ラポールとは?関係構築のためのテクニック

2019年3月3日

ラポールという言葉は、「取り戻すこと」を意味するフランス語の「rapporter」に由来します。一方の人間がメッセージを送り、もう一方の人間がそれを返すということを示唆する言葉です。ラポールは2人以上の人間のあいだに生まれる絆です。そのどちらかの人の変化のために必要な心理的、感情的なハーモニーのことでもあります。

ラポールは治療関係においても重要な要素なのですが、これはしばしば見過ごされることがあります。研究者たちは、心理的な治療による成功のほとんどは良好な治療関係に起因すると信じています。それはつまり、セラピストと患者の良好なラポールのことです。

患者との関係

治療のアプローチや、精神科での診断歴、治療に用いられる技術などは、患者の治療において非常に重要です。しかし、患者と良好な関係を築くことも同様に大切です。患者には、セラピストを完全に信頼し、治療に真剣になってもらう必要があるのです。

患者との信頼関係は他の事柄全てに影響するため、良い関係が築けていないなら、その他全てのことの価値がなくなってしまいます。患者がセッションに来なかったり、治療に真剣にならなかったり、変化のためのモチベーションが湧かなかったり、あなたの発言や提案を信頼しないこともあるかもしれません。

治療におけるラポールとはつまり、望む目標を達成するために人が相互に理解し、協力的な態度をとり、共有する問題に取り組み、共感し合うということです。昨今、将来のセラピストがこれを心得ているのはとても大切なことであるとされています。ヘルスケアをはじめとする様々な分野のプロを対象に、このテーマに特化した専門コースさえあるほどです。

ラポールの起源

治療同盟、またはラポールという概念は20世紀のあいだに発達しました。精神分析学者ジークムント・フロイトは1912年の論文『The Dynamics of Transference(転移の力学)』の中で、分析医が患者に興味を抱き、理解を示す態度をとる必要性を考察しました。その目的は、患者のもつ健康的な部分が、分析医とのポジティブな関係を築くということです。

フロイトは、患者の分析医に対する愛情を、有益でポジティブなかたちの転移と定義しています。精神分析学での転移とは、患者が無意識の思考や感情を相手に、つまりセラピストに移す心理的プロセスのことです。

患者と話すセラピスト

ポジティブな転移は信頼や受容を促し、患者から見たセラピストの信憑性を増すものであるとフロイトは考えました。しかし後に、セラピストと患者との信頼関係を作るのは転移ではないということが明らかにされています。転移は時に誤解を招くことがあり、これはもちろん良いことであるとは言えません。

転移と治療同盟に区別をつけたのはジェームズ・ゼッツェルです。彼は、治療同盟とはその関係における感情的でない部分であり、だからこそ洞察したり、治療上の変更を採用したりすることが可能になるのだと説いています。

後に、ラポールは治療的アプローチの大半に取り入れられるようになり、精神分析学で提唱された転移という概念とは一線を画するものとなりました。

関係の質

人間性心理学の父カール・ロジャースによると、セラピストと患者間の関係性の質に注意を払うことは不可欠です。ロジャースは、セラピストに必要な3つの基本性質として、自己一致(純粋性)、無条件の肯定的関心(受容)、共感的理解を挙げています。

ロジャースによると、治療の進歩は、セラピストの性格や態度というより、患者がこれらの事柄をどう体験するかにかかっているようです。患者の体験を良いものにするためには、彼らが理解され、無条件に受け入れられていると感じる必要があるのです。

1970年代、エドワード・ボーディンは治療関係に共通して見られるべき特徴を述べています。彼は患者とセラピストが共有すべきラポールの3つの構成要素を特定しました。それは、課題、目標、絆です。

良好なラポールを築くテクニック

ラポールを支える2本の大きな柱は、信頼関係と風通しの良いコミュニケーションです。セラピストとクライアントは互いの言語、非言語コミュニケーションを理解する必要があります。セラピストよりもクライアントの自己開示に重点を置くため、コミュニケーションは非対称であるべきです。

ここでは良きラポールを築くための効果的なテクニックをいくつか見ていきましょう。

積極的傾聴

シンプルなテクニックであるように思われますが、実際に成し遂げるとなるとかなり難しいものです。積極的傾聴とは、割り込んだり判断を下したりすることなく患者の話を聴くことです。また、ジェスチャーや表情を使って患者の味方であることを示し、よく注意して話を聴き、相手の意味するところを理解したり、相手の感情に共感したりすることでもあります。

