開いた傷:犠牲者が加害者になるとき

2019年12月9日
過去に負った傷の深さのために、他人の痛みを理解できない人がいます。虐待や放棄から生じたトラウマは、傷跡になり、いやされることなく、時には攻撃性に変わります。

深い傷は時に、憤り、憤激、脆弱性となって現れることがあります。虐待や放棄の被害者となった人は、これを経験する可能性があります。永続的な傷跡と癒すことができない痛みは、攻撃性を持ち、不適応行動として現れ、時に他人にも影響を与えます。

痛みに対処する方法は人それぞれ違います。痛みとうまく付き合う人もいるでしょう。しかし、最悪の方法で痛みを対処する人もいます。それは攻撃性を使った方法です。どうして攻撃性をもつのでしょうか?さまざまな要因が考えられますが、その1つはトラウマの重症度でしょう。適切な社会的資源や支援グループが得られない場合も、痛みへの対処が難しくなります。また、生物学的および遺伝的要因もその原因として考えられています。

しかし1番重要なのは、個人の性格です。たとえば、反応性のナルシシズムを持つ人は、自分の痛みを武器として使用します。被害者としてのアイデンティティと虐待に満ちた過去の重みは、時に彼らを加害者に変えてしまいます。自分で望んでいないのにもかかわらずにそうなってしまうかもしれないのです。報復の衝動をコントロールできず、さまざまな方法で他人に怒りを投げかけます。

「痛みは避けがたいが、苦しみは自分次第」

-ブッダ-

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傷が攻撃に変わるとき

まず最初に理解しなければならないことは、誰もが同じようにトラウマに対処するわけではないということです。心理的資源または強力な支援グループのおかげで、トラウマを負った人でも人生を劇的に変化させ幸せな生活を送っている人もたくさんいます。

対照的に、人生において負った傷をいつまでも癒せない人がいます。この傷は、さらに負の結果をもたらします。その一例として、心的外傷後ストレス障害が挙げられます。では一体なぜこれが起こるのでしょうか?過去の痛みを伴う出来事を克服できず、重荷として持ち歩く人がいるのは何故でしょうか?

そして、外傷性の出来事を経験する人はなぜ不適応または暴力的な方法で反応するのでしょうか?  ジオヴァーニ・フラゼット博士がこの研究を実施し、以下のデータが観測されました。

ご存知でしたか?:
トラウマになる幼児期の言葉による虐待

初期のトラウマとMAOA遺伝子

2007年に実施されたこの研究によると、人生の最初の15年間にネガティブな出来事が発生すると、感情的および心理的な構造にその痕跡が残る傾向があります。もちろん人によっては、これらの課題を克服し、しっかりと向き合うことができる人もいます。

  • トラウマに苦しむ人は、とりわけ男性に関わるMAOA遺伝子を持つ傾向があります。その遺伝子は、明確な行動表現型、すなわちより攻撃的な表現型に関連しています。
  • 親なしで育った子供たち、放置され、虐待され、アルコール依存症の親に育られた子供たちは、成人期に攻撃的で反社会的な行動を示す傾向が高いことがわかりました。
  • この遺伝子は薬物乱用の傾向が強いことと関連していました。また、堅実で重要な社会的および感情的な関係を確立するのに困難を抱える傾向がありました。
  • 他人の痛みを理解する能力が低いことが判明しました。
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他の人の痛みに気づけない

開いた傷は解決できず常に存在している問題です。それは毎日あなたを苦しめます。そういった人は根本的に自分自身を再定義することを強制され、犠牲者として生きています。今現在ではなく常に過去に縛られて人生を歩んでいるのです。自分自身の脆弱性、抑圧された憤怒、息ができないような恐怖、記憶の重みに閉じ込められている人は非常に多くいます。これらすべてが、「感情的な失明」を引き起こす可能性があります。

彼らは自分の周りでの感情的な現実を見たり感じたりすることができなくなります。脳に変化をもたらすトラウマから、共感するという能力が欠如してしまうのです。最終的には、影響を受ける人の性格を変えてしまうこともあります。皮肉なことに、ある時点で自分自身を犠牲者と見なす人は、加害者となる可能性もあるのです。

  • 虐待を経験したことのある10代の青少年が一例として挙げられます。家を出て、学校で暴力的な行動を示すかもしれません。
  • あまりにも無力で傷つきやすい人たちに起こる可能性があります。
  • トラウマを背負っている場合、暴力をコミュニケーションの一形態とみなすことがあります。幼少時代に攻撃的な行動を目撃したか、その被害者になった場合、大人になってこれらをモデルとし、同じ行動を繰り返す場合があります。

こちらもご参考に:
トラウマのあとに人生を取り戻す試練

対処法

トラウマ治療の理想的な方法は疑いもなく、トラウマに焦点を当てた認知行動療法です。広範な科学的研究がこのツールの効果を裏付けています(Echeburua and Corral、2007; Cohen、Deblinger、 Mannarino、2004)。

一方、受け入れ療法とコミットメント療法(Hayes、Strosahl、Wilson、1999、2013)も効果があると言われています。これは第三世代の認知行動療法です。患者が脅迫的な状況によりよく対処できるように、不安と恐怖を軽減することを目的としています。

すでに攻撃的になることで苦しんでいるのであれば、それをコントロールすることに取り組むことが重要です。攻撃的な言動は、子供の頃から現れ始めます。専門家は、家庭内暴力を目撃した子どもの約45%が問題行動を起こすと言っています。

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深く傷つき癒えない傷は、不安、悲しみ、憤怒、そして消すことができないネガティブなイメージを引き起こします。専門家は、これらの人々を助ける責任があります。幸せになることが許されない人などいないのですから。

  • Frazzetto, G., Di Lorenzo, G., Carola, V., Proietti, L., Sokolowska, E., Siracusano, A., … Troisi, A. (2007). Traumatismo precoz y mayor riesgo de agresión física durante la edad adulta: el papel moderador del genotipo MAOA. PLOSOS UNO , 2 (5). https://doi.org/10.1371/journal.pone.0000486