象徴的思考についての解説と、その特徴について

象徴的思考とはいったい何なのでしょう?そしてこれは言語やお絵かき、遊びなどとどう関連しているのでしょうか?この記事を読み進めてその答えを明らかにしていきましょう!
象徴的思考についての解説と、その特徴について

最後の更新: 22 12月, 2020

象徴的思考とはいったい何か、ご存知ですか?また、それがどう現れ出るかを知っていますか?象徴的思考とは、人間が過去の出来事について語ったり、将来起き得る事柄に関する仮説を立てたりするのを可能にしているものです。つまり、この思考により私たちは現在の状況から脱出し、過去であれ未来であれ今とは別の現実を呼び起こすことができるということです。

したがって、象徴的思考のおかげで私たちは自らの五感が今この瞬間捉えているものを、記憶や仮説を通じて飛び越えることができます。本日の記事ではこのタイプの思考の特徴について詳しくお話し、様々なその発現の仕方の例をご紹介していきますよ。

悪というものは本当は存在しません。これは単に、胸糞の悪い行動を描写するために私たちが用いている抽象的な概念に過ぎないのです。悪とはアイディアであり、概念であり、考えです。実在のものではありません”

-オリバー・マーカス・マロイ-

象徴的思考とは?

象徴的思考とは現在の状況について考える能力である、と定義することが可能でしょう。言い換えると、これは与えられた環境という現実を、個人的な経験に応じて視覚化する上で必要なタイプの思考だということです。

スイスの心理学者ジャン・ピアジェ(1896-1980年)が、象徴的思考についてのたくさんの情報を与えてくれています。彼は、幼児が経験する認知的発達の様々な段階を定義し、説明することに身を捧げた人物です。象徴的思考とは子どもが意味に言及するためにシニフィアン(能記)を用いる能力を示唆するものである、と彼は考えていました。

象徴的思考 解説 特徴
ジャン・ピアジェ

ピアジェによる、前操作期の思考

ピアジェの仮説に従うと、象徴的思考は前操作期の一部となっています。前操作期とは、三つの発達段階から成るより広義の概念です。

  1. 象徴的思考。
  2. 自己中心性(子どもは自分自身の観点から離れることができません)。
  3. 前概念的・前論理的思考。

ご覧の通り、象徴的思考に関するピアジェのモデルは、2歳〜6歳の前操作期に位置付けられます。

象徴的思考の現れ

ピアジェによれば、以下のような一連の現れは、象徴的思考の形成・統合段階にいて、このプロセスを実現可能な発達段階の子どもに起こります。

  • 延滞模倣(遅延模倣)。
  • 象徴的な遊び。
  • 今現在起こっているわけではない事象の言葉での喚起。
  • お絵かき。
  • 視覚化。

つまり、これらすべての発現を通じて、象徴的思考は潜在的なものとなり、徐々に強化されていくということです。

人間はどのように象徴的思考を表現しているのか?

ここまでで、ピアジェの提唱した幼年期段階の例をご覧いただきました。では、ここからもっとそれを掘り下げて行きましょう。象徴的思考の発現の中でも特に重要なものを、以下にいくつか挙げています。

言語

言語は象徴化に基づいたものであるため、これが象徴的思考の主要な現れ方の一つです。どういうことかと言うと、現実を描写する時に用いられる言語的記号は、記号が指し示すもの自体ではなく、むしろその抽象的用語への翻訳である、ということです。

言い換えると、人間は現実を象徴(ここでは言葉)を通じて表すために言語を用いており、同じことが象徴的思考においても起こっています。したがって、人は自らの頭脳の外側から何かを言い表しますが、このプロセスは頭脳そのものというフィルターを通って出てきたものだということです。

また、象徴的思考は例えば読書をしている際に活性化されます。 この思考の働きにより、私たちは読むことを通して知っていくことのできるシナリオやキャラクターたちを心の中で思い描くことができるのです。繰り返しになりますが、これは自分自身のものではない現実を、想像力によって喚起する手段なのです。

もっと言うと、小説やあらゆる類の文章の中に捉えられている世界全体が、それ以前に他の誰かの頭の中で作り出されたものであるため、象徴的思考はこの点にも関連しています。

象徴的な遊び

象徴的思考のもう一つの現れ方に、象徴的な遊びがあります。だからこそ、この遊びは人生の初期段階、つまり幼少期の子どもの発達が最大限に進む時期において特別重要視されているのです。象徴的な遊びは、発達のために、特に初めての社会的交流のために重要であり、さらには自分のいる社会における適切な慣習を身につける上でも大切です。

主に象徴的思考に基づいた象徴的な遊びを行う中で、子どもたちはオフィスやキャラクター、物の使用、役割などを、遊びや様々なおもちゃあるいは物体を用いて表現します。さらに、生命のない物事に何らかの特性を付与することもあります。例えば、バナナを電話に見立てたりするのがその例です。

象徴的な遊びは、その子どもがすでに抽出や類推(共通の特徴を有する二つの対象物を同等視すること)、そして象徴的思考それ自体などをはじめとする特定の認知的能力を獲得しているために起こります。

ピアジェによると象徴的な遊びは2歳ごろから現れ始めますが、この時の子どもには物体というのは永続的に存在する物だ、という感覚が身についています。つまり、その物体が視界から消えた後も依然として存在し続けることをこの年頃の子どもたちは理解できているのです。本来人間は遊びをやめることがありませんし、遊びによって私たちはほぼ常に何かを学習しています。

象徴的思考についての解説と、その特徴について

絵を描くこと

子どもも大人も、一つの(あるいは複数の)現実を絵を描くことにより写実的に表現します。さらに、お絵描きが行われている間、描かれている現実が眼前に存在することはほとんどありません。つまり、喚起したい現実を象徴を用いて形作っているということです。したがって、絵を描くということは意味に言及するために象徴的思考によってシニフィアンを用いる能力だということになります。

やり方に差はあれど、絵を描くことで人間は頭の外側にある物を表現できますし、内側にあるアイディアを表現することも可能です。お分かりのように、これこそがまさに象徴化の説明になっています。

文化や人間社会といったレベルで言うと、洞窟壁画やヒエログリフには人類の記憶の大部分が含まれています。つまり、そこには人類の歴史がたっぷりと詰まっているのです。

さらに、色付きの絵や図により、多くの社会がそのアイデンティティを示すマークを伝えたり、自分たちの有する目立った特徴や物理的な生存を超えて拡張することのできた遺産を記録することが可能になりました。国旗や、そこに描かれたイラストなどがその明白な例と言えるでしょう。


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  • Cellenieror, G. (1978) El Pensamiento de Piaget, estudio y antología de textos. Ediciones Península, Barcelona.
  • Landy, D. y Goldstone, R.L. (2007). How Abstract Is Symbolic Thought? Journal of Experimental Psychology, 33(4): 720-733.

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