集団規範は何のために作られるのか?

集団規範は私たちの社会生活の一部となっており、誰もがその大部分を正当なものであり、不可欠なものだと見なしています。そうは言っても、「集団はこういった規範をどう持ち出してくるのか?」、「集団内での規範の目的とは何なのか?」といった疑問を投げかけてみる価値はあるはずです。
集団規範は何のために作られるのか?
Alejandro Sanfeliciano

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Alejandro Sanfeliciano.

最後の更新: 21 12月, 2022

色々な社会集団を観察してみると、どの集団にもそれぞれの集団規範があることがわかります。その集団が公的機関か、あるいは一般的なグループかは関係ありません。こういった規範は私たちの社会生活の一部となっており、誰もがその大部分を正当なものであり、不可欠なものだと見なしています。そうは言っても、「集団はこういった規範をどう持ち出してくるのか?」、「集団内での規範の目的とは何なのか?」といった疑問を投げかけてみる価値はあるはずです。

この二つの疑問に答える前に、まずは「規範」という言葉の定義を定めておくべきでしょう。その発生源や機能を理解するためには不可欠なことです。ホーマンズは「規範」を集団のメンバーの脳内を占める考え方だと定義しました。そして、事実が曖昧になってしまった時にこの規範を基準点として使用するのです。つまり、人々の姿勢や行動を調整する役割を果たします。この定義に加えて、規範には二つの種類があることも理解しておかねばなりません。

  • 記述的規範:この規範は、ある状況下で集団のメンバーがとる行動に対応します。これらが、全員が従うべきとされる行動モデルを制定しています。現実が不明瞭になってしまった時に基準点として使用されます。
  • 命令的規範:この規範は、集団のメンバーが何を支持し、何を支持しないべきかを伝えるものです。これらは個人が「すべき」ことを明示し、その集団の道徳観念を象徴しています。こちらは人々の姿勢や行動を調整するメカニズムとして機能します。
集団規範 

集団規範の目的

全ての集団は規範を作るものです。そのため、規範は集団の動力に関して何らかの機能を担っているはずだ、もしくは、少なくとも集団にある種の影響を与えるものだ、と推測することができます。なぜなら、もしそうでなければ規範の存在が無意味なものになってしまうからです。こういった機能は個人レベルで働くこともあれば、社会レベルで働く場合もあります。当事者に影響を与えるものに関しては個人レベルの機能だと言えますし、その集団のニーズを社会的レベルあるいは集団間のレベルで満たす場合は、社会的な機能だということです。しかしほとんどの場合、規範は両方の機能を兼ね備えています。

集団規範が個人レベルで働かせる第一の機能は、基準点としての働きです。規範が存在するおかげで、人々は現実を解釈し構築する方法を把握することができます。そしてこの機能は特定の社会構築主義パラダイムに完璧に適合します。こういったパラダイムから推測できるのは、私たちが社会の文化や文化を通じて現実を構築しているという事実です。集団とその規範は、このプロセスの中で活性要因として機能します。

社会的レベルでは、集団規範には以下のような目的があります。

  • 集団のメンバーの交流や活動を抑制し、調整すること。規範は、こういった交流や活動が秩序立った形で行われるようにするための助けとなります。つまり、混乱や対立を防止する効果があるのです。その結果、集団が崩壊したり衰退する事態を避けることができます。
  • 集団の目標を達成できるようにすること。集団は規範を作り出す際に、共通の目標に向けた行動の均一性も定めます。これにより、集団の目標達成率が大幅に向上するのです。
  • 集団同一性の維持。自分はどうあるべきか、そしてどう行動すべきかを教えてくれる一連の規範は、自己を他者から差別化するのに役立ちます。これが、個人をある特定の集団の一員としてカテゴリー化してくれる集団同一性の起源の一部なのです。
集団規範

集団はどのように規範を作り上げるのか?

規範がどう発達してきたのかという疑問には、多くの社会心理学者たちが悩まされてきました。リヴァインとモアランドは、集団がどのように規範を生み出しているかに関する膨大な数の理論や実験を分析しました。彼らのおかげで、集団規範には二つの異なる発生源があることがわかっています。それは、内部発生源と外部発生源です。

内部発生源の中には、以下のような要因が見られます。

  • ある状況下でどう行動すべきかに関する、メンバーからの台本や案内。この案内を共有するメンバーが多ければ多いほど、規範が確立されるのが早くなります。
  • 衝突を解決している時のメンバー間の交渉
  • 別のメンバーの行動パターンを真似ることで、集団の残りのメンバーにも広がります。
  • 自動分類化。これは、集団同一性の中で利用可能な情報の存在により規範が生まれる時のことを指します。

外部発生源に関しては、最もよく見られ、そして最も顕著な要因は公共機関あるいは指導者が規範を指示することです。こういった規範は集団の外部から、あるいは集団の個々のメンバーから生まれる傾向があります。集団のその他のメンバーは内部発生の規範の時のようには、外部発生の規範を受け入れない可能性高いのですが、その大部分は集団の目標と一致しているかに左右されます。

集団規範は私たちの日常生活の一部となっています。仕事のやり方からパーティーでの着飾り方まで、あらゆることがこの規範から影響を受けているのです。その影響は、ほとんどの場合さりげなく、そして無意識のうちに私たちの行動に顕著に現れ出ています。このため、規範の存在とその役割を理解することが大切です。こうすることで、批判的な視点で物事を見ることができるようになり、自身の道徳心あるいは個人的なアイデンティティに反する行動を避けられるようになります。


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。