気分変調症とは?どんな影響があるの?
感情について一つでも本当のことがあるとすれば、それは普遍的でありながら、個々の文化で違いも存在するということです。笑顔には私たちが思うのとは違う意味があるかもしれませんし、額にしわをよせることが私たちの言葉とは異なる意味を伝えるかもしれません。しかし、国と文化によって人々が表現したり認識したりすることを除けば、私たちの感情全般は同じです。ですが、自分の感情の状態がコントロールできなくなったとき、気分変調症が発生していると言えます。
目の前にいる人に何が起こっているのかを特定することができると、落ち着いて不確実さを減らすことができます。誰か悲しんでいる人に出会ったとき、あなたはそれを認め、理解し、共感しようとさえするかもしれません。それは、その分野のことをわかっていて、ある程度適切な方法で反応することができるからです。では感情のコントロールができなくなっている兆候のある人に出会ったらどうでしょうか。
「自分の感情を大切にし、決して軽視してはいけない。」
―ロバート・ヘンライ―
双極性障害ではなく、気分の変調
「あの人は躁うつだから」というひどい言葉が意味することが何なのかを明確にしておきましょう。その人の気分がなぜそんなに速く変わってしまうのかが理解できないからといって、その人を「双極性障害」だと表現してしまうことがよくあります。双極性障害は精神障害で、躁うつ病としても知られているものです。
フレッド・K・バーガー博士(2006)によれば、こういった段階は何日も、あるいは何カ月も続く可能性があると言います。こういった問題については精神医学の診断と特別な治療が存在します。私たちが何気なく双極性障害だと言うものは、実際は気分変調症により近いのです。
「人と関わるときは、論理的な生き物と関わっているのではないということを覚えておこう。私たちは感情の生き物と関わっているのだ。」
―デール・カーネギー―
気分変調症は、正確には健康問題や病気だとは考えられていません。ではこれはいったい何のことを指しているのでしょうか。それは、短く言うとコントロールできない感情のことです。自分の感情や基本的な感情表現に制限がきかないという感覚です。
例えば一連の悲しみや喜びを表現する時に、コントロールできない涙や不適切な笑いが出てしまうときがあります。これは自閉症や精神分裂病などのような特定のコンディションと関係のある症状です。しかし、健康な人もこれに悩まされることがあるのです。
病気?それとも一時的な複雑な感情?
気分変調症は「情動問題の線上」に位置します。情動性とは、こころの中の要素(思考など)とこころの外のもの(仕事、家族、社会的状況など)に対する反応として、個人が感じたり表現するもののことです。では、こういった気分やこころの状態の変化の原因はなんでしょうか。それは生来のものか、それともその背景に思考のパターンが存在するのでしょうか。
感情の制限とコントロールは、大脳辺縁系で行われていると考えられてきました。これは脳の構造の一部です。私たちの脳の中には、感情を表現し、制限し、そしてコントロールするために存在する部分があるのです。
「私たちは自分がどう振る舞い、考え、感じるのかについての責任に無意識になるとき、とても危険な状態です。」
―マーシャル・B・ローゼンバーグ―
感情を無茶苦茶にし、変化し、きちんと機能しなくさせ、私たちにはどうしようもない状態にしてしまう要素が存在します。極度な気分の変化の主な原因は脳のダメージであり、これは本当にいろいろなことを制限してしまうのです。
こういった類の問題は、多発性硬化症や筋萎縮性側索硬化症、心血管系の問題、パーキンソン病やアルツハイマー病のある人に普通は見られます。複雑な情動の出ている間、悲しみのようなものと同じグループに属する感情や表現を制限することが難しくなります。しかしこれをうつ病と混同してはいけません。気分変調症の影響を受けないうつ病の特徴(食欲など)もあるからです。
気分変調症とは結局なんなのか
気分変調症はそれを目撃する人を皆驚かせます。普通のことを極端に大げさに言ったり、なんということのないシチュエーションで抑えきれずに笑ったり泣いたりするのは警告サインです。
知り合いの中に、トラウマになるような離婚を経験した人や、その最中だという人がいるかもしれません。そういった人には、悲しくて泣いてしまうような感情の開放の時間があります。それと同時に、友達と夕食を食べたりテレビ番組を見たりしながらリラックスするときもあるでしょう。これは気分変調症ではありません。
また、私たちが他人の感情の制限に何らの方法で影響を与えられる、ということもわかっています。大学の研究で、これを公式に証明したものもあります(R. Company, U. Oberst, and F. Sánchez, Psychology Bulletin, No. 104, 2012)。気分変調症の場合、周りの人のために行動する余地はとても限られており、完全にそれが存在しないこともあります。
「感情は邪魔になることもあるし、途中で襲ってくることもある。」
―マーヴィス・マツラ―
気分変調症は、健康上の病気ではなく、一時的なコントロールのきかない状況なのです。深刻なケースを除いては、こういった人にはあいだあいだに安定した瞬間があります。しかし、この情動の問題は社会的、または仕事関係でとても重要な結果を招きかねません。
そのために孤独やうつ、不安といった問題を経験するかもしれません。こういった感情を感じているということに気が付いたら、医者の元を訪れ、診断をしてもらい、専門家を紹介してもらったり、必要ならば治療を概説してもらいましょう。