パーソナリティ心理学:パーソナリティは実在する?

21 11月, 2020
パーソナリティ(人格)は、心理学の中でもカギとなるようなテーマです。しかし、パーソナリティなどというものが本当に存在するのでしょうか?これについて今の時点でどんなことがわかっているのでしょうか?

どの大学に通っていたとしても、心理学を専攻している学生であればおそらく「パーソナリティ心理学(人格心理学)」と呼ばれる授業を受けることになるでしょう。とても面白そうな科目であることは間違いありませんよね。ただし、実は決して簡単に学べる学問分野であるとは言えないのです。

とは言え、内容の複雑さについて恐れる必要はありません。大変なのは、理論モデルがたくさんある上に、それらに付随する最新情報や訂正情報、関連する批判なども学習しなければならない点です。それはまるで、化学の勉強を始めてみたら元素周期表が何種類もあったかのような具合なのです。学生たちはそのような混沌状態を乗り越えねばなりません。

リアルなパラドックス:パーソナリティの存在について

しかしながら、理論モデルや定義以上の、見過ごすことのできない別の混乱も存在しています。それは、パーソナリティ(人格)の存在に関するものです。驚くべきことに、「パーソナリティというものは本当に存在するのだろうか?」という疑問を多くの人々が抱いています。考えてみてください。例えば、あの人は背が高いあるいは低いと言うのと同じ要領で、あの人は良い人だ、などと評価することは可能なのでしょうか?

この疑問に対して、おそらくEysenckやMcCrae、Costaらは「イエス」と答えるでしょう。MacCraeとCostaの二人が生み出したパーソナリティの因子モデルは非常に有名です。事実、パーソナリティ心理学を学び始めると、両者の名前を常に教科書や学習指導書のなかで目にすることになるでしょう。また、因子分析や主要構成要素の分析、そして統計学的プロセスを用いたその他の情報構成テクニックを好む人々も同じく「イエス」と答えるはずです。

しかしながら、おそらく皆さんにはある環境では外向的なのに別の環境では内向的になってしまうようなお知り合いがいらっしゃることでしょう。時には、環境が変わっていないのに態度が変化するような人もいます。つまり、全く同じメンバーと集まっている状況においても外向性と内向性の間を行ったり来たりする人間もいるということです。

ご覧の通り、パーソナリティというテーマは複雑な上に、少々ややこしいものでもあります。物事を分類する時と同じようなやり方で人間のこともカテゴリー分けできたらどんなに楽でしょうか。そうすればどんな人の行動であってももっと予測しやすいでしょうね。しかし残念ながら、人それぞれに個性があることを踏まえるとそのような理想は実現しそうもありません。

パーソナリティ心理学 パーソナリティ 実在する?

パーソナリティは実在するのか?

私たちはパーソナリティ特性の存在を信じていますが、実はもしこれがサンタクロースのような幻想だったとしたらどうでしょう?結局、どんなシチュエーションにあっても一貫性を保ち続けているような人はほとんどいませんよね。1960年代にウォルター・ミシェルが『Personality and Assessment』という本を出版すると、この「パーソナリティは幻想である」という可能性がそれまでのパーソナリティ心理学の基盤を揺るがせました。

では、この心理学者は一体どんなことを提唱したのでしょうか?彼はこのパーソナリティが幻想であるという可能性を検討したのですが、結局その試みは成功していません。少なくともカインがアベルを殺したような形で、あるいはニーチェが「神は死んだ」と述べたのと同じようなやり方では、パーソナリティが幻想であると証明することができなかったのです。彼が選択したのは、文脈依存的なパーソナリティ評価法でした。

彼の主張は、人間はその人自体が正直な訳ではないが、特定の環境下では正直になる傾向を特定することが可能である、というものです。例を用いて見ていきましょう。例えばある人物が、嘘をついても利益が得られない時には正直さを見せることがあります。しかし嘘をつくことで利益が得られる状況では正直に振る舞わないでしょう。この情報から、彼の正直さについてどんなことが言えるでしょうか?

