ジョン・スウェラーの認知負荷理論とは

ジョン・スウェラーの認知負荷理論とは

最後の更新: 06 9月, 2019

ジョン・スウェラーの認知負荷理論は、人の認知アーキテクチャに沿った条件下では、より学習効果が高まるということを提案しています。

認知負荷は、作業記憶が一度に保存できる記憶量と密接な関係があります。スウェラーによると、作業記憶の容量には限りがあるため、人に指導を行うときには記憶領域に負荷をかけすぎてはいけないといいます。学習に直接繋がらなない作業を同時進行させることで、作業記憶が過負荷をおこしてしまうのです。

スウェラーは、ある一連の要素の組み合わせを、個人の知識の基礎となる認知構造として見る理論を作り上げました。スウェラーは、複数の情報を同時に記憶することにおける短期記憶の限界を示したジョージ・ミラーの情報処理記憶の研究が出されたのち、この理論を作るに至っています。

スウェラーは、指導方法をデザインすることで、生徒たちにかかる認知負荷を軽減できると議論しました。そして後に、他の研究者によって、認知負荷を示す知的努力を計測する方法が発案されます。

ジョン・スウェラーの認知負荷理論の重要なポイントは、認知負荷が大きいとタスクの完了に影響が出るということです。さらに、誰もが同じように認知負荷を経験するわけでもありません。

頭の中の歯車

ジョン・スウェラーの認知的負荷理論

認知心理学において、認知負荷とは作業記憶で行われる作業量として捉えられています。スウェラーは、情報を提示する際の助けとなるガイドラインとしてこの理論を組み上げました。彼の目標は、学生の知的能力を最大化するための活動を促進することでした。

そこで彼は、長期記憶の内容を、人の認知力や理解力、問題解決力を高めてくれる洗練された構造として捉えました。スキーマと呼ばれるこれらの構造は、複数の要素を一つに統合して扱うことを可能にしています。そのため、スキーマは私たちの知識の基礎であると言えます。一つのスキーマが、より小さなスキーマを内に含んでいる場合もあります。

熟練者と初心者の違いは、初心者はそれだけのスキーマをまだ獲得していないということです。学習には、段階的な実践を通して、長期記憶のスキーマ構造を変化させる必要があります。この変化は、対象物に慣れていくことで、それに対する認識が修正されていき、作業記憶が対象物をより効率的に処理できるようになるために起こります。

スキーマの習得のためには、作業記憶に負荷がかからない指導方法を用いる必要があります。認知負荷理論おいて、ジョン・スウェラーはスキーマの習得の鍵となる長期記憶の変化を促進するため、作業記憶への負荷を減らすテクニックを考案しています。

認知負荷理論の原理

ジョン・スウェラーが認知負荷理論の中で提唱した指導内容は以下の通りです:

  • 達成目標のない問題や、すでに解決された答えのない問題などを利用して、問題解決方法を変える。ここでの目的は、作業記憶にかかる負荷を避けること。

認知負荷理論のキーポイント

このように認知負荷理論は、人間の認知アーキテクチャーや情報処理の仕組みを反映した指導方法を提示しています。長期記憶に情報が運ばれるまで、学習情報は作業記憶内に留めておかなくてはいけないのです。

作業記憶の容量は非常に限られています。一度に大量の情報に接すると、人はそれに圧倒され、その多くの情報を忘れてしまいます。

認知負荷理論では、これらのことを反映した指導方法を使うことでより効率的な学習を可能にしています。

  • 経験を計って指導方法を修正していく。
  • 問題を複数に分け、部分的に完結したものやすでに解決されたものなどに振り分けることで、問題の総数を減らす。
  • 可能な限り様々な視覚情報を合わせて利用する。
  • 聴覚および視覚的機能を用いて、作業記憶の容量を増加させる。
考える女性

知識とクリティカルシンキング

認知負荷理論で提唱される一つの考え方が、何かについて批判的に考察するには、それらについて「知っている」ことが必要不可欠である、ということです。また、そこでは2つの大きな情報処理活動(知識習得と問題解決)は別々に考える必要があり、まず初めにスキーマの習得を目指し、その後問題解決を行うべきだと述べられています。

これらのことからスウェラーは問題解決と知識習得が脳では別々に機能していると指摘しています。問題解決は、「重要な脳の帯域幅」を占領してしまい、新しいものを学習する余地を減らしてしまうということです。これらの事実は、教育に大きな影響を与えるものなのです。

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  • Sweller, J., Instructional Design in Technical Areas, Camberwell, Victoria, Australia: Australian Council for Educational Research (1999).