人類の進化上の強み「社会脳」

15 9月, 2020
社会脳とは、人間が私たちの環境の中で出くわす試練を乗り越えるために用いている主要な素質のうちの一つです。これがあることにより、私たちは他者と共存して生きることができ、特に「守られている」という感覚を抱くことができます。

神経学者たちは、他者と関わり合うという人類の生得的な能力に言及するために、「社会脳」という概念を用います。いくつかの脳回路が自己認識や共感といった能力の発達において重要な役割を果たしていることが研究により示されています。

脳の複数の領域が対人関係に直接関わっているというのが研究者たちの主張です。例えば紡錘状回と呼ばれる部位があることにより、私たちは他者の顔を記憶することができます。また、ミラーニューロンは他者を真似ることを可能にしますし、紡錘細胞(VENs)は対立が起きている状況下での自身の方向づけを助けます。

社会脳のもう一つの重要な側面は、言語を作り出して使用する能力です。これは人類の進化を決定づけた要因であり、他者と交流したいというニーズと直接的に関連しています。社会脳を構成しているのは、「ミラーニューロン」と「心の理論」という二つのシステムです。

“偉大な発見や改良の数々には、必ずたくさんの人の頭脳の協力が関わっている。私はおそらく後に続く人々のために道を切り開いたことで賞賛されるのかもしれないが、次に続く発展を見ると、その栄誉は私自身ではなく他の人々のおかげであるように思える”

-アレクサンダー・グラハム・ベル-

社会脳 人類 進化上の強み

社会脳とミラーニューロン

ミラーニューロンは、人が他人の行動や情緒表現を観察している時に活性化する特別なタイプのニューロンです。この働きにより、私たちは誰かが何かを行うのを見て、まるで自分自身がそれを行なっているかのように感じることができます。何らかの形で、人は周囲の人の感情を感じ取っているのです。

ミラーニューロンは主に前頭葉という運動や触覚に関連する領域に存在しています。また、身体イメージや感覚から得る情報などを司る頭頂葉でも見つかります。さらに、島皮質と帯状皮質という情動や痛みに関わる二つの領域にもミラーニューロンがあります。

ミラーニューロンはいわゆる「社会的伝染」という社会脳の基本的なメカニズムの一つを担っています。

その名称の通り、社会的伝染とは人々が他の人から入ってきた感情や情動を次の人へとほぼ自動的に伝えるメカニズムのことを指す用語です。社会的伝染が起こった結果、私たちは他人から受け取ったものをその直後の環境下で真似ることになります。

心の理論

社会脳を形成するもう一つの重要なシステムが心の理論ですこれは、意図や思考を自分自身あるいは他人のものとして捉える能力を指します。この機能により、私たちは自分自身の精神状態を吟味したり、他者の精神状態についてボディランゲージを通して深く考慮することができます。

この自己や他者の知覚には、情動や感情、信条などを解釈する力も含まれます。また、これにより特定の事象に対する自分の行動や他者の行動を予想できるようにもなります。しかしこれは一般的に、故意に行うものではありません。本能的な行動なのです。

社会脳のメインの構成要素がミラーニューロンと心の理論の二つであり、その集大成が「共感」です。共感とは他人を彼らのあるがままの状態で理解する能力であることはよく知られています。つまり、相手の気持ちになって考える力ということです。

共感力を発達させるポテンシャルは全ての人に生まれつき備わっていますが、全員がそれを実現できるわけではありません。いわゆる「正常な」条件下では、全ての人間が他者の立場になって考える能力を持っています。しかしながら、個々の経験や育った時の背景(そしてそれに伴う不適応行動や偏見)によっては、決定的に共感力に欠けた行動が発達してしまう場合があるのです。

社会脳

協力することは、知的な行為である

人間に社交性が備わっているのは偶然の産物ではありません他者と繋がり合うことは人類の進歩に欠かすことのできない要因だったのです。この進歩の中でも特に発展が目覚ましかったのが言語で、これにより私たちは自身の思考や感情を他者のそれと結びつけることができます。

肉体面で言うと、人間はそれほど優れているとは言えません。私たちはその他大勢の生物よりもだいぶ弱々しく、動きも遅いです。それだけでなく、他の種族と比べると私たちの感覚は鈍く、ゆっくりとしています。そのような敵の多い環境の中で人類が生き残る唯一の方法が、脳の力を使うものだったのです。そして、私たちの脳は社交を欲する人間の本能によりこれほどまでに発達することに成功しています。

私たちの現在の個人主義的振る舞いや実用主義的態度には反映されていないかもしれませんが、原始的な人類に当てはまる事実は現代の私たちにも引き続き継承されています。日常生活や人類の歴史を見ても、困難を克服したり種として進化するのに一番の方法が協力することであるというのは繰り返し証明されていますよね。自然は、社会脳という姿に形を変え、私たちにそのような生き方をすることを奨励しているのです。

Valdizán, J. R. (2008). Funciones cognitivas y redes neuronales del cerebro social. Revista de neurología, 46(Supl 1), 64-68.