適応障害:抱える問題に圧倒されるとき
失職、深刻な病気、離婚、金銭問題などの問題を抱えた後、問題に圧倒されたように感じるかもしれません。同じことが大きな人生の転機(結婚、出産、引っ越しなど)についても言えます。緊張して怒りっぽくなったり悲しみや不安を感じるかもしれません。
こうしたストレスを引き起こすような出来事の後にこのように感じることがあっても、心配する必要はありません。これは全く正常な反応です。しかし、もしこうした症状が日常生活を送るうえで大きな支障となっているならば、適応障害になっているかもしれません。
適応障害とは「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)」にリストアップされており、トラウマやストレス要因に関連する障害に分類されます。これらは、衝撃的な出来事や心理的に負担の大きい出来事の経験が診断の明白な基準となっている障害です。
このカテゴリーに分類されている障害は以下の通りです。
・心的外傷後ストレス障害
・急性ストレス障害
・反応性アタッチメント障害
・脱抑制型対人交流障害
・適応障害
衝撃的なあるいは心の大きな負担となるような出来事を受けての心理的苦悩は、人により異なります。恐怖や不安が原因で症状が現れる人もいます。
一方で、こうした経験をした多くの人には、いらいらや怒り、敵意といった症状や解離症状が現れます。
衝撃的なあるいは心の大きな負担となるような出来事の後に見られる症状は多様であることから、心理学者は上述の障害を「トラウマやストレス要因に関連する障害」に分類しました。苦しい経験を相対的に早く乗り越える人も中にはいます。
変化への適応に3カ月以上かかり、かつ回復が難しい場合、適応障害になっている可能性があります。
適応障害とは?
この障害の基本的な特徴は、確認可能なストレス要因に因り情動面・行動面に症状が出ることです。
別離といった1度限りの出来事がストレス要因となっているかもしれません。しかし、結婚生活で問題を抱えた人が職場でも問題を抱えるなど、複数のストレス要因も患者に影響します。
こうしたストレス要因もしくは問題は繰り返し発生するかもしれません。例を2つ挙げるならば、一時的なビジネス上の危機やセックスの問題などがこれに当たります。
一方で、継続的に発生するストレス要因もあります。慢性的な病や犯罪多発地域での生活などです。
ストレス要因は、個人、家族全体、さらにはそれより大きなグループやコミュニティに影響を及ぼす可能性もあります。自然災害などのケースがこれに当たります。
また入学、家族を離れる、結婚する、母親になるといった特定の人生の転機と関連している問題もあります。
以上に加え、愛する人の死の結果がストレス要因となる可能性もあります。しかし、悲しみの強さ、質、その継続期間が通常考えられるレベルを超えた場合のみのケースです。結果、適応障害はより高い自殺のリスクと関連しています。
臨床心理士が適応障害と診断するまで
「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)」は、臨床心理士は以下の基準を考慮し診断を下さなければならないとしています。
A)確認可能なストレス要因に対する情動面・行動面の症状の進展。これらの症状がストレス要因のはじまりから3カ月後に出現
B)これらの症状や行動が臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の特徴を持つ:
・ストレス要因に不釣り合いな程度や強度を持つ著しい苦痛の症状。症状の重症度や出現に影響を与える外的文脈や文化的要因を考慮する。
・仕事または社会生活などといった重要な分野における機能面の著しい低下
C)そのストレス要因と関連した変化は他の精神疾患の基準を満たさず、またすでに存在している精神疾患の単なる悪化でもない
D)症状が正常の死別反応ではない
E)ストレス要因、またはその結果がひとたび終結すると、症状がその後さらに6か月以上持続することはない
適応障害のタイプ
「精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)」は、適応障害を以下に沿って分類しています。
・抑うつ気分を伴う:気分が落ち込み、絶望し、泣きたくなることが多い
・不安を伴う: 緊張、不安、いらいら、分離不安
・抑うつ気分と 不安の混合を伴う:欝と不安が組み合わさりこれが主な要因となっている
・素行の障害を伴う
・情動と素行の障害の混合を伴う: 情動面の症状と素行面の変化
・特定不能:適応障害の他のサブタイプに当てはまらない不適応反応
またDSM-5は、こうした障害を急性(適応障害の期間が6カ月未満)と持続性(同期間が6カ月以上持続)に分けています。
適応障害はどのように進む?
問題やストレス要因が発生すると、発生から3カ月以内にこうした症状が現れます。問題が取り除かれると、症状は6カ月以上持続しません。
問題が深刻な場合(解雇など)、通常その直後に症状が出現します。症状は数日以内に現れるかもしれませんが、それほど長くは持続しません(2~3カ月以内)。
そうはいっても、もし問題やその影響が長く続く場合は、適応障害も持続し慢性化するかもしれません。
適応障害は多く見られる疾患か?
適応障害は一般的に極めて多くみられる疾患です。ですが、その有病率は、研究対象のグループ及び評価手法に大きく左右されます。メンタルヘルスの外来患者で適応障害と診断される人々の割合は、5%~20%と差があります。
その一方で、病院内の心療クリニックでは通常、適応障害のケースがより多く見られます。実際、院内での割合は50%にも達します。
適応障害のリスク要因は?
困難な状況にある人々は、多くの場合たくさんのストレス要因を抱えています。こうした人々はこの障害にかかるリスクが高くなっています。
同時に、医師は診断の際に患者の文化的背景も考慮しなければなりません。ストレス要因への反応が不適応か否かを調べなければなりません。
加えてストレス要因に関連する精神的苦痛が予想以上に大きいかどうかについても考えるべきです。
適応障害?私たちにできること
まず第一に、臨床心理士あるいは精神科医に相談しましょう。あなたの抱える問題があなたの手に負えないと感じるならば、以下を試してみましょう。
・以前に同じような状況にあったことがないか、そしてあるならばその時どのように解決したかを考えてみましょう。
・家族や友人に自分の気持ちを話してみましょう。
・考えをまとめましょう。全ての事を一度に心配していませんか?そうならば、少し考えてみましょう。というのは、あなたを悩ませる問題にも間違いなく大小があるからです。ノートに今あなたが抱える問題を書き出し、それぞれについてあなたがどれほど悩んでいるのか、それほど悩んでいないものから大きな問題と考えているものまで整理してみましょう。これにより、そのなかでそれほど重要ではないものがあると気が付くでしょう。
・問題をひとつだけ選びましょう。解決が最も容易なものから始めましょう。
・問題をどのように解決するか考え、実際に行動に移しましょう。変化を起こしましょう。
・運動をしてお風呂でリラックスしましょう。自分のために「オフ」の時間を作りましょう。
もしあなたの抱える問題が解決しない、または症状をコントロールできないような場合は、専門家に相談しましょう。かかりつけの医師でも、直接精神科医のドアを叩いても良いでしょう。何と言っても、臨床心理士は、あなたが障害を抱えていてもいなくても、あなたを助けるためにいるのですから。
参考文献
米国精神医学会(2002)、精神疾患の分類と診断の手引(DSM-4 )a. マドリッド、Editorial Médica Panamericana
Popper, K. (1995)、La responsabilidad de vivir。バルセロナ、Paidós.