とある牛飼いの物語

· 2018年7月29日

習慣は、時に我々を罠に陥れます。「いつも通り」は安心で快適なので簡単に慣れてしまいますし、うっかり存在を忘れてしまいがちです。ここでご紹介する物語は、そんな私たちにとって何かを気づかせてくれるきっかけになるかもしれません。日常生活に予想以上に大きな影響を与えている「習慣」について、今回は一緒に考えてみましょう。

題名にある通り牛飼いが登場するお話ですが、この「牛」があなたの人生にとっては何を表すのかを考えながら読んでみてください。その牛から何を得ているのか、そこからどれだけ自立できるのかなど、自分の人生に当てはめてみましょう。

「習慣は死ぬ手段の一つである。」

とある牛飼いの物語

この物語は、非常に頭の良い師匠が弟子を連れて田舎を訪れるところから始まります。道中2人は、夫婦と3人の子供が住む質素な木の家を見つけました。全員身なりが悪く、汚れて継ぎはぎだらけの服を着ています。靴も履いておらず、その姿からは非常に困窮した生活を送っていることがわかります。

周囲には工場も商店もなく、その地域中が貧困に苦しんでいるように見えたため、師匠はその家族の父親に、一体どうやって生活しているのかを尋ねました。父親は静かにこう答えました。「ほら、あそこに牛が一頭見えるでしょう。あの牛が毎日牛乳をくれるんです。一部は売ってそのお金で必要な物を買い、残りは自分たちで飲んでいます。私たちはそうやって生活しているんですよ。」

二頭の牛

師匠は父親に感謝し、その場を去りました。そして、弟子にこう告げます。「あの牛を渓谷へ連れて行って、谷底に突き落としてしまいなさい。」

若い弟子はその言葉に呆然としました。なぜなら、あの牛はあの貧しい家族にとって唯一の生活手段だからです。しかし、彼は師匠の言うことには必ず理由があると信じ、心を鬼にして牛を崖から突き落としました。その出来事は彼の頭から何年も離れることはありませんでした。

弟子が田舎町に再び訪れると…

それから少し経ち、自分のしたことに罪悪感を感じた弟子は師匠の元を去り、例の田舎町に戻ってあの家族に謝罪に行くことにしました。しかし、近くに行ってみるとあの時から何もかもが変わっていることに気づきます。木々に囲まれた美しい家が建っていて、その周りでは子供達が楽しそうに走り回っています。そして家の前にはなんと、ピカピカの車が止まっているではありませんか。

弟子は、あの家族はきっと生き延びるために何もかも売ってこの地を去ってしまったのだろう、と悲しく悔しい思いでいっぱいになりました。しかし、近所の住民に尋ねると、まだ同じ家族が住んでいるというのです。彼は例の家に再び戻り、町の人が言っていた通り、同じ家族が住んでいることを確認します。一体何があったのか父親に尋ねると、彼は大きくにっこり笑ってこう答えました。

「以前私たちには、牛乳を作ってくれる牛がいて、それに頼って生きていました。でもある日、運が良いことにその牛が崖で足を滑らせて死んでしまったのです。それからは、私たちは自分たちで何とかしなければ、と必死に他の技術を磨いてきました。あの一件が起こるまでは、私たちにこんなことができるなんて、思ってもみなかったのです。そして、今ではその商売が繁盛して、生活がずっと楽になったんですよ。」

「いつも通り」の気楽さ

読者の皆さんも、弟子と同じように、牛を谷底に突き落とすという師匠の選択にはびっくりしたことでしょう。しかし、これは習慣につい頼ってしまう人間の良い例え話になっています。毎日同じルーティーンを繰り返すのは楽ですが、同時に自分の未来の幅を狭めてしまうことにもなるのです

がけっぷちに立つ人

物語に出てきた貧しい家族は、それまで頼ってきた牛という存在を失くしたことで、何か別の生きる手段を探さざるを得なくなりました。彼らは、今まで通りの生活を繰り返して困窮を極める代わりに、想像もしていなかったような別の道で成功することができたのです。もしもあの牛が彼らの元を去らなかったら、きっとあの家族は今でも苦しい生活を続けていることでしょう。無理やり奪われない限り牛を手放そうとも思わなかったでしょうし、他の生きる術を探そうとは考えもしなかったはずです。

人生の中で気楽な「いつも通り」から抜け出す苦しさや難しさを、よくご存知の方もいると思います。結局人間は、安心、安定、快適を求める生き物です。しかし、それらの殻を突き破ることができれば、今まで知らなかった新しい能力や技術を身につけるチャンスが待っています。私たちはいわば眠れる獅子なのです。

習慣から抜け出そう

今回ご紹介した牛飼いの物語は、自分の習慣について見直し、その習慣がいかに自分の未来の可能性を奪っているか、考え直す良いきっかけになったのではないでしょうか。あなたにとっての「牛」は、もしかしたら今の職場かもしれないし、「何かあったときのため」に手付かずになっている海外旅行用の貯金かもしれません。

この物語はまた、自分の生活そのものについて考えるチャンスにもなることでしょう。特に毎日自分の生活について文句ばかり言っている人は、牛を突き飛ばしてくれる師匠が必要なのでは?まずは今日から、習慣の先にある自分の潜在能力を追求していきましょう。人間の能力に限界はありません。それを定めているのは自分自身なのです。

私たちはそれぞれ自分なりの「牛」を持っています。あなたにとっての「牛」はなんですか?