の問題への私たちの理解をより深めてくれているのです。神経心理学の範囲内には、特定の学問領域に特化した専門分野が存在しますが、その中の一つに司法神経心理学があります。

この分野は、司法裁判におけるその有用性の高さから、1980年代に創始されました。司法神経心理学とはどういったものなのか、また、どのように様々な文脈に適用されているのかを学ぶことはとても面白い経験となるでしょう。また、いつ専門家の助けを求めるべきなのかを知っておくことも非常に有益です。

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司法神経心理学の定義

司法神経心理学とは、神経心理学が司法の領域に適用されたものです。司法神経心理学者は、裁判に関与する人の中に何らかの認知損傷あるいは認知機能障害を抱えた人物がいる場合に、その事実に関する証言を行います。したがって、認知機能の損傷を抱える人々が何らかの補償を受けることを求めているようなケースでは特に、彼らの存在が非常に重要なのです。

歴史的に見ると、心理学者たちが司法裁判で証人の役割を果たし始めたのは1960年のことでした。このきっかけとなったのが、「ジェンキンス vs アメリカ合衆国裁判」と呼ばれる有名な裁判です。それ以降、地方高等裁判所は精神疾患に関する専門家の意見を取り入れることの有益性を認識するようになりました。

そうはいっても、司法神経心理学が登場したのは1980年代になってからのことです。その背景には以下のような様々な要因がありました。

  • 行動と脳との関係性に関する定量研究の増加。
  • 神経学的病変の存在、種類、および位置を推測するために用いられる解釈戦略の登場。
  • 疾患の有無の判断の必要性。
  • あらゆる神経疾患の行動的・認知機能的特徴の説明の必要性。
  • 心理社会的機能への損害を示唆する必要性。
  • 予後の判定の必要性。
  • 最も適切な介入方法に関する決定の必要性。

司法神経心理学の目指すゴールとは?

先ほど説明した通り、司法神経心理学は臨床神経心理学のモデルや方法論、器具や手段、そして知識を司法の文脈に適用したものです。

発生した問題や対処すべき状況が存在することを踏まえ、司法神経心理学ではまず第一に司法分野の考え方や役割を取り入れています。つまり、主要な目的はある個人が認知機能の問題を有しているか否かの判断ではなく、むしろその個人の抱える困難が具体的にその時取り組んでいる法的問題に影響しているか否かを判断することなのです。

専門家は、刑事・民事訴訟における司法神経心理学者の主な役割は以下であると決定づけました。

  • 個人の機能障害の有無を判断すること。
  • その機能障害が人の日常生活にどう支障をきたしているかを立証すること。
  • この欠陥がどういった予後に繋がり得るのかに関する専門的意見を提供すること。
  • 訴訟と機能障害との関係性を立証すること。

したがって、個人の抱える問題についての説明やその中枢神経系との関係性の立証から始め、最終的に疾患に関する思慮深く信頼の置ける鑑定結果を作成することが目指すゴールだということです。また、司法神経心理学者は査定結果や治療方針を含む推奨事項の作成を行うこともあります。

神経心理学的レポート:臨床的文脈と司法的文脈の間に違いはあるのか?

神経心理学的レポートとは、事後査定を書き記したものです。この中で専門家は査定の結果をまとめています。ただし、それぞれの専門分野に応じてその目的や構成要素が異なる点に注意しなければなりません。次に、それら全てに共通する点と異なっている点について見ていきましょう。

以下があらゆる分野に共通している点です。

  • 病歴。これは個人の病歴と社会的発達についての報告です。
  • 損傷の特定。損傷の位置とそれを引き起こした原因についての説明。
  • 病変について。個人が認知面、感情面、そして社会面で抱いている可能性のある困難に関連する査定の結果を示したものです。また、損傷の深刻さについても特定しています。
  • 予後とリハビリテーション。レポートのこの部分では、損傷によって起こり得る長期的影響が解説されます。また、治療や回復に向けての推奨事項も記載される場合があります。

