思い出の旅路を歩く:『ライオンキング』

2020年2月28日
リメイク作品を作るのは容易なことではありませんし、それが多くの人々の子ども時代の一部となっているような映画の場合はなおさらです。『ライオンキング』は名作であり、ディズニーの主要作品です。この記事ではこの映画の重要性についてさらに掘り下げていきます。

ディズニー社にとってノスタルジーは商売道具です。最近、90年代のディズニー作品、つまりディズニー・ルネサンス時代の作品が数多くリメイクされています。こういったリメイクの意図は、人々を映画を観る気にさせて過去を再訪させることですが、おそらく人々の中の合格点には達しないのではないでしょうか。最新のリメイク作品の中にも、かなり愛されていた作品がありました。それが我々の時代の『ハムレット』である、『ライオンキング』です。

ディズニー・ルネサンスはディズニースタジオにとって輝かしい時代でした。1989年から1999年の間、ディズニー社は『ムーラン』『ターザン』『美女と野獣』『リトルマーメイド』、そしてもちろん『ライオンキング』などを公開しました。

この時代には大人も子どもも楽しめるような映画が数多く生み出されました。当時としては画期的だったテクノロジーで作られたこれらの映画は、ディズニーマジックを別次元のレベルまで引き上げたと言えるでしょう。

インターネット時代が到来するまでは、映画は人々の生活における重要な一部分でした。映画を観に行くことは一大イベントであり、エキサイティングな経験だったのです。

中でも『ライオンキング』は大躍進を見せました。誰もがこの映画について話し、誰もがその大ファンでした。そしてこの魅惑的な世界はミュージカルの成功にも繋がり、現在でも上映されています。そしてディズニーはこれを再度呼び戻し、この素晴らしい映画体験のリメイクを作ろうとしたのです。

思い出の旅路 ライオンキング

なぜ『ライオンキング』をリメイクするのか?

短く言うと、それが大きな利益を生むからです。しかし公平を期すと、他にも複雑な事情が絡んでいるのは確かです。観客たちはこの新たなバージョンの子ども時代の名作に群がるでしょうが、しかしまたリメイクに対して非常に批判的になってしまう可能性もあります。

このリメイクが大人気になったのにはまた別の理由もあります。その他のディズニーの名作リメイクには自由な独自性が見られる一方、『ライオンキング』はあまり声高にオリジナルとの違いを出していません。多くの人にとってこれはディズニーの最高傑作であり、さらに一部の人々にとっては映画として最高レベルの作品なのです。

つまり、ノスタルジーと原作愛が創造性の自由を上回っているということです『ライオンキング』はある意味で誰も手が付けられない作品なのでしょう。細かい部分の違いを批判される恐れがあるため、誰も手を加えられないのです。

リメイクを作る理由は、ストーリーを別の視点から語ることから新時代に物語を蘇らせることまで様々です。『ライオンキング』に関して興味深いのは、これ自体がすでに著名な作品『ハムレット』のリメイクだという点でしょう。しかしオリジナルとは別の観点から語られている上、動物の王国に舞台が移されています。

2019年バージョンのものを詳しく見ていくと、制作者たちがこの名作を掘り下げるのがいかに難しいかを把握しているがゆえに、ひたすら原作への忠実さを保っていることがわかります。では、何も新しいものが加わっていないならばリメイクなど必要なのでしょうか?思い出を辿る旅をするため、もしくは単に利益を上げたいがために作られたのでしょうか?いずれにせよ、観客たちが映画館に殺到し、ノスタルジーが彼らに届けられたことは事実です。

また、新『ライオンキング』は非常に面白い映画でもあります。ビジュアルが素晴らしいのですが、その努力にはあまり注目されていないようです。特に新しいものや画期的なものが含まれているわけではないのですが、人々は新しさなど求めていません。そのため誰もが喜んで子ども時代の思い出に浸ることができたようです。

思い出 ライオンキング

『ハムレット』の亡霊

『ライオンキング』『ハムレット』の新解釈です。両者には類似性もありますが、家族全員で鑑賞できるように工夫されています。『ハムレット』はその当時では画期的で、登場人物やその心理学的な特徴を掘り下げており、この時代にしては考えられないような作品でした。悲劇的な物語はどの文学作品にも重要な影響を持っているものです。

『ハムレット』を引用として使用していることに加え、『ライオンキング』はキャラクターたちの情緒や感情、そしてモチベーションに焦点を当てています。物語は動物の姿を通して描かれるとはいえ、深い人間性を感じることができるのです。

『ハムレット』は単なる復讐の話ではなく、人間の本質や分析しがいのある人類の特徴に関する物語でした。『ライオンキング』では、ムファサと彼の息子との関係性が描かれます。これにより敵討ちが正当化され、子どもたちが映画の内容に共感しやすくなっているのです。

このように『ライオンキング』には『ハムレット』に似たプロットがありますが、人々の想像の世界およびディズニーの世界の中でそのアイデンティティが築かれています。悲劇やコメディ、そして音楽を通して観客たちは愛する相手を失う気持ちを体感します。リメイク版はキャラクターについてより深く考えさせられる内容になっており、アニメ版のような子供っぽい解釈は見られません。

思い出 ライオンキング

『ライオンキング』とその現在の重要性

2019年版『ライオンキング』では、新たな価値観が追加された最新の語り口が採用されています。映画のメッセージは人間がどう人間性に秘められた力を使うのかや、自然の本当の価値についてです。

そしてライフサイクルがここでも引き続き映画全体のテーマとなっており、ムファサがシンバに動物から植物に至るまで全ての生き物が重要であることを伝えるシーンもあります。もし私たちが欲望に負けて堕落してしまえば、地球に害がおよび、ライフサイクルが壊れて命がおろそかにされてしまうのです。

ライオンは他の動物たちを食べて暮らす強い動物だと考えられています。しかし、ムファサは死んだ後の動物たちの肉体の重要性について言及します。死体が大地の肥やしとなり、植物が成長して動物の食料となるからです。

全員が自らの力を乱用することなくこのライフサイクルに貢献できれば、もちろん時には不公平に感じられることもあり得るとはいえ、動植物たちの調和がとれ、皆が共存していくことが可能になります。

スカーは欲や堕落、そして全てのものや全ての動物たちを自分のものにしたがる願望を体現する存在です。彼は王国内の他の動物たちのことは気にかけず、植物が二度と育たなくなることについても関心を示しません。ある意味ではスカーが彼自身およびその世界を破壊している存在のようです。

このメッセージは私たちの生きる世界のパラレルワールドとなっており、人類が直面している気候危機に対して、そして不平等や迫害の結果もたらされる問題に対して警鐘を鳴らすのです。リメイク版はオリジナルに忠実で、原作の持つメッセージ性を保ちながらも、それを現代社会の現実に当てはめ、観客たちにスクリーン上で目にするものを身近に感じさせています。

『ライオンキング』は常にディズニーの名作であり続け、そしておそらく数年間のうちにこの新たなリメイク版は人々に忘れられてしまうでしょう。なぜなら、過去を懐かしむ気持ちがいつでも人々の心の中にあり、それがオリジナル作品を再び求めさせるからです。そして懐かしさのあまり挿入歌を口ずさんだり、作中歌が自らの人生のサウンドトラックとなったりするのでしょう。