感情を持たない人は存在する?

16 11月, 2020
誰もが、少なくとも一人は共感心に欠けた人と遭遇したことがあるはずです。そのため、私たちは「世の中には感情を持たない人がいるのだ」と思い込んでしまいやすいのです。しかしながら、そんなことが本当にあり得るのでしょうか?感情を感じることのできない人など存在するのでしょうか?

この世には感情を持たない人も存在するのだろうか?多くの人が、そう自問したことがあるはずです。かなり冷淡な人や、共感心と情緒的繋がりが欠けている人に出会った時にこの疑問が浮かぶかもしれません。その人の振る舞い方を見て、私たちはその相手が「冷たい心」の持ち主である、と信じ込んでしまうのです。そういった人々の態度が時に、私たちを不穏な気持ちにさせることもあるということに疑いの余地はありません。

一方で、こういったタイプの人物像は精神病的なパーソナリティと結び付けられることも多いです。他人の気持ちを理解することができない人には何らかの精神的な問題があるのだろう、という考え方はかなり受け入れられやすいのです。そのため、そういった人々は周囲の人を傷つける(物理的に、あるいは心理的に)恐れがある、という考えを抱いている人もいます。

これに関しては、少し恐ろしい面があります。考えてみてください。感情を一切持たず、愛や恐怖、悲しみ、恥、幸福などを経験できない人のことを想像してみましょう。実を言うと、このような人々はシンプルに人間とは言えません。むしろ、人工知能(AI)を搭載した精密なロボットです。

さらに、「自分には感情がない」というようなことを訴える人を見かける場面もかなり多いとはいえ、それは事実ではないということを覚えておかねばなりません。どんな人にも、感情や心があります。それが人間を人間たらしめるものなのです。ただし、感情を理解して適切に表現できるかどうかは別問題ですので、今回の記事ではそのことについてお話していきましょう。

感情のない人々

全ての心理学者が共通して精通していることが何か一つあるとしたら、それは他人の感情を読むことでしょう。苛立ちや怒り、失望、あるいは不満を感じていながらも、完全に落ち着いているように見える人というのはたくさんいます。誰もが何らかの願望を抱いているものであり、その願望が善意的なものであれ悪意に満ちたものであれ、背後には感情が隠されているのです。

何が言いたいかというと実は、感情のない人などこの世に存在しないということなのです。私たち全員が感情を持っています。なぜそう言えるかというと、感情という精神生理学的な状態が人をその人たらしめているからなのです。つまり、学習や成長、日常的なやり取り、そして私たちを形作っているもの全てが、感情によって促進されているということです。そしてこれらのプロセスは全ての人の脳内に存在しています。しかしながら、存在しているからといってそれらが適切な形で「働いて」くれているとは限りません。

この点についてもっと詳しく分析していきましょう。

感情を持たない人

反社会的なパーソナリティ:感情的な欠陥と、自身にとって有益な感情

感情を持たない人は存在するか否かという問いについて考えている人はよく、サイコパスについて思いを巡らせます。ただ、現在では「サイコパス」という用語はあまり広く用いられておらず、代わりにそういった人々の状態は反社会性パーソナリティ障害患者として言及され、その割合は全人口の1%程度です。以下に、この障害を抱える人々の特徴をいくつか挙げています。

  • 強い情緒的な絆を結ぶことができない。
  • 自分にとって有益かどうかがモチベーションになる。言い換えると、新たな刺激を求め、結果として望んでいたものを手に入れる。
  • ほとんどの人が反社会的な人々は共感心を持たないと信じ込んでいる一方で、実際には彼らも共感することがある。ただし、そこには微妙な差異がある。
  • エラスムス・ロッテルダム大学(オランダ)で行われた研究により、彼らには認知的共感能力がある(つまり、他人の感情を理解することができる)ことが示された。しかしながら、情動的共感を有していない(情緒的レベルでは他人と心を通わせることができない)。このことから、気軽に他人を操作したり騙したりしてしまう。

アレキシサイミア(失感情症)傾向を持つ人々

こういった人々は他人に対して「愛している」などと伝えることはあっても、それを行為で示そうとはしません。少なくとも、一般的に期待されるような形では愛情表現をしないのです。人と距離を取っており、冷淡です。ほとんどの場合、ユーモアのセンスに欠けており、退屈しやすい傾向があります。さらに、かなり無口で他人との間に感情的な結びつきを築こうという意欲が欠如しています。多くの人がアレキシサイミアの人々こそ「感情を持たない人」の明白な例だと考えていますが、その思い込みは間違いです。

アレキシサイミアの原因は、感情学習障害あるいは神経障害ですが、最終結果は同じですのでどちらなのかという点はさほど重要ではありません。自分自身の(そして他人の)感情状態を理解することができない人々なのです。今現在自分はどう感じているのかを正確に指摘することが、非常に困難に感じられます。

それにもかかわらず、人を愛しますし、幸せや恐怖、切望、苦悩、希望などを経験します。感情はあるのですが、その感じ方が歪んでいるために結果としてそれらを上手く表現することができないのです。

感情を持たない人

感情を持たない人などこの世に存在するの?

この質問への答えは「いいえ」です。感情を持たない人など一人もいません。全ての人間に感情を抱く能力がある、というのが実際のところです。ただし、大脳辺縁系を持たない人ならば感情を感じられないかもしれませんが。ここで、大脳辺縁系が基本的な心理プロセスや各感覚、そして衝動をまとめ合わせる役割の大部分を担う領域であることを思い出しておきましょう。この働きがあるおかげで、私たちは笑ったり泣いたり感情的な振る舞いをしたり、ある瞬間を記憶したりあるいは忘れたいと願ったりすることができるのです。

人間は、生まれながらに理性的というわけではありません。そうではなく、理性という能力を持った感情的な生き物なのです。感情が人に感覚をもたらす神経化学的なホルモン反応を意味する一方で、気持ちというのは情動の心的表象を指しています。考えてみてください、皆さんも常に感情を感じていますよね。

全ての人間が感情を持っていますが、その感じ方は一様ではありません。もっと言うと、必ずしも全員が他人との共存を目指したり豊かな結びつきを築くためのツールとして感情を利用しているとは限らないのです。

  • Josanne D. M. van Dongen (2020)The Empathic Brain of Psychopaths: From Social Science to Neuroscience in Empathy. Frontiers in Psychology.  16 April 2020 | https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.00695