ウェルニッケ・コルサコフ症候群を知っていますか?
急激であっても慢性的であっても、アルコールの極端な摂取がわたしたちの中枢神経システムに障害を引き起こすことは事実です。これは特に脳で起こり、ウェルニッケ・コルサコフ症候群などの病気があります。
しかし、このことは19世紀前まであまりよく知られていませんでした。今日でも、アルコールを摂取することで起こるいくつかの脳障害の理由はわかっていません。
人は、アルコールの精神病理学においてアルコールが中枢神経システムに及ぼす直接的ではっきりした結果のみを考えてきました。しかし、時が経つにつれ、栄養不足に関連する大量アルコ―ル摂取が原因と思われる影響が見えてきました。
障害の現われに関して、これらははっきりとした決定的な影響です。
次は大量のアルコール摂取によって引き起こされるよく知られた障害のひとつをご紹介します。ウェルニッケ・コルサコフ症候群です。
ウェルニッケ・コルサコフ症候群
ウェルニッケ脳症とコルサコフ症候群は別の症状です。しかし、多くの場合に同時発生し、ウェルニッケ・コルサコフ症候群ということになります。下記に説明しているように、原因のひとつはチアミン(ビタミンB1)不足です。
ビタミンB1が不足していることは、アルコール依存症の人によくあることです。しかし、彼らだけに起こる病気ではありません。食べ物をきちんと吸収できない体の人にも良く見られます(吸収不良)。慢性的な病気や肥満の手術の後によく起こります。
コルサコフ症候群/精神病は、ウェルニッケ脳症の症状が引いた後に起こりやすい病気です。
ウェルニッケ脳症は、視床や視床下部の脳の下方部分にダメージを引き起こします。
コルサコフ症候群は、記憶に関連する脳の部分への永久的なダメージから起こります。
それでは、ウェルニッケ脳症とコルサコフ症候群を別々に見てみましょう。こうすることで、より簡単に理解ができるかと思います。
ウェルニッケ脳症
1885年ウェルニッケが初めてこれを説明しました。これは慢性的なアルコールと栄養不足で起こります。ウェルニッケ脳症では、第三脳室、中脳水道、第三脳室などを囲む脳の構造に対照的な病変が見られます。
特にこれらの構造は、乳頭体、背面視床、青斑核、水道周囲灰白質、動眼神経核、前庭神経核などです。
また、50%のケースでは小脳にも病変が見られ、プルキンエ細胞の現象を引き起こします。最も典型的なサインは、乳頭体の衰えです。 およそ80%のケースで見られます。
ウェルニッケ脳症の原因
この病気の原因は、チアミンあるいはビタミンBの欠乏から来ます。チアミン不足はよくアルコールを飲んだり、依存している人によく見られます。
アルコール依存症患者のビタミンB1不足は、栄養不足、低い腸内ビタミン吸収レベル、ビタミンを貯蔵・利用する肝臓機能の低下から起こります。これらの要因は、慢性的なアルコールの消費が原因です。
ビタミンB1不足は、遺伝の場合も後天的である場合もあります。このような違いは、アルコール中毒者がこのような病気になる理由を解明してくれるかもしれません。
コルサコフ症候群
この病気の特徴は、深刻な前向性記憶(新しいことを学ぶことができず、古いことを覚えておけなくなる)の悪化です。
無関心も主な特徴です。一方で、感覚的能力や知的能力はあまり変わることがありません。
コルサコフ症候群はウェルニッケ脳症と関連している可能性があります。最大80%の患者が似たような脳症を以前患っています。
しかし、コルサコフ症候群は一度もウェルニッケ脳症を患ったことがない人にも見られます。
アルコール依存症ではない人が、コルサコフ症候群の引き金となるウェルニッケ脳症を患うのは稀です。つまり、この病気の発症に関してはアルコールの神経毒性がかなり関わることを意味します。
コルサコフ症候群の症状
臨床観察では、患者に混乱や注意の散漫が見られます。多くは、意識レベルが低くなります。さらに、治療がされなければ、意識不明や死に至ることもあります。
関連した症状もあります。眼球振盪(無意識の素早い連続的な目の動き)、運動失調 (うまく体を動かせない)、眼筋麻痺 (意識的に目を動かすことができない)などがあります。眼球運動、外転神経、前庭神経核にも病変が見られることがあります。
コルサコフ症候群によって引き起こされた変化
神経毒的作用によってもっとも影響を受ける神経細胞は、大脳基底核のコリナージックニューロンです。 これらの神経細胞は、コルサコフ症候群患者にはあまり見られません。
チアミン不足は、神経伝達物質の喪失も引き起こします。特に、アセチルコリンによる刺激に関わるものです。それによって、記憶障害が起こります。
乳頭体、視床、前面視床、視床前核の病変も同じくらい深刻な記憶のロスを引き起こします。
見てきたように、ウェルニッケ脳症とコルサコフ症候群の間の違いは明確ではっきりとしているわけではありません。病理的視点からすると、どちらの病気からも影響を受けるエリアのオーバーラップがあります。
2つの病気の間に明確なボーダーがないため、「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」という用語を推奨する専門家もいます。
参考文献
Belloch, A., Sandín, B. y Ramos, F. Manual of Psychopathology. Revised Edition. Mc Graw Hill. Madrid.