心の理論:共感のルーツ

· 2019年3月7日

心の理論とは、自分の心と相手の心を区別できる能力のことですこの能力を使って、相手の心の状態から相手の行動を解釈・予測することができます。心の状態には、思考、感情、信念、願望などが含まれます。

次の例を考えてみて下さい。あなたは窓の外を見ています。そこで、隣人が家から出て来るところを見かけました。数歩歩いたところで、その隣人は自分のポケットをはたいて、振り返り、家の中へと入って行きました。おそらく、この行動を理解するのにはそう苦労しないことでしょう。この隣人は明らかに忘れ物をしたのです。こう理解することができたのは、あなたがこの隣人の心の中に入り、この人の行動を解釈することができたからです。心理学において、この能力は心の理論として知られている概念の下にあるものです。

心の理論という概念体系

心の理論は、「人間は概念に基づいて現実に対する直観的な理論を生み出すことができる科学者である」とする構成主義の学派から来ています。そのため、心が大きな概念体系を形成するという考えが基底にあります。概念体系とは、明確に定義された一つの概念ではなく、むしろ関連した概念同士の結びつきによって成り立っているもののことです。

ニューロンネットワーク

この概念体系を理解するのに基本となるポイントが2つ存在します。

  • 解説的性質―私達は概念を使って心の状態を描写し、この情報を軸に現実を築き上げる。
  • 推論的性質―概念同士の理論的な関係によって、私達は因果を通して未来の行動を説明・予測することができる。

ですから、心の理論とは、概念体系と推論の力を借りて行動をコントロールしたり、解釈したり、予測したりする認知体系として定義することができます。この定義は、心が予測と行動の仲介役となっていることを示しています。他人の心を自分の心の中に描くことができれば、相手の行動を読み解くことが可能になります。

心は行動の仲立ちをする

ですが、ここで疑問が生まれます。心はどうやって予測と行動の仲立ちをしているのでしょうか?そして、どうやって他人の心の中で起きていることを推論しているのでしょうか?私達がどうやって相手の思考を直観するだけでその人の行動を予期しているのかを理解するには、これらの疑問に答えることが大切です。心理学者のリヴィエールとそのチームは、これを説明する簡単な理論を唱えました。

リヴィエールらによると、全ては物の見方から始まり、その見方を通して現実に対する信念を形成していると言います。こうした物の見方が、育ってきた教育や生物学的な背景に加わって願望を生み出し、次第にこの願望を充足させるために意図を変化させると言います。信念と願望がお互いに作用し合い、こうした願望を満たすことを目的とした一連の行動になります。

このモデルの限界は、行動の現実を説明するには極めて単純すぎるということです。ですが、ここでは何が実際に起こっているかよりも、脳がどのように理論立てするのかを説明しようとしているため、特に科学的観点から見る必要はありません。これが脳が自分と他人の行動を解釈・予期するのに使う理論であるように思われます。ただ、このモデルは正確さに欠ける、つまり失敗することもあるということですが、理解への概ね正しい近道だと言えます。

考える

心の理論はどのように発達するのか

私達は心の理論を持って生まれてくるわけではありません。その潜在能力を秘めて生まれてきます。脳にあらかじめインストールされた状態で生まれてくるのですが、完全に機能するためには発育途中の臨界期にきちんとした刺激が必要になります。

心の理論が発達する年齢は、一般的に、子供が誤信念課題を解決できるようになる4,5歳くらいです。それまで発達しないのは、子供はまず2つの根本概念を理解する能力を発達させなければいけないからです。

  1. 願望と信念―子供は、人の行動は願望と信念に支配されているものだということを理解しなければいけない。子供は、信念が間違っている可能性のあるものであり、願望は満たされない可能性があるものだということを学ばなければならない。
  2. 人は主観的観点から客観的現実を見ている―子供は、行動が現実の主観的評価によって支配されていることを理解しなければならない。そうすれば、誤信念の存在を理解し、そこから論理を理解することができるようになる。

心の理論が完全に発達した状態になっても、それから後は受け身のプロセスになるわけではありません。心の理論は、共感を含む他の重要な能力の発達に影響する能力です。子供が他人の信念や願望を理解するようになってきたら、相手の立場に立って考えられるようになるのです。