目をこするクライアント

思いやり

良好なラポールを築くためには、クライアントに対して思いやりを示すことが重要です。役に立つ技術や経験をたくさん持っていたとしても、思いやりがなければ患者はセラピストを信頼したり心を開いたりせず、大切な情報を開示しようとしません。信頼感の欠如は、患者の治療へのコミットメントに直接影響します。そのような場合、セラピストの提案したテクニックを患者があまり実践してくれなくなるのです。

感情的な問題に苦しんでいる人には、冷たい態度で応じては何の解決にもつながりません。ロジャースの説いた共感や受容を促すためには、思いやりが必要なのです。

共感

相手の力になりたければ、相手の立場に立ってみる必要があるのは当然のことです。それは患者が情動障害に苦しんでいる場合であれ、罪を犯した場合であれ同じことです。患者の治療を行うならば、その人の視点から物事を見てみなければいけません。相手と感情を共有していなかったとしても、相手の行動に同意できなかったとしても、そうする必要があります。信頼関係を築いたり、人を助けたりするときには、共感こそが唯一の道なのです。

信頼

患者がセラピーに行く際に気楽に感じられるというのは大切なことです。信頼を築くためには、セラピストが信頼できる人物であり、また患者から見てもそのように見える必要があります。

セラピストがしっかりと訓練を積んだプロであり、どんな場合にも必要な手助けをしてくれるだろうと患者に信じてもらわなければいけません。その手助けとは、他のセラピストを紹介することや、患者の悩みに応じてセラピスト自身が訓練を積むことかもしれません。このようにして、患者からの信頼を得ることができるのです。

患者に手を添える

共通の目標

ラポールを築くときは、クライアントの治療目標に近づくために役立ちそうな共通の事柄に焦点を当てるようにしましょう。本来の筋道から外れて、目標とは関係のない共通の興味関心について話すだけにならないようにすることが肝心です。そうなると時間を無駄にしてしまったり、クライアントとの関係が非対称でなくなったりします。

しかし、柔軟に対応して、治療の目標とは関係のない話題に触れることでリラックスした環境を作るのは決して悪いことではありません。話が外れすぎないように気を付けていれば問題ありません。

言語と非言語の一貫性

人はよく言っていることと表情やジェスチャーが矛盾することがあるため、患者とのコミュニケーションの際には気を付ける必要があります。言語と非言語の一貫性は治療関係においては必須です。ここに一貫性がなければ、信頼や協力のための環境を作ることができません。

姿勢や表情が言っていることと矛盾すると、より無意識的であり、したがってより本音である非言語のメッセージが優勢となります。

そのためロジャースの述べた通り、患者に対して心から誠実である必要があるのです。姿勢に気をつけ、言語と非言語、両方のコミュニケーションにおいて思いやり、受容、共感を維持するようにしましょう。

セラピストの話を聞くクライエント

良好なラポールが築けないときにすべきこと

これらのテクニックは常識であるかのようにも思えますが、実際に患者を前にして実践するとなると決して簡単ではありません。セラピストも、個々の価値観や態度、感情をもった人間です。治療の進歩のためには、これらの影響がないようにしなければいけません。

クライアントと良い関係を築くことができなかったとしても、がっかりする必要はありません。私生活でも全ての人間関係が上手くいくわけではないように、治療関係にも同じことが言えます。どれだけ全力を注いで防ごうとしても、上手くいかないときは上手くいかないものなのです。

そういった場合にできる最も正直なことは、そのクライアントとより良い治療同盟を築き、彼らの成長プロセスを再開させることのできる他のセラピストを紹介することです。そうすることで、双方が時間を無駄にすることなく、なお患者の進歩という共通の目標に近づくことができるのです。

Rogers, C. (1951). Client-centered therapy: Its current practice, implications and theory. London: Constable.

Corbellá, S., Botella, L. (2003). La alianza terapéutica: historia, investigación y evaluación. Servicio de publicaciones de la Universidad de Murcia. ISSN: 0212-9728

Freud, A. (1936). The ego and the defense mechanisms. Wien:Int. Psychoanal. Verlag.