脳だけで生命維持は可能か?

17 12月, 2019
体が機能を停止した後、脳は生命を保つことができるのでしょうか? 神経科学者のラクエル・マリンは脳に関する2つの調査を実施しました。

最近の研究において、身体が機能を停止した後に孤立した脳が生命を維持することができるのか、脳だけで機能するのかという議論が持ち上がっています。今回は体を失った脳の機能についてご紹介します。

私たちの脳は「中枢司令部」であり、意識的及び無意識の行動、機能において必要不可欠です。現段階では、脳の移植は不可能とされています。

死んだ後も生き続けるニューロン

脳 生命維持

ベルリンとアメリカの研究所が共同で実施した調査では、生命維持を外した不可逆的な脳損傷を持つ人において、ニューロンの活動が観察されました。言い換えれば、臨床的には死んでいると判断された人の中でニューロンが活動していたのです。

科学者は、予想通り、酸素が不足したためにニューロンが機能を停止したことを観察しました。しかし驚くべきことに、酸素がなくてもニューロンに不可逆的な損傷を与えることなく、持続した特定の活動(分散脱分極と呼ばれる)を再開したのです。その後、危機的な状況が続いて被害は不可逆的となりました。

この発見は、脳波記録が脳活動の徴候を示さず、心臓が永久に鼓動を停止したという事実にもかかわらず、かなり長い期間、酸素がなくてもニューロンが生き続けることを示しました。下記で更に詳しく死を超えた生命の可能性についていくつかの情報ご紹介したいと思います。

「あなたが考えることすべてを信じないでください。思考は単なる思考にすぎません。」

-アラン・ロコス-

ご存知でしたか?:
脳の「ハピネスゾーン」とは?

生き続ける脳

脳 生命維持

ネイチャー誌に掲載された新しい研究では、体の機能が停止したブタの脳を延命させることに成功しました。研究者たちは、屠殺された豚から脳を取り出し、脳血管を通して栄養素と酸素を4時間維持する装置につなぎました。

6時間後、ニューロンがどのように代謝機能を回復し、糖を消費し、免疫系が再び機能するかを観察しました。その後、ニューロンを電気的に刺激すると、互いに通信する能力を回復したのです。

心肺停止後に脳が蘇り、間接的に身体活動を回復することができるのか?人間は近い将来脳を移植できるのか?というのがこの実験の大きなテーマでした。

興味深いことは、脳内のニューロンの活動が同時に起こらなかったことです。これは、ニューロンが選択的刺激に関係なく自律的に作用することを示しています。つまり、特定の「意識」を回復したのです。

研究者たちは、倫理的な問題のために6時間後にブタの脳の実験を終了しました。意識を復活させるつもりはありませんでしたが、脳活動に対する薬物または他の治療の効果を分析するための複雑な研究​​モデルを手に入れることができたのです。

こちらをご参考に:
死の直前に私たちの脳に起こること

孤立した脳:議論は続く

この研究をきっかけとして、個人の死を超えて意識は一体どこから始まっているのかと言う議論が多くなされるようになりました。ほとんどの国では、心臓と肺の活動が停止すると、人は法的に死亡したと見なされます。脳は大量の酸素、血液、エネルギーを必要とするため、以前は脳を復活させることは不可能だと考えられていたからです。

孤立した脳は、心肺停止後に蘇生し、間接的に身体活動を回復することができるのでしょうか? 将来、脳移植が可能になるのでしょうか?これらの魅力的な質問は引き続き議論を呼んでいます。

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