ナンシー・アンドレアセンの経歴と統合失調症の研究

21 4月, 2020
統合失調症は、世間で考えられているよりもずっと一般的で、複雑な病気です。ナンシー・アンドレアセン博士は人生を統合失調症の研究に捧げ、この分野において多大な業績を残しました。この権威ある現代の科学者についてもっと知りたい方は、続きを読んでみてください!

ナンシー・アンドレアセン博士はアメリカの心理学者です。彼女はアイオワ大学カーヴァー医学部(The University of Iowa Carver College of Medicine)のアンドリュー・H.ウッズ精神医学研究所(The University of Iowa Carver College of Medicine)に所属し、同大学の脳画像処理研究センター(Neuroimaging Research Center)、及び精神保健臨床研究センター(the Mental Health Clinical Center)にて理事を務めています。

彼女の名前は聞いたことがないかもしれませんが、ナンシー・アンドレアセン博士は統合失調症の研究において非常に大きな貢献をした著名な研究者です。とはいえ、彼女は初めから医学界に身を置いていたわけではありません。

実は、アンドレアセン博士はルネサンス文学を専門として英文学の博士号を取得しています。以前はこの分野で教授を務めていましたが、その後、彼女の人生は思わぬ方向へと転じます。第一子の娘を出産したのちに深刻な健康問題を患ったため、医学の道へ進むことを決意したのです。

アンドレアセン博士の研究は精神医学に限られているわけではありません。彼女の研究は、創造性や精神性、神経画像処理、ゲノム、自然史、統合失調症の神経メカニズムにまで及びます。この女性の科学的貢献について、詳しくは続きをご覧ください。

ナンシー・アンドレアセン 統合失調症

ナンシー・アンドレアセンの「世界初」

ナンシー・アンドレアセン博士は多くの意味でパイオニアです。彼女のキャリアの中にはたくさんの「世界初」が際立っています。

  • 世界で初めて、MRIを用いた統合失調症の量的研究を行った。
  • 統合失調症の陽性症状と陰性症状を評定する尺度を世界で初めて開発した。
  • 世界で初めて、創造性に関する現代的な実証研究を行い、家族、環境認知などの要因や、それらの精神病との関連性を検証した。
  • 世界で初めて、ゲノム技術と神経画像処理技術を組み合わせた研究を行った。

アンドレアセン博士はDSM-IIIとDSM-IV特別委員会において、精神医学的診断にも貢献しました。DSM-IIIのために自身の考案したPTSD(心的外傷後ストレス症候群)の定義によって、ストレス障害研究の礎を築きました。

アンドレアセンはアメリカ精神病理学会(the American Psychopathological Association)、精神医学研究会(the Psychiatric Research Society)の理事も務めていました。現在は、全米医学アカデミー(the Institute of Medicine of the National Academy of Sciences)、アメリカ芸術科学アカデミー(the American Academy of Arts and Sciences)の会員です。

統合失調症の研究

アンドレアセン博士は統合失調症の分野を牽引する専門家です。数々の研究を行い、統合失調症のメカニズムの理解や治療に貢献してきました。

統合失調症は今日私たちが直面している最も大きな健康問題の一つで、人口の1%が患っている病気です。WHO(世界保健機関)によると、疾患の世界的な負荷という観点では医学疾患カテゴリーの中でも9番目となっています。これは、がん、AIDS、心臓病、糖尿病など、その他の主な疾患よりも上位なのです。

統合失調症の症状は多岐に渡ります。知覚障害(幻覚など)、推論的思考(妄想など)、思考の混乱、非常に乱れた、または異常な運動行動などが挙げられます。しかし、これらの兆候や症状は全て統合失調症に限られたものではありません。

したがって、全ての症状に苦しむ患者はいません。そのため統合失調症は、脳の一つのシステムにのみ影響を与える他の精神病とは異なるのです。例えば、アルツハイマー病は記憶に支障をきたし、双極性障害は気分に影響を与えます

統合失調症の再概念化

ナンシー・アンドレアセン博士による統合失調症の現代的な再概念化では、症状が陽性と陰性の2つのカテゴリーに区分されています。陽性症状とは、通常の機能の誇張(あるはずのないものがある)であり、陰性症状とは、通常の機能の欠如(あるべきものがない)であるとされています。

  • 陽性症状には、妄想、幻覚、支離滅裂な会話、異常な行動などが挙げられます。
  • 陰性反応には、会話の減少、思考力の低下、意欲の低下、快感の消失、無感動などが挙げられます。

神経科学的に見ると、統合失調症は個別の細胞や領域に影響するのではなく、分散した神経回路に影響を与える病気です。統合失調症を患う人のほとんどは、考える力や感じる力がなんらかの形で混乱したりまとまりがなくなったりするという主観的な感覚を持っています。

神経処理画像により、科学者たちは、統合失調症の患者の脳がどのように異なるはたらきをしているのか研究できるようになりました。主観的な「まとまりのなさ」や「混乱」の感覚は、分散した脳の領域が効率的で正確な方法でメッセージを送受信する能力における障害を反映していることが、これらの研究で論証されてきました。

統合失調症を意味する“Schizophrenia”という言葉の語源は、この病気をうまく説明してくれています。これは文字通り、「断片的で、まとまりのない精神」という意味です。まさにこれが、科学者たちが神経処理画像を通して見てきたものなのです。

ナンシーアンドレアセン 統合失調症

研究に捧げられた人生

人々が統合失調症の知識を深め、この疾患の治療を向上させられるよう、現在もなおナンシー・アンドレアセン博士は研究を続けています。現在は、脳構造画像、脳機能画像の研究、経時的変化、結果の研究に取り組み、遺伝子上、ゲノム上の要因を調査して神経処理画像研究と統合しています。

ナンシー・アンドレアセン博士は間違いなく、精神医学、統合失調症の分野において鍵となる人物です。

  • Andreasen, N. C., Berrios, G. E., Bogerts, B., Brenner, H. D., Carpenter, W. T., Crow, T. J., … & Lewine, R. R. J. (2012). Negative versus positive schizophrenia. Springer Science & Business Media.
  • Arndt, S., Alliger, R. J., & Andreasen, N. C. (1991). “The distinction of positive and negative symptoms: The failure of a two-dimensional model”. The British Journal of Psychiatry158(3), 317-322.
  • Meet Dr. Nancy Andreasen. Retrieved from http://www.nancyandreasen.com/