ドラマシリーズ『ハリウッド』:よく知られた歴史の書き直し

09 11月, 2020
『ハリウッド』は、批評家に様々な意見があるドラマのひとつです。よく知られたストーリーや人物を再生する中で、当時のステレオタイプの役をぼやかす詩的公正が見どころです。

『ハリウッド』は、たった7話で歴史を書き直した作品です。イアン・ブレナンとライアン・マーフィーのこの新しいネットフリックスシリーズに対する意見は2つに分かれています。好き嫌いがはっきりするドラマです。色気や不平等が特徴のこの時代の表面的・妄想的書き直しだという意見も少なくありません。

『ハリウッド』は、映画がエンターテインメント界における絶頂だった時代のスターが集う黄金期の話です。1940-1950年代のハリウッドは、フィルムストリップで夢が叶い、スターが神様であったかのような時代です。

しかし、この輝かしく艶美な世界の裏には、暗い現実があります。シリーズの最初では、残酷で、儚く、不公平な世界が繰り広げられます。歴史を書き直すことができるのであれば、オスカーは今こうであっただろうと想像できます。夢のある街で誰もが別の世界を想像できるのです。

ハリウッド 歴史 書き直し

パリンプセスト:嘘と真実

『ハリウッド』が書き直しであるというのは、真の背景に基づき、新たなストーリーが書かれていることを意味します。パリンプセストという概念を使うと、これをより詳しく説明できるでしょう。パリンプセストとは、書いたものを消し、上から書き直すことができる写本のことです。原本には、書き直しの跡が残ります。

実際の話に基づいた話では、パリンプセストの要素が含まれます。真の背景も、フィクションや想像力の独自性を止めることはできません。このドラマ『ハリウッド』では、語り継がれてきた時代を明確に見ることができます。俳優や女優の質より、きれいな顔や良いイメージが重視される時代です。また、ロック・ハドソンやヴィヴィアン・リーなどの有名人も登場します。それでも、多くがフィクションです。

童話の結末

ライアン・マーフィーが、ハリウッド黄金時代の大ファンだということは、ファンの間ではよく知られています。特にベティ・デイヴィスなどの女優のファンです。2017年、ドラマ『フュード/確執 ベティ vs ジョーン』でハリウッドの有名なライバルを作品にしました。

この作品があるために、視聴者や批評家は、映画界の「黄金期」に対するより厳しい批判を期待したのかもしれません。『フュード/確執 ベティ vs ジョーン』で、マーフィーは舞台の仕事と女優であることを楽しみつつ、確執の責任者となる人物を直接的に指摘しています。このショーでは業界に対する批判的な態度が現れています。

『ハリウッド』はこれとは異なります。歴史の書き換えにはいくつも方法があります。実際の出来事を多く含めたり、あるいは、完全に新しくし直すこともできます。

そう言った意味で、『ハリウッド』を見て、最近のタランティーノ作品『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を思い起こす人も多いでしょう。その理由は、両方が映画界を取り上げているためではなく、悲劇や真実から始まり、童話のような結末を迎えるためです。

『ハリウッド』は、単なる童話ではありません。ここで行われる過去の批判はあいまいで非直接的です。この批判は過去を変えるストーリーにあり、現在を永遠に変える詩的判断にあります。また、このドラマは多くの論争を巻き起こしていますが、雰囲気や演出に関しては褒められる傾向にあります。

もし

もし、何かが違ったら、同性愛者が問題になっていなかったら、スターが何の影響もなく自分の人生を送ることができていたら、人種差別がなかったら、どうだったでしょうか?