さらにこの考えを深めていきます。この人は愛する人々を守るために正直になることはありませんが、そうすることで多額のお金を手に入れることができるならば正直さを見せることができます。このような例をすべての人に当てはめることができます。実は、同じように全ての人がそれぞれ宇宙のような無限の可能性に満ちた存在なのです。

では、ミシェルの考えに話を戻しましょう。彼によれば、人の行動は以下の五つの変数に依存するそうです。

  • 期待。各選択肢を検討した上で人が期待する結果。
  • 個人的価値観の基準と自己概念。個人の価値基準と調和する行動の方が現れやすくなるのは確実。
  • 自己調整システム。自らの行動を調整するために人がそれぞれ用いている一連のルールや規範のこと。

最後に

お分りいただけた通り、心理学とは最も複雑な研究対象である人間それ自体を扱っているのですが、「心理学以外の学問の方が学ぶのが難しい」と主張してくるような人はそれを理解していないのです。このことは、一般常識と科学的知見との違いを説明してくれています。後者の方は普通、その学問の難しさを理解しているものです。

全ての行動は相互作用の産物である、とミシェルは考えました。その相互作用は何らかの状況、その状況の捉え方、そしてそれに対処するためのリソースの中で起こるものです。基本的に、パーソナリティ特性というものが話題に上る時に言及されているのは、具体的な状況のみに限られたよく似た特徴についてのみなのです。

今現在でもまだパーソナリティ心理学に対しては、特にパーソナリティ特性という理論に対しては、たくさんの批判が浴びせられています。

パーソナリティ心理学:パーソナリティは実在する?

例として、何百種類ものシチュエーションを用意してある人物の正直さをテストするとします。そうすればその人が正直だった回数のパーセンテージが分かり、その特性についてスコアを付けることができるでしょう。例えば、65%の割合で正直である、といった具合です。

では、何らかの具体的な状況におけるその人物の行動を、この情報のみから予測することは可能でしょうか?仮に、誰かがその人に「高額の金銭報酬を支払うからあることについて嘘をついてくれ」、と頼むとします。しかし、その人はお金よりも正直でいることの方が大切だと考えてその申し出を拒絶するかもしれません。

問題なのは、現実世界において、目の前にいる相手に関して私たちが知っている情報は非常に限られたものだということです。例を挙げると、あなたはご友人の銀行残高がどれくらいかを知っていたとしても、彼の兄弟がお金に困っているという事実は知らないかもしれません。

さらに、理論モデルを超越し、それらを現実生活に取り入れることに関しては、パーソナリティ心理学界は大部分において大きな苦労を強いられていると言っても過言ではないでしょう。

また、冒頭でお伝えした理論モデルはパワーポイントのスライド上では素晴らしいものに見えるかもしれません。それにもかかわらず、その周囲にはまだたくさんの問題が残されています。現時点ではその理論はかなり疲弊しているように思えますが、主にポジティブ心理学の興隆のおかげで辛うじて生き延びていると言って良いでしょう。

遅かれ早かれ、解決に向けて私たちを導いてくれるようなデータが得られるはずです。今の段階では、IRT(項目応答理論)などのパラダイムが頼みの綱だと言えるでしょう。パーソナリティ心理学に関する今回の記事が少々深刻で消化しづらい文章だったことは私たちにもわかっています。だからこそ、最後はこの曲とともに穏やかに終わりましょう。

Eysenck, HJ (1981). Un modelo para la personalidad. Nueva York: Springer Verlag.

McCrae, RR y Costa, PT (1987). Validación del modelo de personalidad de cinco factores a través de instrumentos y observadores. Revista de Personalidad y Psicología Social, 52 , 81-90.

J. Novella, E. (2009). El joven Foucault y la crítica de la razón psicológica: en torno a los orígenes de la Historia de la locura. Isegoría, 0(40), 93-113. doi:http://dx.doi.org/10.3989/isegoria.2009.i40.647