観念奔逸(かんねんほんいつ)という認知障害について
観念奔逸とは、思考や観念が明確な意味を持たないまま次から次へと急速に現れては去っていく認知障害のことです。この認知異常は発話の変化を伴う傾向がありますが、これにはあり得ないほど高速で展開する思考が反映されています。
観念奔逸は、躁状態という興奮、感情、そして活力が高揚している状態が引き起こすものとして典型的な症状です。躁状態は双極性障害で繰り返し現れる状態なのですが、それ以外の問題の一部として生じたり、単独で現れる場合もあります。
そうは言っても、観念奔逸の最も明白な側面は思考の速度とリズムが早まることです。ただし、実はこれは精神活動全体の全般的高まりに呼応していて、ほとんどのケースで、語漏(過剰に話すこと)が伴います。
“ある種の悲しみがもたらす多幸感のようなものがある、狂気的なレベルのね”
-ナイジェラ・ローソン-
観念奔逸って何?
前述の通り、これは連続的で途切れることのない思考の流れを特徴とする、ある種の脳の障害です。つまり、観念奔逸を起こしている人の頭の中では、絶え間なく降り続ける雨のように思考が流れていくのです。一つの思考が次のものに繋がり、それがさらに次へ…というように、とにかく思考プロセスが継続します。
この思考の鎖の異常な点は、核となるアイディアが存在せず、何の構造にも従っていないという点です。ただランダムに一つの考えから次のものへと意識が移っていきます。そのため、観念奔逸を起こしている人は、一つの考えについて話し始め、その話が終わらないうちにそれとは全く関係のない別のアイディアについて話し始めることがあります。
そのため、聞き手からすればおそらく、全く一貫性が感じられないでしょう。こういった人々の発言内容を分析すれば、一つの観念から次へと飛躍していることがわかるはずです。この現象は、部分的には外部刺激が原因で起こっています。
例えば、本の話をしている時に犬の鳴き声を聞くと、きっと犬の話をし始めるでしょう。そのため、発言内容が共通のテーマに従っているのではなく、周囲の環境に応じて話題が変化するということにお気づきいただけるはずです。
観念奔逸の原因と特徴
科学界は未だに、観念奔逸の正確な原因をピンポイントでは指摘できていません。ただ、一般的には双極性障害という別の病気に関連していると考えられています。観念奔逸のエピソードが単独で、それ以外の病気から誘発されることなく生じることは非常に稀ですが、そのようなケースが無いわけではありません。
この障害については、多幸状態と関連性があることが知られています。これに激しい精神活動が伴い、思考プロセスの速度が上がるため、結果として話すスピードも早まるのです。
観念奔逸のエピソードが起こっている間、湧いてくる思考に共通のテーマは存在しません。患者の思考や発言内容が結論にたどり着くことがないのは、それが理由です。彼らの考えることは全て乱雑で、全体として見れば一貫性に欠けています。なぜなら、様々な事柄の間で彼らが作り出す連想は非合理的だからです。ただし、観念奔逸には妄想は含まれません。
関連する症状
場合によっては、様々な思考の中に互いに関係する考えが含まれていることがあります。リンクし合う観念が2、3ほどあっても不思議ではないのです。しかし、メッセージ全体を分析すればそこには何の一貫性も見られないことがわかるでしょう。観念奔逸に襲われると、結論に辿り着いたり発話を論理的に終わらせることが困難になります。
観念奔逸を起こしている人々は、どんな経験をしているのでしょう?まず、集中することが難しくなります。彼らの集中力持続時間はほぼゼロで、単一の対象に集中することができません。むしろ、多数の思考の間をランダムに行ったり来たりします。もちろん多くの場合、これは外部からの刺激によって左右されます。だからこそ、発言の内容は全く意味が通じません。
この時彼らの心を占めているのが、興奮という感情です。話すスピードの速さや思考の活発さがとても明白ですが、これはつまり、観念奔逸の症状はとてもわかりやすく、誰が見てもその異常性が認識できるということを意味します。この理由から、観念奔逸は普通、複数の影響をもたらします。
重篤な疾患
観念奔逸は重篤な疾患に分類されます。なぜなら、患者は人としての社会的な能力を一切失ってしまうからです。彼らとコミュニケーションを取ることは不可能なのです。従って、この論理的思考からの断絶が発生している限り、普通の日常的な活動に参加することはできません。
このため、経験を積んだ専門家に正確な診断をしてもらうことが必要不可欠です。この病気は、認知的性質に異常をきたしたり、知能に影響の出るその他の病気と酷似していますし、特定の形態の統合失調症の初期段階にもよく似ています。
観念奔逸のための具体的な治療法は存在しません。精神科医は、各症例を注意深く検査し、それが別の疾患と関連しているかどうかを判断する必要があります。そうすることで、患者の状態に応じて実用的な介入計画を立てることができるのです。
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Sauvagnat, F., & Sauvagnat, R. (1998). Fenómenos elementales y estabilizaciones en las psicosis maníaco-depresivas. Revista de la Asociación Española de Neuropsiquiatría., 18(67), 459-470.