脳の柔軟性:頭を柔らかくするには?
アルベルト・アインシュタインは「人間の知性の真の可能性は、変化の力に左右される」と言っています。新たな視点やアイデアを作り、意味のない概念を捨てることができる力は、人間の美徳です。ですので当然脳の柔軟性の概念や柔軟な頭については広く知られており、心理学や芸術の世界で研究が進められています。
数年前、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で、この概念に特化したエキシビジョンが催されました。私達はすべてが常に変化する時代を生きています。また時と共に、現実の処理、働き方、人との関係、さらに世界の見方において、科学やテクノロジーはますます重要になっています。
Hugh Aldersey-Williams、Peter Hall、Libby Hruska、Rebecca Roberts著の『Design and The Elastic Mind(デザインと柔軟な精神)』など興味深い本を読むと、より柔軟な考え方を発展させることの必要性について詳しく知ることができます。これを実践することによってのみ、複数の問題解決のためにほとんど強制されるかのように即興で対応し素早く反応し、常に変化する環境でベストを尽くし生き残ることができます。
脳の柔軟性を高めることは簡単ではありません。脳は変化に抵抗しがちで、できる限りコンフォートゾーンにとどまろうとします。しかし、より革新的で柔軟な頭を作ることにより、ポジティブな変化を生むことができます。
脳の柔軟性とその特徴
日常的に鍛え、発達させ、適応する頭の力と関係するのが、脳の柔軟性です。
この反対は、物事が思ったようにあるいは期待するようにいかないことにフラストレーションを抱える堅い頭です。批評を認めない、失敗に上手く対処できない、あるいはミスをしたくないという思いから挑戦しないという人もいます。
これを頭にいれ、才能という概念について考え直してみましょう。音楽、芸術、エンジニア、臨床心理学などにおいて、自然な気質を発揮する人がいるのは事実です。しかし、このような気質があったとしても、柔軟な頭がなければ、幸福や成功にはつながりません。失敗への恐怖を捨て、新しいものへ自分を開放する人だけがこの気質を利用することができます。
曖昧が普通になる
物事は白か黒ではありません。魅力のないグレーゾーンが広く、人はそれに慣れなければならないのが現実です。そして脳の柔軟性により、人は不確かなものに慣れることができるのです。実際、今日当たり前にある仕事が明日にはなくなっているかもしれません。今日あなたの味方で来てくれる人が明日はいないかもしれません。あなたの周りにあるものすべてになんらかの不確かな性質があります。だからこそそれへの対処法を学ぶことが重要になるのです。
柔軟な頭は今まであったものを超える
今までにあったものとは、親しみやすい安全な空間を指します。永遠、静止、確信を感じさせてくれます。しかし、人生は静的ではないということを理解しなければなりません。人生は流れ、変化し、かなりのスピードで進みます。このような変化の中を生きるための一つの方法がイノベーションです。新たな観点を得るために、今までにあったものを超えることがカギとなります。
さらに、革新的思考を高めるには、創造性や直感に頼る必要があります。観察は重要ですが、それだけでは足りません。脳の柔軟性を高めるには、自分の周りを分析し、自分のニーズや人のニーズをくみ、積極的に行動することが大切です。
失敗を認める:ミスは学びの場
ミスや失敗への対処の仕方は、その人の特性を語ります。頭が固い人は自分をブロックし、自分は無能だと感じるような状況を避けようとします。一方で頭が柔らかい人は別の方法をとります。例えば失敗しても諦めません。これは学習の機会だからです。一歩下がることで、強さが身につくということを頭にいれておきましょう。
柔軟な頭:好奇心を大きくする
人生を通し脳の柔軟性を高めた人物をひとり挙げるとすれば、レオナルドダヴィンチです。今まで誰もしたことがないような実験や観察を行い、知識を獲得した優秀なルネサンス時代の男性です。
ご存知の通り、ダヴィンチは様々な分野でのリーダー的存在でした。幼少期に頂点を迎えることの多い、誰もが持っている好奇心という力があったからこそ、彼は多くの知識を得ることができました。頭が柔らかい人は変化を恐れません。反対に、知りたいというニーズが大きな動機となり変化を求めるのです。
さいごに、精神科医クロード・ロバート・クロニンガーの指摘をご紹介します。人が、日常生活で情報や変化に対し受容的になり、恐れることなく創造性をもって受け入れることができたら、その人の個性が強くなるでしょう。コンフォートゾーンを超えようという心は、同じ所にとどまることがないのです。