肉体的な痛みだけじゃない:繊維筋痛症

肉体的な痛みだけじゃない:繊維筋痛症
Maria Fabregat Giribet

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Maria Fabregat Giribet.

最後の更新: 21 12月, 2022

アントニアは52歳の女性です。彼女は多くの制限に邪魔されることなく生きてきました。彼女は家と兼用の民宿のような所で働いています。

アントニアは良い人です。いつも笑顔で友達や隣人と話をして、ほとんど不平や不満をこぼさず、彼女らしく、ありのままに生活をしていました。

しかし彼女は、この平穏な毎日を送る為に払っている犠牲の存在を知っています。彼女は体に痛みを感じているのです。特定の場所がひどく痛むのです。それによって夜よく眠れず、朝起きるのが困難になってきました。

時には、食器の洗い物が出来ないほどの痛みを感じることがあります。またある時には、ナイフで背中を刺されているように感じるのです…。

アントニアのように、明確な理由なくコンスタントに痛みを感じる人は、繊維筋痛症になっていることがあります。繊維筋痛症は症状がいつも現れるわけではないので、理解しづらい病気と言われています。

それは他人からすると、何かをやらない言い訳として痛みを訴えているように見えますが、実際に痛みは存在しているのです。彼女たちが感じる痛みはまぎれもなく本物で、日々苦痛をもたらしているのです。

繊維筋痛症とは?

一般的に、繊維筋痛症は筋肉や繊維性組織(靭帯や腱)などに見られる慢性的な痛みだと言われており、筋骨格系の症状です。

一方、痛みへの過敏症とも言われており、痛みを促す刺激が起こった際に、脳がより多くの痛みの信号を送るのです。また、時間が経ち、痛みを生み出す刺激が無くなっても痛みが持続する可能性があります。

これは、単なる筋肉で起こる変化ではありません。研究では、脳の中にある中枢プロセスシステムに変化が起こっていると発表しています。

これは、体内における痛みの緩和活動の欠如(体内オピエートの欠如)や中枢神経系(セロトニン、ノルエピネフリン、そしてドーパミンが少ない)に存在する神経伝達物質の変化に起因します。

また痛みとは別に、その他の症状を伴うことが一般的です。疲労、睡眠障害、手足のしびれ、うずき、集中力の欠如、時には、うつ病や不安障害などの精神的な症状も引き起こすことがあるのです。

肩に痛みを感じる女性

繊維筋痛症は説明するのがとても困難な病気です。なぜなら、特定の生物学的、または心理学的な原因が何も分かっていないからです。原因は分からないにせよ、この病気は1992年に世界保健機関(WHO)によって認識されました。

繊維筋痛症を診断する基準として、体の中にある敏感なポイント13個の内11個(首、背中、ひじなどの関節)に3か月連続で痛みがある場合と言われており、この基準以外に、この痛みを説明する臨床的な定義はないのです。

繊維筋痛症は慢性的な痛み?

アントニアのように多くの人が長期的に続くこの痛みの原因を知りませんでした。彼女は様々な医者を訪ね、原因を突き止め治療しようとしましたが、彼女が繊維筋痛症と診断された時、彼女は絶望を感じたのです。

しかし、これで彼女の人生が終わるわけではありません。確かにこの痛みは慢性的なもので、生涯を共にしなければならないことを受け入れるのは簡単なことではありませんでした。

不幸なことに、繊維筋痛症を和らげる医薬品などはまだ存在しません。炎症を抑える薬なども、痛みを緩和してはくれるのですが、根本的な痛みを消すわけではないので服用しすぎると効果が無くなってきます。

しかし、この病気が変性疾患でなないことを忘れてはいけません。関節を破壊したり、元に戻せない怪我や変形ではないのです。このことを忘れずに、深刻な運動障害や車いす生活に繋がると言われているこの病気の神話を壊してしまいましょう。

繊維筋痛症に関する特定の原因や治療法がなくても、生活の質を向上させる方法はいくらでもあります。この病気を患っている人は、痛みが悪化しないように自分自身を大切に扱うということが学べます。痛みを一定以下に維持したり、軽減したりなど、変化を起こすことは可能なのです。

休んでおくべきか、活発にしておくべきか

通常、繊維筋痛症を患っている人は、痛みが来ると動くことすら出来ないので、痛みの無いときは活動的になり、痛みがくるまで疲労を溜めこむことがあります。

ベストなのは、動く休むなど片方に集中せず、個人それぞれに合ったバランスを見つけることです。この病気を抱えた人達は自分自身が持つ活動と休息のリズムの調整を学ぶ必要があるのです。

活動と休息のリズムを調整する為にまず私達がお勧めすることは、自身の体の声をよく聞き、観察することです。あなたに起こる痛みを強力なものにしてはいけません。(0から10で痛みを区別する)

