運動が脳に与える影響って?

2020年2月27日
運動することはなぜ気分や記憶を高め、脳損傷からの回復にも役立つのでしょうか? 運動により酸素値が高まった時、脳内では何が起こっているのでしょうか?

運動には、精神的、心理的、社会的メリットがたくさんあります。免疫を高めて病気の予防につながるだけでなく、気分や自尊心を高め、さらに見た目も良くなります。生理学的にみると、運動は心臓血管系や呼吸器系の健康に効果があります。では、運動の心の健康への影響はどうでしょう? 運動すると脳内では何が起こるのでしょうか?

運動をすると、神経間の伝達を行う化学的細胞である神経伝達物質の分泌の調整が促されます。また、ニューロンの再生や新たなニューロン生成のプロセスである神経発生にも関係します。これらはすべて、健康な脳や良い認知機能と関わるものです。それでは、このプロセスについて詳しく見ていきましょう。

運動 脳

 

運動すると、脳内で神経成長が起こる

加齢や生活習慣により神経は死ぬと考えられがちです。しかし最近の研究で、これは誤りだということが示されました。神経は自身を修復することができ、補完機能を探して神経が形成するネットワークの効率を高めることが分かっています。これは神経可塑性と呼ばれ、成長、学習、怪我の回復に欠かせません。

運動した時に脳内で起こる変化に、神経可塑性のメカニズムのひとつ、神経発生があります。新たな神経の生成は、脳のあらゆる場所で起こるものではありません。これが起こるのは、海馬、嗅球、側脳室の脳室下です。

ここ10年、神経発生を促進、抑制する因子の識別に焦点を当てた研究が行われています。そして2つの因子が識別されました。それが、豊かな環境と身体運動です

何が起こる?

身体運動が神経発生にどのように影響するかまだはっきりとは分かっていません。しかし、体内のBDNF(脳由来神経栄養因子)とVEGF(血管内皮細胞増殖因子)の値を高めるということが実証されています。

BDNFとVEGFは、それぞれ、神経の生存、血管の形成を行う蛋白です。

  • BDNF

運動をすると、脳内のBDNFの値は2倍、3倍にまで上がり、およそ1時間後に正常に戻ることが分かっています。科学者は、この蛋白の増大を海馬の年間2%の増大に相当すると言います。実は、通常の加齢では、1~2%の海馬の縮小がみられるのです。

簡単に説明すると、身体運動により海馬の神経のNMDA受容体が増えます。この受容体の活発化は、シナプスのカルシウム値を高め、蛋白BDNFの数を調整するプロセスを活性化させる引き金になります。そして、BDNFは海馬にある親細胞である他の受容体(TrkB)を活発化し、新たな神経の生成を促します。

  • VEGF

VEGFの神経発生と関連しているメカニズムはまだ明確にはなっていませんが、直接的役割と非直接的役割があると考えられています。また、神経細胞の親細胞で変化をもたらし、血管を太くし、数を増やします。

そして、血管の数や太さが大きくなることにより、循環が良くなり細胞の健康が向上します。さらに、運動とVEGFの増加により、親細胞の増加と細胞の死滅の減少、マクロファージ(外的物質を消滅させる免疫細胞)の数の調整につながることが認められています。

運動 脳

 

神経伝達物質

運動は、様々な神経伝達物質の増加にもつながります。例えば運動をすると、ストレスの多い状況、脅威を感じる状況、または身体的に活発な状況に対し体をそなえる神経ホルモンであるカテコールアミンが増加します。

これはノルアドレナリン、ドーパミン、アドレナリンと同類の神経伝達物質です。運動によってあなたが健康になるのは、これらの物質の増加やエンドルフィンの増加のおかげです

また運動により、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾール値が下がります。すると、コルチゾールの体への影響も減少するのです。

学習と認知機能

神経発生や大半の神経保護は、主に海馬で行われます。これは、空間学習や短期・長期記憶の統合に関わる部位です。運動の脳への効果に関し、定期的な身体運動は、学習や記憶の向上につながるという研究結果も複数出ています

これだけではありません。気分やストレス軽減への効果やその他の認知機能にも効果があるようです。運動により、情報処理の速さ、決断、選択的注意も高まるかもしれません。まとめると、身体運動は認知パフォーマンス全体の向上と関連しているようです

  • Morales Mira, M. (2014). Ejercicio físico: su rol en la neurogénesis inducida por BDNF y VEGF. Motricidad humana, 15(2), 134-142.
  • Riquelme Uribe, D. (2013). Ejercicio físico y su influencia en los procesos cognitivos. Motricidad y persona, 13, 69-74.