読書中の脳では何が起こっているの?

2020年2月20日
読書は自分を別の世界に連れて行ってくれて、同時に今とは違う役割を担う可能性を提示してくれる、と言う人々がいます。さらに、最近では本を読んでいる時に脳内で起こっている読書に関連するたくさんのプロセスがあることもわかっています。以下では、それらがどう機能するのか説明してきます。

読書中の脳内は、たくさんの刺激で溢れています。それは、この活動が短期的にも長期的にもたくさんの利益をもたらしてくれるからです。例えばストレスを減らし、睡眠の質を上げ、語彙や記憶力を向上させ、知性も研ぎ澄ましてくれます。しかし本を読んでいる時に実際には頭の中で何が起こっているのかを知っている人はほとんどいません。

一般的に読書とは、最終的に意味をなす単語を読み解いていくプロセスです。そして研究的観点から言うと、それと同時に起こるあらゆる小さなプロセスについて知ることはとても興味深いことだとされています。そうやって全てのステップを特定できでば、学習障害のある人々を手助けすることができるのです。

最近まで、読書中に脳内で起こっているプロセスをリアルタイムで特定するのは非常に困難でした。しかし今では、神経科学によって一連のタスクが行われている間の脳の活動を観察できるようになっています。これらは全て、fMRIやその他の技術のおかげです。そして世界的に言うと、神経科学では読書と認知、感情、学習、そして認知パフォーマンスとの関係性について解き明かすことに関心が寄せられています。

読書中 脳

読書中の脳 − “単語”から”意味”へ

活字を見てから脳の左後頭部が活性化するまでにはたった400ミリ秒しかかかりません。この領域は、文字の綴りや音韻符号化を行う領域です。すでに知っている単語の場合、即座に形態学的・統語的・意味論的特定が始まります。

形態認識は最も基本的なプロセスです。これによって、脳の左側前頭部が活性化し、単語を形成する文字を認識し、特定することができます。同様に、構文認識に関しては、単語が名詞なのか動詞なのか、そして過去、現在、未来どれに言及しているのかを認識していきます。このように、脳は後からこれらを認識できるように単語間の関係性を作り上げるのです。

これらのプロセスは脳の様々な領域で、同時多発的に相互に影響し合いながら行われます。そして上記で説明したプロセスを考慮すると、脳の視覚野は単語を目にすると活性化するということになります。その後、これは角回転へと移ります。

この時、それは紡錘状回に送られる音声表記に変わります。その後ウェルニッケ野などの側頭部および前頭部に移動し、単語の意味や理解へのプロセスに繋がっていくのです。この時、意味のある情報と形態認識を統合させるために再度下前頭回でこれらが発見されます。

文章読解

読んでいる単語の意味を理解したら、次はそれらの意味論的・統語論的関係性を分析する時間です。例えば、単語の並び順、時制、補語、主語に関する情報などです。

統語処理は左前頭葉と前側頭葉で行われているようです。それから、テーマ処理と統語処理のために左下部に移動します。これはさらに主語と述語の関係性と関わるものです。また、文全体の意味論的意図の評価にも関わっています。

同時に、文の不適合さを検出したり、下前頭回に関わる新奇性効果を検知するメカニズムが働きます。これに関しては、この領域の中では不適合なフレーズを読んだ時に、一貫性のある文を読んだ時よりも激しい活性化が見られます。

読んでいるものの理解には記憶も関わっています。これは、幅広い意味の中から判断するためには、経験から探り出す必要があるためです。例えば、側頭部の一部は人間やツールに関連する情報を読んだ時にのみ活性化します。

この点に関して、サウスカロライナとカリフォルニアの研究チームはfMRIを用いた研究で、単語が現実世界との結びつきを呼び起こすことを明らかにしています。つまり、単語はまるで実際にそれを経験したかのように同じ形で脳の領域を活性化させるということです。その一例として、操作可能な何かに関連する意味を持つ単語が、計画立てやタスクの実行に関わる領域や運動野を含む領域の活性化を引き起こすことが挙げられます。

感情処理と認知処理

感情は、主に大脳辺縁系に位置するプロセスの結果として生まれるものです。視床下部もこの領域にあります。この脳の領域は記憶や学習に関与しているため、感情は新しい情報を統合するための基盤となるプロセスと言えるでしょう。

さらに、読書中の感情は注意力のネットワークも活性化させます。実は、感情にまつわる語彙専用の特別なメカニズムが存在しています。科学者たちは、感情が込められた単語は、それがエロティックなものであれ無礼なものであれ、中立的な単語と比べて読者が注意を払う時間が長くなることを発見しました。したがって、感情的に刺激的な物語はモチベーションネットワークや注意力のネットワークを活性化させるのにも役立ちます。

この意味では、背側前頭前野と前帯状皮質が読書中に活性化することとなります。つまり、読書によって注意力、計画立て、連想、そして情報管理のプロセスを開始することができるのです。

最後に、全ての情報を統合するために前頭前皮質が活性化しますが、その間前帯状皮質は注意深さを保ち、より逐語的に読んでいるものに集中します。

“本を読む者は、死ぬまでに何千もの人生を生きることができる。読書をしない者はたった一つの人生しか生きられない”

ジョージ・R・R・マーティン

読書中 脳

読書中の脳

読書中の脳内の興奮は非常に高くなります。それは読書によってたくさんの領域が同時に活性化されるためであり、これが長期的に神経接続の量を増やし、質を向上させるという利点があります。

さらに、読書をすればよりたくさんの状況を経験することができるようになり(少なくとも脳内で)、感情的にも豊かになれるので感情処理能力を鍛えることもできる、ということが神経科学において証明されています。

  • Kweldju, S. (2015). Neurobiology of research findings: how the brain works during reading. PASAA, 50, 125-142.