ウェルニッケ野と言語理解能力

2020年5月27日
今回の記事では、ウェルニッケ野と言語理解について理解するために避けては通れない二つの側面を取り上げます。

言語理解能力とは、人間が書き言葉および話し言葉を処理し、理解する能力のことです。この能力は、人類の進化の過程で重大な役割を果たしてきました。効果的に意思伝達を行うためのこの能力が、協働や複雑な社会の創造を可能にしたのです。このような社会では、私たちは敵対する世界に立ち向かうことができます。だからこそ、人間にはウェルニッケ野のような生物学的に脳に組み込まれている構造が備わっているのです。

言語に関連する神経的な性質に関してカギとなる側面の一つが、脳の機能が左右に分化しているという点です。つまり、言語に関わる脳構造の大部分は左半球にあることがわかっています。ただ、そうは言ってもジョークや実用主義的考え方、皮肉の理解といったプロセスは右半球に由来することを示す研究もいくつか存在しています。しかし言語理解を司るウェルニッケ野は左半球の、具体的にはブロードマンの脳地図における21と22野に位置している構造です。

今回の記事では、ウェルニッケ野と言語理解について理解するために避けては通れない二つの側面を取り上げます。一つ目はその解剖学的・機能的側面について、そして二つ目はウェルニッケ失語症という、この領域に損傷があると生じてしまう失語症についてです。

ウェルニッケ野の解剖学的構造と機能

ブロードマンの脳地図の21および22野はウェルニッケ野の神経中枢となっています。これに加えて、その他の構造も言語理解には重要です。ウェルニッケ野を大きく捉えると20、37、38、39野も含めて考えることも可能で、これらは単語を別の種類の情報と関連づける過程に関わっています。

ウェルニッケ野 言語理解能力

ウェルニッケ野は一次聴覚野と密接に結びついています。これは、その役割が話し言葉の理解であることを考えれば合点が行くと思います。解剖学的レベルでは、このシステムがブローカ野との間に持つ繋がりについて指摘しておくことが重要でしょう。ブローカ野も主に言語理解に大きく関わっています。これら二つの領域(ウェルニッケ野とブローカ野)は一連の軸索束で接続されており、これが弓状束を形成しています

ウェルニッケ野には、以下のような機能があります。

  • 言語理解(話し言葉及び書き言葉)
  • 言語の意味論の統制、単語を意味に変換したり、その逆を行います。
  • 発声の組み立て。特に発する音声の意味論的・実用的側面におけるものです。

これらの機能が言語理解を支える柱であり、私たち人間のコミュニケーションを可能にしています。そのため、ウェルニッケ野が損傷を受けると言語使用に関連する問題に繋がる場合があります。次に、ウェルニッケ野に損傷があることでもたらされる具体的な影響についてお話ししていきましょう。

ウェルニッケ失語症

ウェルニッケ野に損傷があると、ウェルニッケ失語症と呼ばれる言語障害が引き起こされてしまいます。支離滅裂で意味をなさない発話が、この障害の特徴です。そのほかに、他人の言っていることを理解するのが非常に困難になるという特徴もあります。しかし、無意味なメッセージを発していたとしても、この障害を抱える人々は流暢に苦もなく喋ることができます。これは、発話の生成は損なわれずに保たれているためです。

ブローカ失語症とは異なり、ウェルニッケ失語症の患者は多数の機能語(英語におけるthe、of、before、anなど語彙的意味はほとんど担わず統語的関係を示す非自立語)を使用します。さらに複雑な時制の動詞や従属節を多用します。しかし内容のある言葉はあまり用いず、使われる言葉同士の不一致により意味も不明です。これは主に意味性錯読と呼ばれる効果が原因で、これにより患者は探していた言葉の代わりに似た意味を持つ別の言葉を発してしまいます。この現象が起こるのは、ウェルニッケ野が意味を通じた単語の選択に特化しているわけではないためです。

ウェルニッケ野 言語理解能力

ウェルニッケ失語症のカギとなる側面の一つは、発話の流暢さは完全に損なわれないままであるという点です。この障害を抱える人々にとって、会話を続けることは問題にはなりません。ただし、発する言葉は意味を成しません。これは、発話の生成を司る脳構造がブローカ野であるためです。この事実から、ウェルニッケ野が言語の意味や理解を専門とした領域であることが理解できるでしょう。この領域は他の領域とも接続されていますが、それらの領域は独立して機能することが可能なのです。

最後に、こう言った言語に関連する領域が若い年齢の時に損傷を受けると、ある興味深い現象が起こることを紹介させてください。脳の優れた可塑性により、左半球が損傷を受けると、言語能力が代わりに右半球で発達する場合があるのです。このおかげで、言語能力が確立される前の脳損傷はそれほど深刻なものにならずに済みます。つまり、早い段階でこの種の脳損傷を経験したとしても、正常な、あるいは実質的には正常な発達が可能だということです。

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