「記憶の中のブランド」実験とは?

12 9月, 2020
あるイメージに含まれる数多くの詳細情報は、何百回もそのイメージを目にしていたにも関わらず完全に気づかれないままであることをご存知でしたか?本日の記事では、「記憶の中のブランド」実験の結果について詳しく紹介していきます。

「記憶の中のブランド」実験は、人間の記憶が単なるデータの保管庫ではないことを明らかにしました。私たちの脳は機械ではありません。実は、記憶などの機能も想像力や創造性に支えられているのです。つまり、各人のものの覚え方には膨大な数のバリエーションが存在しているということです。

世界的に力の強い企業は、自社のブランドを覚えてもらおうとかなりの努力をしています。この目的のために彼らはロゴをデザインし、人々の記憶に素早くそして簡単に刻まれるようなスローガンを生み出すのです。その最終目標は、ロゴを見ただけですぐにそのブランドを連想してもらうことです。しかし幸運なことに、「記憶の中のブランド」実験はこのトリックが常に上手く機能してくれるわけではないことを証明しました。

この実験での発見は興味深いものでした。この実験により、人間の脳はマーケティング担当者たちが思っているほど従順ではないことが明らかになったのです。記憶の中の空白や歪みなどを見れば、人間は知覚した内容を勝手に解釈して適合させ、その人独自のやり方で改変しているということがわかります。そのため、人の頭脳に痕跡を残すのはかなり困難なのです。

“今現在私は記憶喪失とデジャヴとを同時に体験している。このことを以前は忘れていたように思う”

-スティーブン・ライト-

「記憶の中のブランド」実験

「記憶の中のブランド」実験

この実験は最初、Signsというポータルサイトに登場しました。このテーマに関する探究の後、彼らはアップルやイケア、セブンイレブン、スターバックス、ターゲット(百貨店チェーン)、ウォルマート(スーパーマーケットチェーン)、アディダス、バーガーキング、ドミノ・ピザ、およびフット・ロッカー(アパレルチェーン)といった企業は広く記憶されるポテンシャルがあるだろう、という判断をしました。これらのブランドは多くのアメリカ国民の日常生活に頻繁に登場するためです。

研究者たちは156人のボランティアを募りました。男性と女性が半分半分です。年齢にはばらつきがありましたが、平均年齢は34歳でした。まずはじめに、参加者たちはできる限り正確に上記の企業のうちいずれか一つのロゴを描かなくてはなりません。これは、彼らがどの程度こういったブランドのシンボルを覚えているのか特定するためです。

ロゴとは、あるブランドを象徴し、その独自性を示すために広告の中で使われるシンボルマークであることを念頭に置いておいてください。そのため、そのデザインは知恵や思慮の結晶であり、簡単に認識してもらうことと、具体的な感情を伝えることとを目指しています。これが、あらゆる企業の全ての製品および広告の中でロゴが登場する理由です。

頻繁にロゴを見せることで人々はそのロゴに慣れていき、ただそれを見ただけでブランドを特定できるようになります。そうなると次は、それらのシンボルがある企業の特定のイメージや価値を伝える役割を果たすようになるのです。

最初の結果

Signsのチームは、ボランティアたちから合計で1,500枚のロゴの絵を集めることに成功しました。そして慎重にこれらを調べた結果、いくつか驚きの発見がありました。参加者たちはもちろんロゴを覚えており、対応するブランドとロゴとを結びつけることはできてはいましたが、正確に描けている人はほとんどいなかったのです。

一番再現度が高かったのはイケアのロゴでしたが、それでも正しく描けていたのは参加者のうちほんの30パーセントのみでした。反対に再現度が最も低かったのはスターバックスのロゴです。なんと、参加者の6パーセントしか正確に覚えている人はいませんでした。ミスの中でも一番多かったのが、人魚の王冠が描かれていない、というものです。

実はこういったロゴは記憶の中でぼやけてしまうのだということを研究者たちは発見しました。人々はそれほど真剣にロゴに注意を払っていないのです。これを受け、ロゴがシンプルであればあるほど、そのロゴは私たちにとって覚えやすくなる、という結論が導き出されました。実際に例えば、5人に1人がアップルのロゴをはっきりと再現することができていました(そのうち15パーセントはかじられた跡を逆側に描いていましたが)。

「記憶の中のブランド」実験

その他の結果

この実験が示しているもう一つの結論は、人は企業のオリジナルのロゴの方を記憶しがちであるということです。例を挙げると、大多数の参加者たちがバーガーキングのロゴとして王冠を描きました。この企業は約50年前に王冠をロゴから取り除いたという事実があるにも関わらず、です。また、多くの人がアップルのロゴに色を塗りましたが、実際にはこのロゴは1998年からモノクロ化されています。

同様に、人が最もよく覚えているものがロゴの色であることも研究で明らかになりました。この要素は参加者たちが正しく記憶していた部分であり、このことは色が記憶に残りやすいという説も提唱しています。さらに、細かな部分(上部にあったか下部にあったか、小さな数字は何だったか、など)は記憶から隠されてしまう傾向があることもわかりました。

実は、多大な関心を引き出すものであれば何であっても記憶に残されるものであり、ロゴはあまり人々の関心を惹きつけるものではありません。しかしながら、私たちがロゴを見るだけで世界レベルでブランドを特定できているのは事実であり、そのためロゴはほとんどの企業にとっての強力なアイデンティティ的要素だと言えるでしょう。

Abad, N. S. (2013). Publicidad y memoria, una nueva visión desde las neurociencias (Doctoral dissertation, Universitat Ramon Llull).