割れ窓理論について

2019年6月10日
割れ窓理論は小さな問題が犯罪につながる、と述べています。些細な窃盗を許すことがより重大な窃盗につながり、腐敗にまで陥りかねないのです。

割れ窓理論とは、ある環境が不完全な状態の場合、人は法と秩序が存在しないと感じてしまうという考えです。そして、法と秩序がない場所では誰もが好き勝手に行動することができます。ルールが無いと、公共物や建物の破壊行為などを含むあらゆる行為が横行してしまうのです。

あなたはタバコを吸いながら歩道を歩いているとします。タバコを吸い終えたらその吸殻はどこへ捨てますか?もしそこがゴミひとつ落ちていない綺麗な歩道だったら、おそらくあなたは次にゴミ箱を見つけるまで捨てるのを待つでしょう。

しかし、もしその道が吸殻で溢れているような場所だったら、わざわざゴミ箱を探そうとはしないでしょう。他の吸殻だらけの地面にただ投げ捨てればすむのです。少なくともこれが研究の言わんとしているところです。

割れ窓理論について

割れた車の窓

フィリップ・ジンバルドー教授は、社会心理学においてもっとも知られている実験、スタンフォード監獄実験の責任者ですが、もうひとつ同じくらい価値のある、しかしあまり知られていない実験も行っています。それは通りに二台の廃車を放置するというものです。唯一の違いはその放置場所で、一台は貧困地区のトラブルが多い場所、もう一台は高級住宅街の通りに置かれました。

犯罪は、ある共同体が堕落の兆候を見せ、誰もそれを気にしていないように見える時に始まるものだ。

二台の車はどうなったのでしょうか?皆さんのご想像通りのことが起こりました。トラブルの多い地域に置かれた車は数時間の間に破壊され、一方でもう一台は無傷のままでした。貧困や社会からの疎外が犯罪を引き起こす、というのがもっとも論理的な結論でしょう。しかしそうではなく、ジンバルドー教授はその明白な説明に懐疑心をもち、研究を続けたのです。

彼が行った次のステップは車を変えることでした。彼は高級住宅街に置く車の窓を割りました。結果どうなったでしょうか?疎外化された地域に放置された車と全く同じことが起こったのです。数時間のうちに、二台とも同じ状況になってしまいました。

割れ窓理論について

そこで彼が出した結論が、割れ窓理論です。社会からの疎外それ自体が破壊行為を引き起こす唯一の要因というわけではないのです。むしろ、環境もまた重要な役割を果たしていました。車の割れた窓が堕落や無関心、無頓着さのイメージを与え、それがその場には法も秩序もルールも無いのだという幻想を作り出してしまったのです。割れたガラスは、貧困地区の環境のように、何をしてもいいのだという感覚を伝えてしまうのです。

地下鉄の割れた窓

割れ窓理論は、ニューヨークでもっとも危険な場所の一つである地下鉄の改善計画の出発点となりました。電車の車体が修理され、清掃され、落書きは消されました。スタッフは些細な窃盗であっても対処するようになり、地下鉄利用者全員がきちんと代金を支払うよう取り締まり始めました。その結果、地下鉄はだいぶ安全な場所となったのです。

もし私たちが暴力行為があるのが通常であると子どもたちに思わせてしまったら、彼らは暴力を許容する大人になってしまうでしょう。

地下鉄での成功を受け、ニューヨーク市は“ゼロ・トレランス方式”に乗り出しました。どんな法律違反も禁止し、行動規範を定めました。これによりその共同体の清潔さと秩序は改善されました。賛否両論のある取り組みではありましたが、ニューヨーク市の犯罪率は低下したのです。
割れ窓理論 ゼロ・トレランス

家の割れた窓

ご覧いただいた通り、もし窓が割れて誰もそれを修理しなかったら、次に起きることはわかりきっています。近隣が堕落の兆候を見せ始めると、その次の段階は非行や破壊行為なのです。

周囲の環境は私たちに影響を及ぼします。不備のない清潔な環境を作ることは、より良い共同体づくりにつながるのです。さらに、割れ窓理論はどんな環境にも当てはめることができます。例えばもしあなたがシンクの中にお皿を洗わずに数日間放置したら…

この理論によると、どんなに些細なルール違反(駐車違反、スピード違反、信号無視など)だとしてもそれを罰しないでいるとさらなるルール違反やもっと重大な犯罪に繋がってしまうそうです。

割れ窓理論は小さな問題が犯罪につながる、と述べています。些細な窃盗を許すことがより重大な窃盗につながり、腐敗にまで陥りかねないのです。手遅れになる前に明確なルールを定め、どんな例外も認めないということが一つの解決策となるでしょう。