「シャッター アイランド」と心的外傷後ストレス障害

「シャッター アイランド」と心的外傷後ストレス障害
Leah Padalino

によって書かれ、確認されています。 映画批評 Leah Padalino.

最後の更新: 21 12月, 2022

シャッター アイランド」は、マーティン・スコセッシ監督作でレオナルド・ディカプリオ主演の2010年の映画です。ベン・キングズレーとマーク・ラファロも出演しています。40年代や50年代のフィルム・ノワールスタイルをとっています。最後までサスペンスが続き、かなり不穏なシナリオへ導きます。

孤島、精神病院、予期せぬ失踪がこの心理的スリラーのメイン要素です。観客は開いた口がふさがらなくなるような作品です。この映画の設定は1954年です。この時代はたくさんの精神科施設が建てられました。経眼窩式ロボトミーのようなことも行われていました。

連邦保安官テディ・ダニエルズとチャック・オールは、不可解な失踪事件を調査するためにアッシュクリフ精神病院を訪れます。超厳重に警備された精神科施設から失踪することは可能でしょうか?島の中で靴もなく雨の中を?この映画は少しづつストーリーにひねりが加えられ、不穏なエンディングで完結します。

 

狂気と歴史

歴史における精神的病気の治療は、様々なものがあります。ミシェル・フーコーが著書、「狂気の歴史」の中で語っています。フリードリヒ・ニーチェの永劫回帰を支持しており、これを「狂気」という言葉に適用しています。あるとき「よい」とされるものが、別の時には悪いとされることがあります。あるいは方向を変えて、新しい意味を持ってくるかもしれません。狂気に似たようなことが起こります。フーコーは狂気を擁護しているわけではありません。時と共に訪れる変化を説明しているのです。

お城

中世の時代、社会は「頭の狂った人」を締め出しましたが、幽閉はしませんでした。当時の人々は、こういった人は異なるタイプの知識へアクセスしていると考えていたからです。理性主義のルネッサンス期になって、狂った人を幽閉し隔離するようになりました。理性のコンセプトと共に、反理性、つまり狂気という考え方も出てきたのです。

現代社会では、「狂気」が研究者の興味を誘い、魅力的な研究対象となりました。そこから治療法を探すようになりましたが、初期に彼らが行ったことは、現代ではかなりショッキングなことです。毎日新しい障害や精神的な病気、しかも誰も聞いたことがないような病気を発見したといっても過言ではありません。それと同時に、精神病に関する迷信や誤解も打ち壊していきました。最近まで同性愛が精神的な病気だとみられていたということを忘れないでください。

「シャッター アイランド」の狂気

「シャッター アイランド」では、かなり怖い精神病院を見ることができます。アッシュクリフ精神病院です。島にある病院で、誰も逃げ出すことはできません。とても閉鎖的で阻害された本当に非人道的な場所です。使用されている音楽も、心地よいものを目にすることは期待できないことを示唆しています。むしろその逆です。緊張感あふれる暗くどんよりとした雰囲気を醸し出します。

歴史

映画では、当時みられた精神医学における「戦争」を垣間見ることができます。変化や変遷の時で、新しいトレンドが古いものとぶち当たっていました。古い考え方では、精神的に病気の人に対して電気ショックやロボトミー治療を行うことが最善と信じられていました。一方で、新しい波は患者の生活をもっと人間的に普通にすることを目的にしていました。これは患者を幽閉することではなく薬を使用することです。主な問題は、多くの薬が完全には出来上がっておらず、まだ研究段階であったということです。

コーリー医師

コーリー医師は、この病院の院長です。古い治療と新しい治療を融合させようとしている人のように思われます。患者を犯罪者と見ることなく、薬の使用には賛成で、患者が「普通の」生活を送れるように努力しています。しかし、すべてはこの病院を完全に世界から隔離するよう指示している事実との矛盾があります。患者を閉じ込め、ひどい時にはロボトミー治療も行います。

患者

しかし、シャッター アイランドの患者はただの患者ではありません。殺人や殺人未遂など、恐ろしいことを行った人たちです。彼らを刑務所に入れる代わりに、この病院に送り、危険度に応じて異なる棟に収容します。

シー

シャッター アイランドの患者

ネタ晴らしせずにシャッター アイランドの内容をお話しするのは不可能に近いですが、この映画は、結末のヒントとなるひねりが沢山盛り込まれたものだと言えます。しかし、もし内容を知りたくなければ、この先を読むのはお勧めしません。

はじめは探偵映画のようですが、シャッター アイランドでの出来事はすべて見かけ通りではないというヒントをマーティン・スコセッシ監督は散りばめています。チャックが警察官らしく素早くピストルを抜けないなど、小さな演出がたくさんあります。それから大きなヒントもあります。テディが幻覚を見るようになったり、死んだ妻のことを夢見始めたり、コーリー医師がテディに片頭痛用の薬を処方したり。 すべてが主役に何かおかしなことが起こっていることを示唆しています。

ダニエルのストーリー

ストーリーが進むにつれ、テディ・ダニエルズが片頭痛を患い第二次世界大戦の記憶がよみがえってきます。第二次世界大戦の最中、心に傷を負うようなかなりのトラウマ的な経験をしました。ダッハウ強制収容所のイメージは消えることがなく、現在の彼にも大きな影響を及ぼしています。戦争から帰還した際、妻のドロレスと3人の子どもをもうけました。しかし、常に仕事で忙しく、あまり家族と時間を過ごしませんでした。過去と上手く対峙できずに、ひどい飲酒問題を抱えるようになります。

アップ

夢や幻覚で過去の経験を追体験するようになります。大変な経験をしたため、心的外傷後ストレス障害を抱えていることがわかるかと思います。しかし、映画が進んでいくと、主人公のテディを怖がらせているのは第二次世界大戦だけではないとわかります。家族のストーリーも彼を恐怖におとしめる理由なのです。

テディの妻は、彼女の頭の中で何かが話しているのが聞こえると言います。頭の中に虫がいるような感覚です。テディは自分の仕事とトラウマにいっぱいいっぱいで、奥さんの精神病に気づけませんでした。その結果、奥さんは健康状態が悪化し子どもたちを殺してしまいます。テディは何が起こったか知った時、泣きながら妻を殺害したのです。

テディに起こる精神の崩壊

すべてがストレスを悪化させ、テディは否定と分裂状態に陥ります。脳内でアンドリュー・リーディス(テディ自身)やレイチェル・ソランド(妻)などのキャラクターを作り出します。彼のファンタジーの中では、自分は不可解な失踪事件の調査をしに来た連坊保安官なのです。

ボード

テディは新しい現実を創り出し、過去に起こったことを忘れるために利用します。それを受け入れることを拒み、うその世界に生きることを選びます。彼は考え続け、この島で起こっているとされる陰謀や実験を調査します。

コーリー医師と彼のチームは、彼のファンタジーを止めません。陰謀などないと気づくことを願うだけです。彼らはテディに過去を意識して受け入れ、自分で治療の道を辿ってほしいと思っています。

「シャッター アイランド」は、精神学や心理学の歴史がテーマの面白い映画です。わたしたちの思考と感覚をうまくだまします。シャッター アイランドのような作品は他にないっといってもいいでしょう。

「どっちのほうが最悪かな。モンスターとして生きるか、いい人として死ぬか。」
-シャッター アイランド-


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