可逆性思考:認知的怠慢との戦い

· 2019年5月15日

あなたが何かを強く信じているときに、誰かにその信条が揺らいでしまうような証拠を見せられたら、あなたに残された選択肢は2つです。1つは自分が間違っていたのかもしれないと悟り、自分の意見が正しくないことを受け入れてそれを変えるというものです。これはあなたが可逆性思考を取り入れているということを意味するでしょう。

もう1つの選択肢は、ほとんどの人がやってしまうことなのですが、1つ目とは正反対です。それは己の信条にしがみつき、撤回できなくなってしまうというものです。そのほかの可能性からは目を背け、自分の意見に頑なに固執してしまうのです。そしてこれは人間の脳の驚くべき複雑さと不完全さの一部だと言えるでしょう。

なぜこれがそれほど重要なのか

可逆性思考とは、物事を別の方向から論理的に思考するために人間が持っている能力です。つまり、物事を1つの観点から見つめながらも、その正反対の観点からも見つめることができるという能力のことです。これにより複雑な問題を解いたり、正反対の物事との間に存在する全てのスタンスを把握することができます。

これは視野を広げ、個人的なものであれ仕事上のものであれ、課題を解決しやすくしてくれるような思考法と言えるでしょう。可逆性のおかげで、もっと論理的かつ直接的な方法で問題に取り組むことができるのです。

一方で、分極化思考というのも存在し、これが実はかなり人を疲れさせるものです。この場合、その考え方はどちらか一方かその反対かしかありません。中間という選択肢はなく、熟考すらなされません。分極化は人をその場に固執させ、麻痺させてしまうのです。

もしあなたがふたつの対極的な観点の中間に立つことができれば、可逆性思考の利点をフル活用することができ、それによって再び動き出すことができるでしょう。

可逆性思考:認知的怠慢との戦い

証拠への盲目さ

では、何時間もかなり空腹のまま森の中を歩き続けてきたご自分を想像してみてください。かなり遠くの山の頂上には、リンゴの木が見えます。あなたはそれを目指して走り出します。あなたの頭の中にはその貴重な果物のことしかありません。

しかし頂上にたどり着くと、リンゴが腐っていることに気づきます。食べられません。しかしここまで走ってきた道には、実はあらゆる種類の果物の木々があったのです。立ち止まって周りを見渡してさえいたら!

人間の脳は時折このように働きます。そしてだからこそ私たちはこんな風に愚かな振る舞いをしてしまうのです。私たちは何かに向けて一直線に進んでしまい、あたりを見回して周りで何が起こっているのか確かめるということをしないのです。

私たちは目隠しをしながらさまよっています。それは正確には頑固さとは異なります。なぜなら頑固さはもっと個人的な特性と関わりのあることだからです。実際に私たちが行なっているのは、不可逆性思考に主導権を渡すということなのです。

あなたの信条に反する証拠に対する8つの反応方法

特に、あなたが信じていることに反するような証拠が提示された場合には、8つの反応方法があります(チンとブルワー、1933)。最初の3つは不可逆性思考に陥ってしまうもので、事実を無視する、事実を否定する、事実を除外する、の3つです

残りの5つの反応は可逆性思考によるもので、判断を保留する、事実を再度解釈し直す、事実を受け入れる、そして考えを180度改める、あるいは事実を受け入れて考えを変える、の5つです。

可逆性思考:認知的怠慢との戦い

なぜ私たちは可逆性思考を用いないのか?

私たちの脳は、私たちが思っているほど完璧ではありません。私たちは、を完璧で正確で合理的に物事を分析できる機械のように見なしています。しかし思考を逆転させるということに関しては、完璧とはほぼ遠いことにお気づきになるでしょう。

私たちは、自分たちの信条の確証を得るための事実や証拠や理論を必死に探してきました。これと逆の方向を目指すことは滅多にありません。もし自分の意向に反するような証拠を探そうとすると、脳はそれを自己破壊的行為のように見なして、この考えを頭から追い払おうとしてしまうでしょう。

「可逆性は、最も顕著な知性の特徴だ。」

ジャン・ピアジェ

自分が正しいのだと示す小さなサインを見つけることができれば、それだけで自分の考え方を再確認してそこに落ち着いてしまいます。例えば、タバコは健康に悪いものではないと思い込んでいる人が、何千ものウェブサイトを探してやっと「タバコはあなたの寿命を伸ばします」と言っているサイトを1つ見つけるとします。

そしてそれが正しくないにも関わらず、可逆性思考を持っていない人ならそれを信じてしまうのです。その他の大半のサイトが真逆のことを言っているのに、そして全ての研究結果が健康に悪いと証明しているのに、自身の信条を強固にするようなたった1つの発言だけに固執してしまうのです。

可逆性思考:認知的怠慢との戦い

認知的怠慢

ヒューリスティクスという言葉を聞いたことはありますか?脳には、エネルギーを節約するためのショートカットキーのようなものが存在するのです。つまり、同じ結果をうむ二つのやり方がある場合、脳は少ない労力で済む方のやり方を選ぶということです。

つまり、あなたは脳のエネルギー節約の法則に支配されているというわけです。これは制御不能で、目には見えず、無意識的に行われます。また、これは私たちの脳がたくさんの真逆の証拠の中から自分の理論が正しいと認めている事実だけを探そうとしてしまう説明にもなっているのです。

可逆性思考を手に入れたいなら、論理的で合理的に思考する必要があります。つまり脳がやりたがらない苦労をしなければならないということです。意見をただ確認してそこに落ちつくことには、あまり労力がかからずに済みます。私たちの脳は認知的に怠け者なのです!頭の中の全ての迷信を取り除き、脳は怠けるためならどんなことだってするのだという事実を思い出すようにすることが何より大切です。

これは日々の生活で絶えず起こることです。一見奇妙に思えるかもしれませんが、誰もそれから逃れることはできません。事実を提示されたら、あなたの選択肢は二つです。自分の意見に固執して他の意見は捨て去ってしまうか、あるいは視野を広げて他のアイディアについても考慮してみるかのどちらかです。