エガス・モニスと驚くべきロボトミーの歴史

1935年、神経学者でありリスボン大学の教授であったエガス・モニスはロボトミーに関する独自の「研究」を始めました。「研究」と鍵かっこをつけたのは、実はモニスはチンパンジーに対して手術を行っていたためです。チンパンジーがより従順になったことに気付いたモニスは、これが人間にも応用できると推論しました。
エガス・モニスと驚くべきロボトミーの歴史
Gema Sánchez Cuevas

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Gema Sánchez Cuevas.

最後の更新: 06 6月, 2019

ロボトミー(前頭葉切断術)は、メンタルヘルスの歴史において最も物議を醸した処置の一つです。1930年代にエガス・モニスによって「発明」され、その後、世界中で人気を博しました。至る所で何千ものロボトミー処置が行われました。しかし、それも1950年代までのことです。この頃になると、その予測不能で深刻な副作用のために使用されなくなり始めました。

ロボトミーは、脳葉を片方、あるいは両方つないでいる部位の切除を含む外科処置です。前頭葉前部皮質を脳の他の部位から切り離します。この手術は、「ルーコトミー(白質切断術)」としても知られています

この処置を試したのは、エガス・モニスが最初ではありませんでした。1890年代に、ゴットリエフ・ブルクハルトがこの種の手術を6回行っています。患者のうち2人が死亡したため、ブルクハルトはこの研究を止めました。19世紀末から20世紀初頭にかけて、ロボトミーは世界中で多数の被害者を生み出したと言われています。

「あらゆる理論を知ることだ。あらゆるテクニックを習得することだ。だが、己が人の魂に触れるように、己もまた人の魂であることだ。」

―カール・グスタフ・ユング―

エガス・モニスと疑問の残るロボトミーの研究

1935年、神経学者でありリスボン大学の教授であったエガス・モニスはロボトミーに関する独自の「研究」を始めました。「研究」と鍵かっこをつけたのは、実はモニスはチンパンジーに対して手術を行っていたためです。チンパンジーがより従順になったことに気付いたモニスは、これが人間にも応用できると推論しました。

エガス・モニス ロボトミー

この「非科学的」処置は、何十年にもわたって疑問視されています。ですが、真面目な研究者であれば、単一のケースから得た結論を全てのケースや患者に適用できません。単一ケーススタディが、特に希少な病気に対してや研究分野の前途を開くため、科学において偉大な価値を持つものであることは事実です。ですが、結論が十分に固まっていないのにこのような研究を一般化することはできません。

そして、モニスの場合、更に一般化を制限するものが存在しました。ロボトミーは類人猿に対して行われたのであり、人間に対しては行われていなかった、という事実です。にも係わらず、エガス・モニスはこの「発明」により1949年に医学分野でノーベル賞を受賞しました。

エガス・モニスはアルメイダ・リマという別の神経学者と共同で研究していました。この二人が最初のロボトミーを実行しました。この措置は、患者の頭蓋骨に穴を2つ開けることから成ります。そして、大脳皮質にアルコールを投射し、脳のその部位を殺します。術後の患者の経過を査定したのはモニスとリマでした。当然ですが、二人はどのケースにおいても改善が見られるとしました。

ロボトミーの続行

エガス・モニスがヨーロッパでこの発明を人気のものにし始めると、至るところで神経学者が彼を模倣しました。 中でも最も有名だったのが、ウォルター・フリーマンです。この男は、本当は外科医ではありませんでした。にも係わらず、彼は「アイスピック・ロボトミー」として知られるテクニックを開発しました。

アイスピック・ロボトミー

このアメリカ人医師は、目を通せば脳の分野によってはより査定しやすいことを発見しました。彼は、目からアイスピックに似た道具を入れ、「少しかき回して」、脳へと到達していました。たった5分でロボトミーができたと言います。

そうしてフリーマンはこの措置の「産業化」を成し遂げ、このサービスを「家庭で」提供し始めました。彼は「ロボトモービル」と呼ぶワゴン車を持っていました。その車で、彼はアメリカを横断し、あらゆる心理的症状に対して片っ端からロボトミーをして回りました。この頃、世界中で4万人から5万人の患者がロボトミーの処置を受けたと推定されています。

ロボトミーの禁止

ロボトミーを受けた患者の多くは死亡しました。 そうでなかった場合は深刻な脳損傷で苦しみました。この損傷はすぐに顕れることもあれば、何年も後になって顕れることもありました。その多くは最終的に植物状態になり、そうでない者は認知的に衰弱して苦しみました。しかし、ロボトミー処置は依然として存在していました。それは、患者の約3分の1は症状が改善したからです。

ロボトミーは精神病を完治させるのが意図ではありませんでした。代わりに、モニスの目標は患者を「おとなしく」させることでした。ということは、不安障害や強迫性障害、自殺を試みるようなうつ症状の患者に対するロボトミーが残酷なものであったことは明らかです。外科医は多くの統合失調症患者に対してロボトミーを行いましたが、統合失調症患者に限って何の改善も見られませんでした

つまり、ロボトミーは患者をこの世から切り離したのです。だから、患者は「おとなしくなった」のです。多くの人がこのおとなくしなった状態を楽観的に見ていました。なぜなら、当時——所によっては今日でもそうですが——精神病患者は精神病棟や精神病院で囚人のように暮らしていたからです。しかし、ロボトミーがこうした患者を解放することになったのです。

ロボトミーの歴史

ロボトミーは50年代に最初の抗精神薬である「ソラジン」の発明に伴って使用されなくなっていきました。興味深いことに、ソラジンの発明者はこの薬を「薬剤版ロボトミー」と呼びました。70年代には、ほとんどの国がロボトミーを禁止しましたが、今日においても秘密に行われていることが分かっています。

より最近のニュースでは、モニスの「業績」は人類に恩恵よりも害を多く与えたとして、ある市民団体がエガス・モニスのノーベル賞医学賞取り消しを要求しています。


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