また、先ほど申し上げた通りに各ケースによって大きく異なる点もいくつか存在します。司法レポートには何よりもまず、損傷とその損傷がもたらした変化との間の因果関係についての記述を含めねばなりません。特に当人の仕事や家庭での活動に関連する変化が重要です。

次に、それらの活動を行う能力がどれくらい低いのかについても記載されていなければなりません。職場でどんな問題を抱えている可能性があるのかについて、あるいはなぜ全く仕事ができないのかについてが明白に示されている必要があるのです。

最後に、このレポートには損傷による影響が未だ続いているかどうか、そしてその人物の状態は今後改善する可能性があるかもしくは悪化する恐れがあるかについての記載が必要です。その内容は裁判所が与える可能性のある補償の種類に影響するため、特に重要だと言えます。

司法神経心理学の定義、目的、採用について

司法神経心理学の採用

司法神経心理学は、二つの大きな法的カテゴリーで取り入れられています。このことが訴訟の結果をかなり左右することになるのです。

民法および労働法

  • 制限行為能力者あるいは禁治産者(成年被後見人)の判断。ここでは、脳損傷が当人にいかに弊害を与え、機能的な支障が出ているかについての情報が心理士の査定によってもたらされます。これにより、その人物が制限行為能力者か否かが示されるのです。
  • 障害、その影響、そして脳損傷の査定。司法神経心理学が最も重要な役割を果たすのがこの部分で、脳損傷により引き起こされた認知面・感情面の副作用が査定されます。このレポートによりその人物が何らかの補償を受け取れるかどうかや行為能力が無いと見なされるかどうかが決まってくるため、法律的な理由からその査定が必要なのです。
  • 労働能力の判定。これに関しては、専門の神経心理学者が長期的な脳のダメージの有無を判断します。また、そのダメージが当人の労働能力や技術に与えるであろう影響についての説明も行います。

刑法

刑法においても、神経心理学者たちは重要な役割を担っています。具体的に言うと、訴訟に関与する人物が脳損傷に関連する病理を抱えている場合に彼らの存在が求められるのです。

また、神経学的病理によってもたらされたわけではない稀な症状の特定も行います。例えば詐病を見破ったり、精神疾患によって引き起こされた認知障害の増幅を検知したりするのです。司法神経心理学者はよく以下のような文脈でその役目を果たしています。

  • 出廷に耐え得る精神状態か否かの判定。ここでは、神経心理学者が行動面の問題や認知機能の問題の有無および度合いの客観的判断を助けます。また、それらの問題が法手続きを果たすのを困難にし得るかについての指摘も行います。
  • 刑事責任。ここでの神経心理学者の役割は、認知機能の問題の存在を否定あるいは証明する情報を提供することです。これは、被告が自身の行動の犯罪性を理解しているか否かにかかっています。また、被告が罪に問われている犯罪行為の責任を負えるかどうかについての判断を行うことも彼らの役目です。
  • 被害者の査定。ここでは、当該の犯罪行為によって被害者が経験し得る波及的な悪影響に焦点を絞った査定がなされます。

最後になりますが、司法神経心理学は比較的新しい学問分野であるとは言え、司法の世界において大きな影響力を有しているという事実を理解しなければなりません。なぜなら、人間の脳の働き方は法手続きのなかで下される決断に絶大な影響を与えるからです。最終的に、これらの査定や心理士たちの意見が評決を決定づけることがよくあるのです。

  • Fernández Guinea, S. (2001). La neuropsicología forense: Consideraciones básicas y campos de aplicación. Revista de Neurología, 32(08), 783. https://doi.org/10.33588/rn.3208.2000188
  • Jarne, A. y Aliaga, A. (Comps.) (2010). Manual de neuropsicología forense. De la clínica a los tribunales. Barcelona, España: Editorial Herder.