ラット・パーク実験:依存症の研究

2019年10月31日
この記事を読んで、ラット・パーク実験について知りましょう。

ラット・パーク実験は、依存症に関して、とても興味深い結果を導き出しました。ラットは、そのDNAが人間によく似ているため心理実験によく利用されます。人間とラットのゲノムは95%一致するとされているのです。

ラットを使用した実験は、(研究室などの)管理された環境で行われます。実験に使用される動物は、一匹ずつケージに入れられ、外の世界との関わりが遮断されます。これは、自然界とは全く異なる環境です。

「消費主義に根付く姿勢は、世界中を飲み込んでしまうようなものだ。消費者はまるで、ミルクが欲しくて永遠に泣き続ける赤ん坊である。そしてこれはアルコールやドラッグ依存などの病理現象にもいえることだ。」

-エーリヒ・フロム―

60年代、科学者たちは、依存の研究にラットを使用していました。そしてスキナーボックスと呼ばれる電気装置が付いた、ラットに褒美または電気ショックの罰を与える箱を使用していました。

このようなケージを使うことで、研究者と心理学者はラットの行動を研究することができたのです。しかし、ラットパーク実験は、この決まりを破った実験です。その全てを紹介します。

ラット 実験 依存症

依存しているラット

60年代の心理学者が行った研究では、ラットの体内に供給装置をうめこみ、それぞれをスキナーボックスにいれました。その後、ケージの中にあるレバーを押すように教え込み、ラットがそのボタンを押すたびに向精神薬が体内に注入されるというものでした。

ほとんどのケージで使用されたドラッグは、ヘロインです。ヘロインは、依存性が非常に高いドラッグの一つです。ラットがレバーを動かすたびに、すぐにこのドラッグが体内に注入されていました。そして、研究者たちはある状況下では、ラットは何度もレバーを動かし、多量のドラッグを得ていることに気づきます。

中毒がひどくなり、飲食を忘れてしまうラットも出てきました。しかし、ヘロインを得る方法だけは忘れなかったのです。結果、実験過程で多くのラットが死んでしまいました。研究者たちは、もし人間が同じようにドラッグを手に入れることができるとしたら、同じような苦しみを味わうことになると結論づけました。

その後、ブルース・アレクザンダー教授と、カナダのサイモン・フレイザー大学のチームが、この分野でラットパーク実験を実施します。

ラットパーク実験

ブルース・アレクサンダー教授は、ラットが孤立した状態で実験が行われたことにより、客観的な結果が得られなかったのではないかと考えました。60年代に使用されはラットは、全てがノルウェーのラットの子孫であるアルビノでした。彼らは、社交的で、好奇心旺盛で、知能の高いラットです。ですから、ケージで孤立させられるというのは自然の生息環境とは全く異なるものでした。これらを念頭におき、研究者たちは新たにラットパークという研究方法を見出しました。

アレクサンダーは、放し飼いのラットがケージに閉じ込められているラットと果たして同じような行動をとるのだろうかと考えました。依存に関連した、生まれ持った特徴があるのでしょうかラットがドラックを摂取すると、死ぬまでそのドラッグを摂取し続けるというのが、たった一つの結果なのでしょうか?

これらの質問に答えを見つけ出すために、アレクサンダーはラットパーク実験を1977年に始めます。彼の研究チームは動物を2つのグループに分けました。一つは、一般的な孤立した研究ケージに住むもの、そしてもう一方は、一方のケージの大きさの200倍にもなる、研究者たちが作った植物や木が生えているパーク(公園)のような空間に住むものです。

ラットパーク実験 依存症

孤立と依存

この研究者たちは、このラットパーク実験を複製し、実験に使用するラットと野生のラットを交流させることもしました。どちらのラットもモルヒネが身近にある状況で生活していました。

研究者たちは、ラットに2つの液体の選択肢を与えます。モルヒネを含むものと、そうでないものです。モルヒネの苦い味は砂糖でごまかしました。数日後、ケージに入れられていたラットは、モルヒネの入った方の液体を好むようになりました。ラットパークにいたラットもモルヒネの液体を飲むようになりますが、それは数週間後のことでした。

この実験で、ケージに入れられていたラットが、そうでないラットに比べて19倍の量のモルヒネを摂取した、という結果が得られました。パークにいたラットは、モルヒネを含んだ液体を飲んだ後でも、モルヒネを摂取しないことの利益を理解し摂取を我慢したのです。アレクザンダーと彼のチームは、この実験をアレンジし色々と試してみました。どちらのグループも依存した状態にしてから実験を行ったりもしましたが、結果はあまり変わりませんでした。

ラットパーク実験で、社会的な孤立がどのように依存に影響するかが証明されました。他のラットがいること、そしてパークの自由さが、ドラックを摂取する欲求を明らかに抑える働きがありました。モルヒネを与えられて興奮していたラットも、普通の状態に戻ろうとありとあらゆる方法を試し、消極的になる時期もあったほどです。

現在の社会は、スマートフォンや画面上に集中することがほとんどで、社会的に孤立してしまうこともよくあります。これは、すでに問題となっている依存や中毒の社会問題にさらなる危機をもたらすかもしれません。ですから、ラットパーク実験は、現代社会にとって非常に大切な実験なのです。

  • Alexander,  Bruce K., Barry L. Beyerstein, Patricia F. Hadaway And Robert B. Coambs (1981). “Effect of Early and Later Colony Housing on Oral Ingestion of Morphine in Rats”. Pharmacology, Biochemistry & Behavior, Vol. 15. pp. 571-576, 1981.