エーリヒ・フロムによる悪性自己愛の解説

2019年11月2日
エーリヒ・フロムにとって、悪性自己愛とは人間の邪悪性の五つ目の本質の一部でした。彼らは、優越感を抱き、共感性に欠け、周囲の人々の注目を完全に集めることで頭がいっぱいな人々です。

エーリヒ・フロムは1964年に悪性自己愛を定義付けました。彼はこれを、大げさで非社会的で敵対心のある行動によって特徴付けられる個人が抱える症状である、と説明しています。悪性自己愛の人々は、自らの関わる全てのシナリオを非人間的なものにしてしまいます。その共感性の欠如とマキャヴェリズムにより、彼らは人々を傷つけるのです

近年では、自己愛性パーソナリティ障害について耳にした時と同じような精神疾患のイメージを浮かべる人が多いようです。おそらく、セルフィーを撮影してソーシャルメディアにアップしてばかりいるような、ごく一般的な人々のことを思い浮かべてしまうかもしれません。または、いつでも自分を最優先にし、他の人々の存在など気にも留めないような人々です。しかし、こういった行動はもっと悪化することがあります。

エーリヒ・フロムが自身の考えとして説明したのは、第五の悪の本質についてでした。第二次世界大戦を目の当たりにし、精神分析家で社会心理学者でもあったこのユダヤ系ドイツ人の人間主義哲学者は、自らの信条に従って、その中でも最も深刻な病状の定義について基盤を築こうとしました。それは、人を暴力的な行動に導いてしまうような病状です。

ここで留意すべきなのが、現時点では神経科学と心理学において邪悪性について理解したり説明する際に別の定義付けがなされているという点です。しかし、フロムこそが自己愛が人間の有害な行動の数々の根源であることを明確にしようとした初めての人物でした。この理論は、医学的観点から見ても驚くほど興味深いものです。

エーリヒ・フロム 悪性自己愛

悪性自己愛の特徴

悪性自己愛には、念頭におくべき重要な側面がいくつか存在します。研究者であるゴルドナー・ヴコフ博士はミシガン大学で調査を行い、悪性自己愛が深刻な病状であると結論づけました。しかし、精神医学の研究や文献には、エーリヒ・フロムがこれを定義付けて以来長らくこのことには触れずに来ていたのです。

ゴルドナー・ヴコフの調査によると、悪性自己愛は壊滅的な結果をもたらすパーソナリティ障害を指すものとされています。近年では、この病気が話題にあがることがかなり増えているようです。例えば、様々な政治的シナリオが、専門家によって悪性自己愛が原因かもしれない、と指摘されるような行動で溢れています。

一つ例を挙げてみましょう。政治に携わる知人たちの伝記を書いていることで知られるバルティモアのジョンズ・ホプキンス病院の心理療法士、ジョン・ガートナーが、ある注目に値する主張をしています。彼によると、ドナルド・トランプはこのパーソナリティ障害の顕著な例だというのです。さらに彼は、この障害には治療法がないということまで臆することなく指摘しています。不可逆な病状であるということです。

では、この病気の特徴をいくつか見ていきましょう。

行き過ぎた自己愛と非社会的行動

自己愛性パーソナリティ障害は、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアルではクラスターBパーソナリティ障害の中に含まれています。ここで、心理学や精神医学の分野から非常によく知られているのが、どのパーソナリティプロファイルまたは障害も、一つのカテゴリーに完璧に一致するわけではないということです。

つまり、他の障害の特徴もまた、ある病気の一部であることが一般的なのです。そして悪性自己愛は、非常に明白な自己愛と、精神病によく見られる非社会的行動とが組み合わされたものです。

  • 非常に強い誇大的感覚。
  • 共感の欠如。
  • 自責の念の欠如。
  • 衝動性。
  • 他者の持つ権利の軽視。
  • 人を騙したり破壊的な行動をする傾向。

悪性自己愛の人々は、味方を求めたり、外部からの注目を求めることはない

自己愛性パーソナリティ障害によく見られる特徴に、常に注目の的でいたい、という願望が繰り返されるというものがあります。その自尊心の低さから、味方を求め、確認したがり、常に賞賛されたがるのです。しかし、これは悪性自己愛には当てはまりません。このパーソナリティタイプの人々は、自身が他人より優れていることや壮大であることを完全に確信しており、一秒たりともそれについて疑いを持ったりしないのです。彼らが求めているのは、どこへ行くにせよ高い地位に自らを置くことだけなのです。

エーリヒ・フロムは、このような人々を次のように表現しています:「彼らは、自身に生まれつき備わっていると自ら信じ込んでいる能力や素質のおかけで、自分が強い存在であると感じることができる。私は君より優れているのだから、それを証明する必要などないのだ。また、誰とも交流する必要も、なんの努力をする必要もない。現実から前進すればするほど、自分が偉大であるというイメージを保持し続けられるのだ。

エーリヒ・フロム 悪性自己愛

妄想的思考とサディズム

オーストリア出身のアメリカの精神分析家オットー・カーンバーグもまた、悪性自己愛についての研究を行いました。彼によれば、このパーソナリティタイプは以下のような特徴によって定義付けられます:

  • 妄想的思考。彼らは、周囲の人々が自分に対して陰謀的な考えを持っている、と思い込む傾向があります。その二分法的思考により、彼らにとっての世界は自分を支持してくれる人とそうでない人の二つに分けられてしまいます。そのため、自分とは違う人や、同意してくれない人、そして自らの現実に対する堅実な視点に噛み合わない人のことは信用しません。
  • サディズム。彼らは躊躇なく残虐性を利用したり、他人を侮辱したり、痛烈な批判をしたり、他人を操作したり人々に屈辱を与えたりします。ここで最も衝撃的なのは、彼らはこのように他人に対して振る舞うことを楽しんでいることが多いという事実です。

悪性自己愛の人々は、専制君主のようになるための適切な状況のみを欲している

これを踏まえると、次のような疑問が浮かんできます:悪性自己愛の人々は、実際に危険性があるのだろうか?その答えは明白で、非常に危険であると言えるでしょう。親や恋人、経営者、同僚などがこのパーソナリティタイプだった場合、被害を被る可能性があります。

例えば、アメリカの心理学者と精神科医たちによるグループが、アメリカ合衆国の大統領の精神の安定性について疑問を呈しました。ここで再び、悪性自己愛という用語が議論の対象となり、人々にこれが及ぼす恐れのある危険性について考えさせることに繋がったのです。とは言え、多くの人にとってトランプは歴史上最も多くの被害者を出したサイバーストーカー以上のなにものでもないようです。

しかしながら、悪性自己愛の人々は、内に秘める暴君的な自己を発揮するための特定の機会のみを欲しているのだ、と専門家は指摘しています。従って、この心理学的病状について頭に入れておき、エーリヒ・フロムが当時主張した重要性について焦点を当てることが必要になってくるでしょう。

  • Goldner-Vukov, M., & Moore, L. J. (2010). Malignant Narcissism: from fairy tales to harsh reality. Psychiatria Danubina22(3), 392–405. Retrieved from http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20856182