『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』

『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』には、現代社会で起こっている様々な現象を分析する明快な思考が書かれています。政治、文化、生活全般、私達に直接影響するすべてにおける大きな難題にまつわる一冊です。
『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』

最後の更新: 13 3月, 2020

『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』は、イスラエル出身の歴史学者で作家のユヴァル・ノア・ハラリが最近出版した本です。彼は、著書『サピエンス全史:文明の構造と人類の幸福』や『ホモ・デウス:テクノロジーとサピエンスの未来』などで有名になりました。最新の本には、今の現実に対する奇抜なアプローチが書かれており、40カ国以上の国で翻訳されています

ハラリが現代社会を分析した著書『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』は、示唆に富んだ本です。この中で彼は、基本的に、私達の住む世界には有害な検閲が存在すると主張しています。過去とは違い、情報が制限されていません。そして社会は情報であふれており、これにより問題の真の重要性が隠されていると言います

また、権力、帝国の役割、移民、愛国心などの非常に重要な問題も扱われています。『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』は5部構成になっており、それぞれに複数のレッスンが含まれます。さらに深くみていきましょう。

21世紀の人類のための21の思考 ユヴァル・ノア・ハラリ

 

 21世紀の人類のためのレッスンのひとつ、テクノロジー面の難題

『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』は、テクノロジー面の難題から始まります。この部分でハラリは、自由の価値についての現代の危機や新たなテクノロジーで生じる問題について、以下のような4つのレッスンを記しています。

  • 幻滅:自由主義運動は、独裁的国家社会主義や共産主義に勝利してきました。しかし今や、そのための自由や困難の価値が少しずつ失われつつあります。懐疑主義が増え、より単純な考えが一般的になっています。
  • 雇用:人工知能は人間にとってかわり、将来多くの仕事や商業が消失します。「使えない人」が出てきます。つまり新しい文脈の中では、生産性の上げ方が分からない人は不要になるのです
  • 自由:私達はマクロデータに常に監視され、知らないうち決断する力をゆだねています。デジタルの独裁化への扉が開かれつつあります。
  • 平等:データを制する人が未来を制します。大規模なテクノロジー企業が力をもち、将来好きなように世界を動かすようになるかもしれません。

 

政治面の難題

『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』に出てくる2つ目の課題は、政治面の難題です。次のように分けられています。

  • コミュニティ:人間には物質的な体がありますが、仮想コミュニティはより広がりをみせています。
  • 文明:世界の大部分がひとつの文明です。違いはなくなってきています。
  • ナショナリズム:今日の問題の多くが、国家ではなく世界的な問題です。
  • 宗教:宗教は、多くの人がフィクションだと考えるものを共有しながら、重要な役割を果たし続けています。
  • 移民:移民する人が自分の生まれた文化や起源を置き去ることができれば、移民は成功したと言えます。人種差別から「文化主義」への変化が見られます。

 

絶望と希望

ここでハラリは、平静を保ち続け、不合理な恐怖を避けることができたなら、人類はなんとか回っていくことができると言います。この状態になるためには、論理の力を通して世俗的な価値観を統合することが必要だと彼は考えます。

ここでのレッスンは以下のようなものです。

  • テロ:テロは歪められて表現されています。不合理な恐怖を抱く必要はありません
  • 戦争:戦争を挑発するような姿勢が広がっていますが、人の愚かさを甘く見るべきではありません。
  • 謙虚さ:個人や各文化が、自分が世界の中心ではないということを理解する必要があります。
  • :自分が信仰者であることと、道徳的であることは違います。
  • 世俗主義:自分が真実の担い手であると言う人よりも、自分の無知を認める人の方が信頼できます。

 

真実

ここで、ハラリは偏見に立ち向かうことや自分の基準を作るための信頼性のある情報を見つけることの重要性について語っています。具体的には、次の4つから構成されます。

  • 無知:あなたが信じてしまう大量の情報に比べ、実際に知っていることは少ないものです。
  • 正義:抽象的な価値は正義に含まれませんが、決断と行動の原因と結果に対する合理的な評価は正義の内です。
  • ポスト・トゥルース:真実と力は少しの間しか共にいることはできません。遅かれ早かれ力によりフィクションが作られます。
  • SF『すばらしい新世界』はもっとも預言的に書かれた一冊です。
ユヴァル・ノア・ハラリ 21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考

 

レジリエンス

『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』の最後は伝統的な話で、私達が生きる世界を解釈することはできないと知ることの重要性に関するものです。また、それを説明してくれる説得力のある新たな話もまだありません。

ここでは、3つのレッスンがあります。

  • 教育:教育の目的は、もはや、情報の獲得ではなく、そこから意味を成す能力を発達させることです。
  • 意味:人生はストーリーではなく、フィクションと現実の違いを知ることが重要です。
  • 瞑想:今は選択肢があっても、これからなくなるかもしれません。しっかりと観察しましょう。

お分かりいただけたように、『21 Lessons : 21世紀の人類のための21の思考』には、素晴らしい思考が記されています。これらのレッスンは現代社会のターニングポイントであり、立ち止まり考える価値のあるものばかりです


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  • Harari, Y. N. (2018). 21 lecciones para el siglo XXI. Debate.


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