セラピーへの抵抗、4つのタイプ

今回の記事では、セラピーへの抵抗を減らすため、ポジティブ心理学から生まれたテクニックを紹介します。このテクニックは患者の能力に焦点を起き、メンタルヘルスを病理学とは別の視点から治療することを目的としています。
セラピーへの抵抗、4つのタイプ

最後の更新: 01 2月, 2020

セラピーへの抵抗とは、メンタルヘルスに問題を抱える人が、行動、認知、感情の形で表す抵抗で、症状軽減の邪魔となりうるものです。また、抵抗の形は、セラピーを拒否する人により様々です

同様に、全ての患者がセラピーを拒否するわけではありませんが、時折あまり乗り気でない雰囲気を見せることもあるでしょう。そのような場合は、なにか抱えている問題を隠していたり、決められた約束事を守っていなかったりする場合がほとんどです。

心理学的モデルは様々ありますが、多様な抵抗の種類全てをうまく述べたものはありません。しかし、全ての患者が必要な治療を受け、彼らが直面している問題に関して、積極的に問いかけ、この抵抗を解決する必要があると多くの人が感じています。

この記事では、このような抵抗を取り払うのに有効なテクニックを紹介します。ポジティブ心理学から生まれたもので、どのようなセラピーでも取り入れることができるテクニックです。

ポジティブ心理学

ポジティブ心理学とは心理学の分野における考えの一つであり、患者の弱みではなく、強みに焦点を置いたものです。個人が持つ能力とポテンシャルを引き出す目的があります。1998年、当時の米国心理学会会長によって広められたと言われています。

ポジティブ心理学の基本は、個人の強みを伸ばし、能力の成長を促すことにあります。例えば、ポジティブ心理学において、健康と幸福とは個人の自立や自主性といった、心理学的な健康であるとされています。また、個人にとって、望みやニーズ、ポテンシャルの形成や重要な目的を達成できるような、環境を提供することを重要視しています。

よって、どのようなセラピーの方法であれ、この心理学的なアプローチを取り入れると良いでしょう。抵抗を緩和するだけでなく、個人の変化を促し、能力を伸ばすことに繋がるからです

「セラピーとはジムに通うようなものだ。」

-クリス・パイン-

セラピーへの抵抗、ネガティブで介入的な執拗な考え

セラピー 抵抗

メンタルヘルスに悩む人の多数が、繰り返すネガティブな考えに悩まされています。認知行動的に解析しても、自身でその考えをストップしようとしてもあまり効果がないとされています。下記は、長期的に、認知的な形成を再構築するのに役立つテクニックです。

  • マインドフルネスから成るテクニック(現在の瞬間の経験に集中するという心理的なプロセス)。何も評価することなく、現在経験していることを熟考することで、考えを抑制することができます。マインドフルネスは個人の考えを除外するものではなく、主観的な経験により、自己識別を抑制する働きがあります。
  • 幸福セラピー。これは、症状の緩和だけでなく、幸福と自己効力感を伸ばします。繰り返す考えにはネガティブなものが多いため、個人の幸福を増加させることは、とても有効的です。セラピーのはじめに、不愉快だったことを問うのではなく、その週に起きた幸せな話をしてみるといった簡単なテクニックからはじめるとよいでしょう。
  • 過去のポジティブな経験に関する物語式のテクニック。過去の出来事を書き出してみることで、ネガティブな考えを処理することができます。これはネガティブだと信じ込んでいたような過去の出来事から、ポジティブな感情を形成する働きがあります。過去のもっとも幸せだった出来事を書き出し、その経験によってどんな感情になったかも文字にしてみましょう。

病理的識別が、個人固有であるという考え

メンタルヘルスに悩む人の中で、症状が完全に手に負えなくなってからセラピーを受ける人がほとんどです。多くの人が、それを認識できないでいるのです。そしてそれは不安とともにやってくることが多いようです。このようなメンタルヘルスの障害に悩む人は、自分自身と病気を切り離すことができない場合がほとんどです。

実際、そのような人は、過去、現在、そして未来ずっと不安に悩まされると信じ込んでいます。そのような不安や障害といった病理的識別から自分を引き離すことにより、その病名がもつ力を軽減し、自分を表すのにより適切な形容詞を見つけ出すことができるのです。

  • ”不安”を再概念化しましょう。もし可能であれば、不安の進化的な機能について説明するようにしましょう。これは、最終的なネガティブな評価を取り除くことを目的としたものです。「ストレス」と「不安」という言葉を区別して使うようにしましょう。「ストレス」とは色々な場面で使われ、病理的意味を含む言葉ではありませんが、「不安」は病気と関係深い言葉です。患者は、他の人と自分がそれほど変わらないということに気づくことが大切です。
  • 能力向上または競争モデル(Costa and López, 1986)。これは個人が自身で気づいている長所、理解力、スキル、そして能力に焦点をおいたモデルです。これは、不安は軽蔑的なものとして見られると思い込み、自分がその病気に冒されていると信じ込んでいる人に有効的です。その人を表す新しい形容詞を提案してみましょう。
  • 長所を基本とした介入(Seligman, 2005)。自分がベストの状態だった時の思い出などを書き出し、毎晩読んでみることを勧めてみましょう。患者の人間関係を充実させることが目的です。

セラピーへの抵抗(期待と不安)

不安障害患者の抵抗と向き合う時、認知の再構築は骨の折れるタスクです。ですから、ソクラテス式問答法における不合理な考えのテクニックを組み込むことで、抱えている問題に関して意味を見出す手助けをすることができるでしょう。なぜなら、期待によって不安が煽られていることがほとんどだからです。

  • 未来に目を向けましょう。腕を広げ、興味を持ち未来を待つことの素晴らしさを語りましょう。
  • 重要な目印と進歩。ポジティブまたはネガティブな経験の痕跡を見つけ出し、残しておきたい経験を選びましょう。

セラピーの効果と薬物治療

セラピー 抵抗

薬による精神治療を始め、ポジティブな変化が現れると、それは薬のおかげだと信じる人がほとんどです。そうすると薬をやめることが難しくなり、時として逆の効果が現れることもあります。ですから、現れた良い変化の全体像をよく知っておくことが大変重要です。加えて、ソクラテス式問答法を利用し、薬が全てであるという考えを消し去る努力が必要です。

ムードの変動を表に表してみましょう。それにはばらつきがあることでしょう。またセラピーでは患者が見落としてしまいがちな進歩に気づかせ、毎回元気付けることが大切です。このようなタスクやテクニックは、セラピーを拒否する患者に対して、有効的に使用することができる技術の一つです。

他にもポジティブな介入を取り入れて、能力の向上と、病気からの離別を目標に対応しましょう。これらはポジティブ心理学の重要な理念ともいえるでしょう。


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。