刑務所における教育
刑務所のような閉ざされた環境での教育は効果があるかという議論があります。これは、一種のユートピアなのでしょうか?生徒に結果はみられるのでしょうか?刑務所における教育には多くの意見がありますが、社会的刑務所教育と呼ばれる社会教育の分野がこれらの疑問に光をあてるといいます。
「閉じ込められた人を本当に教育できるのかについて、人は討論する。もしあなたが、閉ざされた、懲罰的、暴力的環境で、教育的または開放的社会教育の実践を提案するのであれば、それは何だろう?ユートピア?パラドックス?矛盾?」(訳)
‐ホセ・デル・ポゾ、ファニーT・アナノス‐
スカルフォ(2002)は、教育が人民アイデンティティの基礎だと言います。「この権利を使わない、または、受けない人は、社会に属する機会を失う。社会を発展させるため、義務を果たし、権利を実行する真の国民になれない、あるいは、本当の意味で参加することができない」(訳)
これらの考えから、矯正的環境での教育決議が生まれました。これは、エデュケーション・インターナショナル・第5回ワールド・コングレス(2007年7月ドイツ、ベルリン)で誕生しました。
刑務所における教育は単なる挑戦ではありません。権利であり、義務論に基づいており、入所中も犯罪者の自律を発展させることを求めるべきなのです。(2)
刑務所における教育理論
社会教育のこの特別な分野をより良く理解するため、刑務所における教育理論をいくつかみてみましょう。
精神病理学理論
この種の理論は、個人の精神病理学的、生物学的因子を介して犯罪行為を解釈します。犯罪や刑務所における治療の歴史に、大きく関係してきました。アイゼンクはこのモデルの素晴らしい例です。(1)
個人の因子のみを考慮するのではないという考えの社会心理学派があるということをここで知っておくことも重要でしょう。(3,4)
社会学理論
この種の理論は、多次元的、構造的因子と関係します。体制、社会的、教育的、文化的関係、家族関係が犯罪の原因に影響を与えるという考えに基づいています。(1)社会的逸脱理論や機会の不平等理論がその一例です。(5,6)
社会教育理論
前世紀、恵まれない人のための社会教育的介入メソッドを顕著に、豊かに発展させるモデルや視点が養われたとミゲル・メレンドロ教授は言います。
刑務所における教育で社会教育モデルに役立った分野には、次のようなものがあります。
- 行動主義アプローチ
- 動的見通し
- 構成主義
- 体系的家族療法
- 適正モデル
- 普通教育
矯正施設における社会教育プログラム
ガリド―とゴメス(1995)によると、刑務所における教育は、昔から科学的に、技術モデル(実証教育の中にあり、対象の調整を求める行動学的伝統的医学の枠組み)に従ってきたと言います。
昔ながらの刑務所における教育モデルは、属性的および社会文化的性格を考慮せず、生徒に一定の社会的枠組みを作ろうとさせます。(1)
刑務所で最もよく使われるプログラムは、一般的に矯正的です。強化や罰の行動学的モデルに基づいています。また、このようなモデルを実行する人は、これが一番良いと思っている傾向があります。このモデルは、4つに分けられます。
- 精神学的、精神分析学的モデル
- 生物学的行動モデル
- 因子モデル
- 人文主義モデル
人文主義的で、新しいモデルもあります。次の通りです。
参加型モデル
参加型モデルは、刑務所における社会教育的更生は刑務所コミュニティ全体、特に収容された人を含めるものです。
そうすることにより、皆が一緒にプロセスを行うという考え方が、収容者に更生の過程を自発的に取り入れさせるのです。(1,9)
自律モデル
これは個別化された集団教育プログラムです。(10)
ジェンダー・エンパワーメントモデル
これは、二面性をもちえます。ひとつは、犯罪歴のある女性が社会文化的、構造的犯罪を乗り越える助けになります。(11,12) もうひとつは、刑務所の中の男性と女性の平等性を高めることです。(13,14)
知識と教育的行動モデル
このモデルに不可欠なのは、収容された人が刑務所内で行う作業に対する集団的合意です。また、収容された人が自分達のしていることを楽しむこと、教師と犯罪者の教育的関係に重きが置かれます。(1)
解放モデル
このモデルは、再入が、専門的・構造的な面で、刑務所の介入を新たにすると考えます。刑務所の空間とコンセプトを自由への可能性へと変えることが課題になります。
ご覧いただいたように、刑務所における教育モデルはたくさんあります。しかし、現在、行動学的個人的モデルがまだ多いようです。近い将来、これらのモデルのどれかを発展させることは可能だと思いますか?
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