神経科学とあくび:あくびがうつるのはなぜ?

誰かがあくびをすると60%の確率であくびがうつることをご存知でしたか?なぜ、あくびはうつるのでしょう?科学的にはどのようなことが言われているのでしょうか?
神経科学とあくび:あくびがうつるのはなぜ?

最後の更新: 08 1月, 2021

エコー現象という言葉を聞いたことはありますか?人の言葉や行動を自然と繰り返すことを言います。その例の一つが、誰かがあくびをするとすぐに自分もあくびをすることです。なぜ、あくびはうつるのでしょうか?この現象を説明するような神経学的な基盤はあるのでしょうか?

精神学者プロヴァイン・ロバート(1986)は「あくびは人間の最も理解されていない行為かもしれない」と発言しています。時を経た今、神経科学においてこれを説明づけることはできるでしょうか?一つあるいはそれ以上の理論があるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

なぜ、あくびはうつる?

ロメロ等(2014)の研究によると、多くの動物があくびをしますが、あくびの「伝染」が見られるのは、人間、チンパンジー、犬、おおかみのみなのだそうです。なぜあくびはうつるのでしょうか?人間のケースで、最も関連性の高い理論をみていきましょう。

あくび うつる なぜ

運動野の活発性

ノッティンガム大学(イギリス)の科学者集団が2017年に行い『Current Biology』に載った研究は、なぜあくびがうつるのかという疑問に答えを出そうと行われましたものでした。

このイギリスの研究によれば、あくびがうつるのは脳の自動反射による動きだとされています。運動機能を司るまさにその領域によって引き起こされているというのです。ですので、研究によれば、あくびの伝染は一次運動野に由来するのだそうです。これは、神経刺激を通して運動を行わせる領域です。

実験の内容

この研究には、36人の大人が協力しました。参加者はあくびを抑える方法を学んだ後、人があくびをする動画を見ます。そして、研究員が(抑えたものを含む)あくびの数を数えます。

経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用い、あくびの神経基盤と運動興奮性の関係性の分析が行われました。

その結果、「あくびの伝染」を受けやすいかは、皮質の興奮性と一次運動野の生理学的抑制に依存することが分かりました。これにより、あくびをしやすい人としにくい人がいるのが理解できます。また、人のあくびがうつりやすい人とそうでない人がいることも説明づけられます。

あくびを抑えることはできる?

では、人があくびをするのを見た時、自分もあくびをするように私たちは作られているようなものなのでしょうか?それとも、この反射はコントロールできるのでしょうか?同じイギリスの研究によると、あくびの伝染を抑える力は限られていると言います。さらに、あくびを抑えることで、あくびのニーズが増すとも結論付けています。

実際、実験では、電気刺激により運動興奮性が増すと、人のあくびがうつりやすくなることが認められました。「あくびの伝染」を止めることができないのは、生まれつきそのように組み込まれているためなのです。

特定の障害の原因を理解する

この研究は、実はその他の障害の研究をする人にも役立つかもしれません。運動興奮性の増大や、生理学的抑制の減少が関係する障害に隠れている明確な原因を突き止めることができるかもしれないからです。

例えば、認知症、自閉症、てんかん、トゥレット症候群などです。これらの障害を持つ人は、エコー現象(あくびなど)、エコラリア(人の発言やフレーズの繰り返し)、反響動作(人の行動を自動的に繰り返す)などを止めることができません。

これに関し、研究の指揮者である、ノッティンガムのインスティテュート・オブ・メンタルヘルスの認知神経心理学教授、ジョージーナ・ジャクソンは次のように説明します。

「これらの研究結果は、てんかん、認知症、自閉症、トゥレット症候群など皮質の興奮性の増大や生理学的抑制の減少と関連する幅広い臨床におけるエコー現象の発生と運動興奮性の関係の更なる理解に非常に重要になるかもしれない」

-研究責任者ジョージーナ・ジャクソン-

さらにジャクソンは、運動興奮性を減少させ、その結果チックが減ることとなり、トゥレット症候群の患者を助けることができるかもしれないと付け加えています。

その他の理論:共感、遺伝、同調

この研究が行われる前、科学者は他の方法で答えを出そうとしました。共感の伝播が考えられるという意見は多くありました。あくびをしている人を見ると、私達は無意識に共感します。反射であるかのように回避することができず、その人と同じ動作を行うのです。

この理論にはたくさんの支持者がいます。つまり、人の感情を解釈する力により、私達は自分を相手に当てはめたり、同じように感じようとし、「原始的」なあくびでも同様のことが起こるのかもしれません。その結果、誰かがあくびをしているのをみると、同じ事をせずにはいられなくなるのです。

また、あくびの伝染に関し、共感を特徴とする特定の脳回路の活発化に関係するという研究結果もありますこれには有名なミラーニューロンを含む回路が存在します。このニューロンは、人が行うのを見て内的反射のように働きます。

あるいは、コミュニケーションや同調に関連する現象だという理論もあります。これに関し、心理学教授で研究員のマシュー・キャンベルは次のように主張します。

「活動を同調させようとする社会的動物においては、あくびを真似ることで集団を同調させている可能性がある」

-マシュー・キャンベル-

集団の同調

この理論は模倣的行動の存在があり、あくびを真似することで集団をまとめているということを示唆します。キャンベルは、食習慣にもこれが見られると言います。食べる時間になると皆が食べるという行為は、食が伝播しているとも考えられます。また、人の動きや態度を真似しようとする時も同じです。

まとめると、この現象には大きく二つの理論があります。どちらが正しいと思うかはあなた次第です。

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人は1日におよそ28回あくびをすると科学者は言います。必要なさそうで、コントロール不能なあくびに、私達は、毎日約4分を費やしています。胎児が5か月の頃あくびは始まり、死ぬ数日前まで続きます。あくびが失礼にあたる場面もあります。しかし、健康に必要なものです。



  • Georgina, M. Jackson et al. (2017). A neural basis for contagious yawning. Current Biology. DOI: 10.1016/j.cub.2017.07.062.
  • Romero T, Ito M, Saito A, Hasegawa T (2014). Social Modulation of Contagious Yawning in Wolves. PLoS ONE 9(8): e105963. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0105963