ウェルビーイングの裏にある科学

14 5月, 2020
ポジティブ心理学は革命的な理論でした。今回は、その起源と基礎にあるものについてお話していきます。

個人のウェルビーイングの裏にある科学は、とても興味深いものです。2000年、ペンシルバニア大学のマーティン・セリグマン氏とクレアモント大学院大学のミハイ・チクセントミハイ氏が、「ポジティブ心理学序文」という論文を学術雑誌「American Psychology」に出版しました。

これは、「ポジティブ心理学」と呼ばれる心理学の新たな分野にささげられた論文でした。これによって、私たちが「個人のウェルビーイング」と呼ぶ考えに強く関係したこの分野が誕生したのです(Seligman & Csikszentmihalyi, 2000)。

この二人によれば、ポジティブ心理学とは主観的経験の科学です。人間のポジティブな性質や感情の裏にあるプロセスを研究します。この心理学分野の目標は、人々のクオリティー・オブ・ライフ(生活の質)を改善することです(Seligman & Csikszentmihalyi, 2000)。

この意味で、ポジティブ心理学は個人のウェルビーイングについての科学として非常に重要です。個人、集団、組織の全てのレベルで、最善の機能を引き出すためのプロセスを研究します(Gable &Haidt, 2005)。

ポジティブ心理学は、インスピレーションとして「3つの柱」が最善の状態であることを目指します。それは、主観的経験(幸福感、希望)、ポジティブな特性(許し、知恵)、そして市民としての道徳感(責任、利他主義)の3つです(Linley & Joseph, 2004)。それに加えて、ポジティブな特性を育てることで心の問題を防ぐことにも焦点を置きます。

笑顔の女性

「私たちが目標としているのは、盲目的な楽観主義ではなく、柔軟な楽観主義、別の言葉で言えば目を開いた状態での楽観主義です。必要な時には現実に対する悲観主義的な鋭い感覚も必要ですが、その暗闇に囚われることなくそれを利用できなければなりません。」

‐マーティン・セリグマン

上述した通り、ポジティブ心理学は、個人のウェルビーイングの科学的枠組みの一部です。つまり、必ず科学的な研究アプローチをとります。「現象」を理解するためには科学が最も有効であると研究者たちは考えるのです。

この枠組みは、アプローチの仕方をはっきり定義します。疑似実験的、相関実験的方法を含んだ、信頼できる効果的な方法論的戦略を試みます。「試みる」という言葉を使っているのは、必ずしもそれが達成されるとは限らないからです。それは、時にコントロールできない要素に影響を受けた、非常に主観的な視点が働くことがあるためです。

個人のウェルビーイングの科学の鍵

物事に感謝する、自分を他人と比べすぎない、自分では変えられない状況を受け入れることが個人のウェルビーイングを達成する鍵であると科学的に証明されています。これに関して、ウィスコンシン大学の研究者たちは、瞑想と思いやりに関する12年に渡る研究で、人間の脳の働きを調べました。

この神経画像研究を通して、人が自分を他人と比べなかったとき、どんなものにも感謝したとき、そして直面しなければならない状況を受け入れた時に、幸福に関係している脳の部分がより強く頻繁に活発化している様子が観察されました。この研究では、脳を観察するのに核磁気共鳴画像法のような様々な技術が使われました。

この研究のインパクトは非常に強く、米国科学アカデミーが2004年に出版してから、史上5番目に引用の多い科学文献となっています。

ウェルビーイング 科学

失敗に対して楽観的になる:個人のウェルビーイングの科学の柱

悲観的な人々には共通の特徴があります。悪い出来事が長く続き、自分たちではどうしようもできず悲劇的な結果を招く、と考えがちなのです。

更に、多くの人が幸福、楽しみ、心地よさ、歓喜といった感情に簡単にたどり着く方法があると信じています。しかし実際は、自らの強さや美徳を磨くことでこういった感情を育てなければなりません。こういった特性を磨くことは非常に重要なことですが、多くの人が見落としてしまいます。これはどんなに富がある人でも、ほとんどの場合忘れてしまっている点です。

悲観的な人は、自分の心の状態の多くは自分でコントロールすることが出来る、ということを忘れがちです。しかし、目標を達成するための能力は自分に備わっているものです。これは、自己効力感、対処メカニズム、不確かさへの耐性といった能力と大きく関わっています。

例えば健康について言うと、次のような4つの決心をすると考えてみてください。禁煙する、定期的な運動を続ける、バランスの取れた食生活を送る、適度な楽観主義を保つ、の4つです。信じがたいかもしれませんが、楽観主義が、その他3つの要素と同じくらい大切だと結論付ける研究も複数存在するのです。

これは、自らの現実に対して、正しいデータに基づいた楽観主義を持つことを意味します。そのときに味方となってくれるのが、自らの能力と素質です。それらは、自由が生み出す自信によってインスパイアすることができます。よりクリエイティブになり、自らを表現したいという願望とともに、知性が上手く機能することを可能にしてくれるのです。

「ウェルビーイングは、単純に私たちの頭の中に存在しているわけではありません。ウェルビーイングとは、気分が良いこと、意味があること、健全な人間関係、そして達成といった要素の組み合わせです。」

-マーティン・セリグマン―

  • Gable, S. L., & Haidt, J. (2005). What (and why) is positive psychology?. Review of general psychology9(2), 103-110.
  • Linley, PA, y Joseph, S. (2004). Cambio positivo después del trauma y la adversidad: una revisión. Journal of Traumatic Stress: publicación oficial de la Sociedad Internacional de Estudios de Estrés Traumático, 17 (1), 11-21.
  • Seligman, ME y Csikszentmihalyi, M. (2000). Psicología positiva: una introducción (Vol. 55, No. 1, p. 5). Asociación Americana de Psicología.
  • Vázquez, C., & Hervás, G. (2009). La ciencia del bienestar. Alianza.
  • Vázquez, C., Hervás, G., Rahona, J. J., & Gómez, D. (2009). Bienestar psicológico y salud: Aportaciones desde la Psicología Positiva. Anuario de Psicología Clínica y de la Salud5(1), 15-28.