感情と身体的な痛みとの間にある関係性とは?

感情は、身体に何らかの影響を及ぼすことがあります。懸念や失望、あるいは不安を感じることで、痛みが引き起こされる場合すらあるのです。一体なぜそのようなことが起こるのか、本日の記事で解き明かしていきましょう!
感情と身体的な痛みとの間にある関係性とは?

最後の更新: 02 1月, 2021

感情と身体的な痛みとの間にはほぼ直接的と言えるほどの結びつきがあり、おそらくあなたもそれを一度ならず経験したことがあるはずです。例えば、職場で何か衝突が起きてお腹が痛くなったり、恋人と口論になって頭痛がしたりしたことがありませんか?また、ずっと先延ばしにしてきた何かについての懸念が、背中の筋肉が緊張したような感覚に繋がるのもその一例です。

では、「傷心」の痛みについてはどうでしょう?恋人と破局したり、見捨てられたり裏切られるという経験をすると、その精神的苦痛は強烈かつ、あらゆる意味で破壊的なものとなります。そのため、身体も同様にその経験による衝撃を感じるのです。

精神的に困難な状況というのは疲弊や無気力を引き起こしかねませんし、筋肉や関節の麻痺にまで繋がる恐れがあります。では、この時私たちの身体には何が起きているのでしょう?過剰な心配や失恋は、いかにして身体的な痛みを生じさせるのでしょうか?さっそく掘り下げていきましょう。

感情 身体的な痛み 関係性

感情と身体的苦痛

心理学や医学は、何十年間にも渡って感情的な痛みと身体的な痛みとの間の親密な関係性を研究してきました。科学者たちが「身体化」と呼ぶその現象は、まさに心身のつながりの証拠となっています。今日を生きる私たちにとって心身が相関関係にあるという考え方は当たり前のように思えますが、これは実体二元論と真っ向から対立する概念であるため、一時は革命のように捉えられていました。

この心身のつながりこそ、うつ病と診断された患者たちが頭痛や筋肉の痛み、消化器系の問題、そして慢性的な痛みをよく経験する理由です。事実、神経生物学的研究により、身体的苦痛の多くが感情的なストレスと関連していることが示されています。

ノースカロライナ州(米国)にあるデューク大学によるこの研究などは、医学診断を下す際、医療従事者は必ず心理面および感情面の要因を考慮すべきだと提唱しました。患者の腹痛が、もしかしたら胃潰瘍のせいではなく不安障害に付随する現象かもしれないからです。

悲しみや怒りは、身体に絶大な衝撃を与える

Afton Hassett博士は、ミシガン大学にあるChronic Pain & Fatigue Research Center(慢性的な痛みと疲労の研究センター)の研究員です。彼は、人間の感情が身体に対して持つ影響には、ポジティブなものもネガティブなものも両方あるということを指摘しました。

  • この効果は身体を助ける場合もあれば、傷つけることもあります。中でも身体にとって最も不親切な感情が、悲しみや怒りなどです。そのため、幼少期に虐待されたり見捨てられた経験、愛する人を失った経験、あるいは複雑恋愛の末の破局の経験などは重大な身体的影響をもたらし得ます。
  • 考えられる身体症状は多岐に渡りますが、最も多いのが背中の痛みだと言えるでしょう。前述の通り、怒りは特に強力な感情です。Hassett博士は、極端にイライラしやすい人々や、長い間感情を抑えこんできたような人々は痛みに対して過度に敏感な傾向がある、と指摘しています。また、胃の問題や片頭痛、関節痛などに苦しんでいる可能性も普通より高いのです。

感情と身体的な痛み:どちらの方が強い?

愛する人を失うのと骨折するのとでは、どちらの方が痛みが強いでしょう?恋人と別れるのとコンロで火傷するのとではどうですか?矛盾のある質問のように思えるかもしれませんが、実は答えははっきりしています。精神的な痛みの方が、身体的な痛みよりもずっと強いのです。

これは、『Journal of Psychological Science』誌に発表されたAdrienne Carter-Sowell博士とShangheng Chen博士による研究で導き出された結論です。この関係性を理解する上で、以下のような事柄がカギとなります。

  • 感情面の苦痛の方が長引きがちです。身体的な痛みは一時的なものである一方、情動や感情によって引き起こされた痛みは何年間も、あるいは一生涯残り続ける場合があります。
  • 人間はネガティブな感情に対処するのが得意ではありません。そのため、喪失や破局を適切に処理できないことでこの精神的な痛みが慢性化する恐れがあるのです。同じことが、先ほど説明した通り怒りについても言えます。何かに対するフラストレーションや怒りを何年間も見て見ぬ振りしていると、それがいずれ身体に大きな犠牲を強いるようになることは間違いありません。
  • この研究の主導者は、もう一つ興味深い指摘をしています。それは、身体的な痛みを追体験するのは不可能なのに対し、人間は精神的な痛みを何度も繰り返し作動させるのが得意だという事実です。つまり、骨折による痛みを完全に思い返すことは不可能ですが、パートナーが自分の元を去った時の感覚を、それが昨日ことだろうと何年も前のことだろうと、リアルに思い出すのは簡単だということです。

心のエクササイズに努めよう

感情と身体的な痛みとは、同じコインの裏と表であることがわかっています。これは、胸を締め付けられるような感覚や筋肉の経験、首の凝り、頭痛などを通して常に起こっている現象です。これに対してはどんな対処ができるのでしょうか?実はその答えはシンプルなのですが、採用するのは難しいかもしれません。というのも、感情マネジメントに努めなければならないからです。自身の感情の問題から目を逸らさないようにしてください。この心のエクササイズを先延ばしにしてはなりません。今日からすぐ始めましょう。

嫌な終わり方をした口論、適切に処理されなかったストレス、未解決の懸念、あるいは痛ましい別れなどが、そこから立ち直って前進するのを妨げています。こういったあらゆる経験は精神世界にまで至る悪影響を有しているため、適切に処理することが絶対的に重要です。自分一人で精神的苦痛にうまく対処できない場合には、資格を持つ、訓練を受けた専門家に頼っても良いのだということを常に覚えておきましょう。

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  • Chen, Z., Williams, K.D., Fitness, J. y Newton, N.C. (2008). When Hurt Will Not Heal: Exploring the Capacity to Relive Social and Physical Pain. Psychological Science, 19 (8), 789-795.
  • Mark A. Lumley, Jay L. Cohen (2011) Pain and Emotion: A Biopsychosocial Review of Recent Research. Journal Clinic Psycholy. Author manuscript; available in PMC 2012 Sep 1. Journal Clinical Psycholy. 2011 Sep; 67(9): 942–968.
  • Hassett A. At the Intersection of Affect Regulation, Reward/Value Processes and Placebo. Presented at the American Pain Society Scientific Summit. March 4-6, 2018, in Anaheim, California.
  • Muller R, et al. Effects of a tailored positive psychology intervention on well-being and pain in individuals with chronic pain and a physical disability: a feasibility trial. Clin J Pain. 2016;32(1):32-44.