現在、映画に出るという夢を叶えることは不可能ではなく、また、スターの生活は過剰に理想化されてもいません。プライベートな生活は比較的開放された時代に私達はいます。アイドルは完璧ではなく、自分の不完全性に関しオープンに話す人も増えてきています。また、メンタルヘルスや摂食障害などについて話し、自分の影響力を利用して変化を起こそうとします。しかし1950年代、映画は非常に人気の高いエンターテインメントで、規範の強化に使われていました。

その結果、当時の映画スターは、性的嗜好等社会のスタンダードに背くことはすべて隠すよう強いられました。美のスタンダードは今でも制限されていますが、私達は理想の解体という目標に向かう変化を目の当たりにしています。

このような理由から、『ハリウッド』はすべてが隠されていた過去が舞台になっています。平等な機会という考えは夢であり、映画の中でも見られませんでした。

『ハリウッド』は、その夢の工場でチャンスをつかめるかのように感じている一般的な若い男性の物語です。この男性の名はジャックで、双子を妊娠した妻をもつ退役軍人です。しかし、彼のキャラクターは理想化されるどころか、お金の問題がスターになるという夢と対照的であることが分かります。

悪女、クライアントやその人生は自分のものであると考えるエージェント、夫の影で生きる女性の間で、この作品の登場人物は、産業のスタンダードに反するプロジェクトのために闘います。

夢見る人によって作られた映画

そのプロジェクトとは、ペグ、後に、メグと呼ばれた、アフリカ系アメリカ人が書いた映画です。『ハリウッド』のようなストーリーは、HOLLYWOODの文字のHの上から投身自殺を図った女優ペグ・エントウィルスの本当の話に基づいたパリンプセストなのです。

これは映画産業のスタンダードを立証し、ハリウッドの悪い面が示そうとするプロジェクトでした。主演女優カミールが黒人であることも重要です。この映画が出る前まで、この肌の色の俳優は、メイドや使用人の役しかもらえませんでした。

ストーリーの中で、黒人俳優、女優が使用人を演じさせられていたことが見事に描かれており、『風と共に去りぬ』を思い起こさせます。さらに悪いことに、彼らは自分の役を漫画のように誇張し演じなければなりませんでした。

ハリウッド:詩的公正

『ハリウッド』は、詩的公正を備えた童話のようです。悪を罰し、公正や平等を讃えるためにストーリーが書き直されています。ロック・ハドソンはカミングアウトし生活していますし、黒人女優がオスカーで主演女優賞を受賞し、女性が名門スタジオで監督をします。

さらに、ほとんどアジア人には見えないアジア出身の映画監督レイモンドを使い、人種問題についても取り上げています。外見から、レイモンドは他のアジア人にはない特権を持っています。

性産業に関しても興味深いものがあります。映画やテレビドラマの中で、男性のセックスワーカーは多くコメディーのように扱われます。一方女性セックスワーカーの場合、問題はより深刻です。

ハリウッド

『ハリウッド』は男性セックスワーカーの問題を「良く」取り扱っているため、軽薄に捉えられがちですが、制限なく被写体を映し出すために極端な悲劇や喜劇を避けていることを忘れてはいけません。つまり、多くの映画スターがトップになるためには、セックスのために体を売るしかなかったという事実を認め、役は書き直されているのです。

『ハリウッド』に対するハリウッドの批判

『ハリウッド』は童話のようですが、批判も織り交ぜられています。例えば、性産業や俳優事務所に触れています。中でも目立つのはジム・パーソンズで、ドラマの中で彼はシェルドン・クーパー役から離れ、歴史的背景に加え現代ではハーヴェイ・ワインスタインを思い起こさせます。

ドラマには、未来を変えるためには、行動を起こすしかないという包括的メッセージが込められています。1950年代のハリウッドがメグのようなプロジェクトを成功されることができていたのなら、今の世界は違ったことでしょう

あなたが『ハリウッド』を好きでも嫌いでも、このドラマは闘いがまだ続いていることを思い出させてくれます。しなければならないことはまだたくさんあり、平等を求め最先端で立ち向かっていくことが重要です。誰もが健康や幸福への平等な機会を得るために闘わなければなりません