その痛みのレベルを5で落ち着かせるように意識をして、しっかり休息をとるのです。これを続けることで、痛みや疲労を危機的なものへ変えないように防ぐのです。

患者の多くが休息に専念出来るかもしれませんが、少なくとも1日に1回適度な運動を行うことを覚えておきましょう。

休息、そして、運動

患者は運動をしないことが原因でおきる問題を防ぐ必要があります。身体的活動を一切しないと、痛み、疲労、体のこりを悪化させてしまい、心理的にも悪影響なのです。

「リラックスのアートは、活動のアートの一部である。」

-ジョン・スタインベック-

関節の痛み

痛みを悪化させるのを防ぐ為、休息をたくさん取ることは、その人自身の期待を下げることに繋がります。これは1日の中で過度なタスクを行うべきだ、ということではありません。適当な目標を掲げ、大きなタスクをより小さく、より管理しやすいものにしようという意味なのです。

また、より柔軟に自分自身へ頼る度合いを調節すると良いでしょう。もし痛みが原因で、その日計画していたことが完遂出来なかった場合、自分を責めないでください。それでは、あなたの気分を悪くするだけです。

心理的治療は痛みを和らげてくれる?

実際に、社会や感情と良い繋がりを持つことが、肉体的な痛みを和らげる役立つがあると証明されています。心理セラピーは下記のように繊維筋痛症患者により良い生活や改善を掴む鍵を紹介しています。

  • 痛みを受け入れ、共に生きる。
  • 感情のバランスを保つ。
  • 睡眠の質を改善する。
  • 家族(特に、繊維筋痛症を経験したことがある人)など周囲の人との関係を向上させる。

一般的に、繊維筋痛症患者は(全ての人ではないにしろ)自分より他人を助ける傾向があるのです。このような人達はNOと言えるようにならないといけません。

明らかに、他人を助けることは良いことですが、それには限りがあるにもかかわらず無視をすることが出来なくなるのです。

このような場合、心理的な治療は他の事よりも自分を尊重し、大切にするように促します。これにより、積極的に自分より他人を助けるような状況にしっかりNOと言えるようになるのです。

もちろん、行うより言うだけの方が簡単です。休息を取る方が気分を良くしてくれると分かっている時だってあります。問題は繊維筋痛症を患っている人達が休息をとると、彼らは罪悪感を感じてしまうということです。

「義務」をこなし続けなければ、という気持ちを持ってしまうのです。ですので、そういった人達は、罪悪感を忘れて時間を過ごすことを学ぶ必要があるのです。

繊維筋痛症とアイデンティティ

多くの繊維筋痛症患者にとって、休息をとるのが単純な目的を持つものだとしても、それは彼らのアイデンティティに疑問をもたらしてしまいます。彼らは自分自身の価値が無いと感じるのです。

ジョージ・ケリーの著書、「Theory of Personal Constructs(個人構成理論)」を基にした研究によると、いくつかの「構成」は、このような人々が必要とする変化を生み出すことに付随する「ジレンマ」に関連するものとして発見されたと言われています。例えば、寛大な態度、自己中心的な事の「構成」です。

大抵、患者は自分達を働き者で寛大な人間だと捉えており、無意識に今持っている活動や「義務」を放棄すると働き者や寛大な人間でなくなってしまうと感じているのです。

それが、彼らを弱く自己中心的と感じさせるのです。ですので、心理セラピーの目的は、彼らに休息をとらせたり、助けを求めさせたりすることはそういったマイナスな意味を含んでいないんだよと気づかせてあげることなのです。

「変化は変化の持つ性質と一貫性があるから作用する。」

頭をもたげる女性の後ろ姿

彼らは他に何が出来る?

繊維筋痛症の痛みは制御や予測も出来ないように見えます。まるで、何も助けることができないようです。しかし、「ゲートコントロール論」によると、一定の状況がそれを制御することができるというのです。

例えば、多くの患者が家族や友達などと一緒に、邪魔されずリラックスして過ごすと痛みが和らぐと答えています。

一方、仕事や過度の運動など、緊張やストレス、心配を感じると痛みが増すという答えもあるのです。

このような状況が彼らの痛覚に影響を及ぼしていると気づくことが出来れば、次のステップは、痛みを起こす状況を減らし、痛みを和らげる状況を増やすことです。

言うのは簡単です。しかし、生涯この病気と闘っていかなければいけない人達にとってそれは困難なことです。

「もし痛みが増して一人になったら、それは痛々しいものです。もし人が他人と繋がることが出来て痛みを文字に置き換えられるとすれば、それは成長の経験です。痛みを受け入れて共有することは、成長するチャンスなのです。」

-ルイージ・カンクリーニ-


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。