自己感とうつ:その関係性とは?

30 3月, 2020
記憶の反芻、ネガティブな対話、空虚で自分には何の価値もないという感覚は、自尊心を少しずつ蝕み、うつ病となるのに最適な土壌となります。

自己感とうつ病には密接に関連するものがあります。うつなどの心理状態で苦しむと、持っている自己像がバラバラになり、低い自尊心へとつながりかねません。自己概念というものに絶えず時間やエネルギーを費やし続けていると、常に自分の中で行われるネガティブな対話と心配によって自己概念が更に弱まっていってしまいます。

うつ病ほど複雑な臨床症状はそう多くありません。同じうつ病患者でも一人として同じ経験をすることはありません。うつ病が多因性かつ多角的な病気であることは間違いないでしょう。ですが、うつ症例に一般的な症状として現れる要因が存在するので、うつ病かどうかを識別できます。よく知られた要因には、己の思考と精神行動を自身に歯向かわせるというものがあります。

数か月前に発表された最近の研究によると、こうした精神疾患において、自己感というものが核となることが分かっています。自分という人間の捉え方、自身への話し方、自分の扱い方で、実は脳の構造が変わってしまうのです。

一例として、MRIのスキャン画像を見ると、自尊心の低い人は実は脳内に散在する灰白質が少ないことが分かっています。それだけでなく、自尊心や自己感を高めることができないでいると、うつがより治りにくくなり、何年も続くものとなってしまいます。この件について、もう少し深く掘り下げてみましょう。

「傷には身体には現れないで、血を流すものよりずっと深く、そしてずっと強い痛みを感じるものがある。」

-ローレル・K・ハミルトン-

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自己感とうつ・・・苦しみという監獄を築く行為

うつになると、周りの人と同じ現実を生きることができません。それは、うつという病気自体が何よりも孤立を招く力だからです。うつによって人は周りの環境から引き離され、着実に内向的になるようにと追いやられます。その結果、止めどなく考えが溢れ出し、疲れ、そして苦痛に陥り抜けられなくなってしまいます。

これはまず最初に考慮すべき重要事項です。うつになると、自覚や内省、自尊心といったものと関連した脳の部位が過活動を起こします。自己感とうつというのは、自分というアイデンティティを攻撃する思考パターンによって密接に関連しているのです。そして、自身への批判が自分を弱らせていきます。これまでに犯した過ち、痛み、喪失体験、苦しみなど、過去へと目を向けるように自分で自分を仕向けていきます。

ストレスがうつとネガティブセルフトークへの入り口に

カナダのカルガリー大学のデンセル・コパラ博士による研究が最近、発表されました。その研究では、いかにネガティブセルフトーク(自身の内で行われるネガティブな対話)がうつ発症の大きな一因となっているかが明らかにされています。同様に、特に強いストレスがかかった時に自己感が疲弊してしまう傾向があることを知っておくことが大切です。

ストレスとなる緊張や問題に対処しないでいると、ネガティブな思考や感情を生み出すパターンに脳や心が慣れてしまいます。その結果、楽観的になること、希望を持つこと、そして自分に対して満足しポジティブな気持ちを抱くことがどんどんと難しくなっていいきます。そうしていつの間にか、自尊心がどん底へと落ちてしまうのです。おそらく最も興味深いと言えるのは、こうした思考やプロセスが脳内のある分野に物理的な変化をもたらすことでしょう。

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低い自尊心と脳内の灰白質

ザルツブルク大学のヨハネス・クラークル博士による2014年の研究では、自己概念と脳に関して大変魅力的な結論が生まれています。この研究によると自尊心が低い人は、実は灰白質の量が少ないというのです。これはつまり、自尊心の低い人はよりうつになりやすいということです。

そのため、自尊心の低い患者は自分の感情をコントロールすることが困難でした。また、うつ症状や苦しみを克服するためのアイデアや堅固な決意というものを生み出すことも困難だったのです。

セルフトークの重要性

自己感とうつは、お互いに助長し合いかねないものです。そのため、低い自尊心やストレスの強くかかる状況が、そのままうつ病へとつながってしまったりします。そうなると、うつそのものが既にバラバラになっている自己感を攻撃する傾向にあるため、悪循環へと陥ります。

その一方で、心理士などのセラピストのほとんどが共通して持っている見解が、自身への話しかけ方が回復への鍵を握るという見方です。つまり、自分という人間の捉え方、表現の仕方、そして自分への話しかけ方というものが自分のメンタルを強くしたり、弱くしたりするのです。

あなたは自分に満足し、自分に対しポジティブな感情を抱き、自分は価値のある人間なんだと思ってもいい存在なのです。そう感じるに値する人間なのです。結果として、自分のセルフトークがどのようなものであるかを認識することが自己感を強め、うつを予防するのに不可欠なものとなります。

周囲との健全な(かつ、わくわくする)つながり方

自分の世界から這いだし、「今、ここ」を感じましょう。要は、ネガティブな思考パターンを止めるのです。そうする方法の一つに、自分の周囲にあるものと再びつながる体験をしてみるという方法があります。好奇心を刺激し、興奮を覚えるような新しい体験や感覚を探しましょう。不安やネガティブではなく、異なった刺激を脳に与えましょう。

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思いやりにあふれる内なる対話

自己感とうつがつながってしまっているのは、セルフトークが自尊心を弱めてしまっているからです。それではうつというブラックホールに吸い込まれてしまいます。自分という人間を尊重した話し方を学びましょう。自分の内で行われる対話は常にやさしく、思いやりにあふれ、へこたれないものであるべきでしょう。

あなた自身が自分を大切にしないことには、誰もあなたのことを大切にしてくれません。健全な自尊心と自己愛は、気分障害のほとんどに対抗できる最高の防衛メカニズムとなります。健全な自尊心と自己愛を育むことに努め、必要ならば迷わず専門家の助けを求めましょう。

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