あまり知られていない5つのマニアと強迫観念
マニアックな熱意は移ろいやすく、時には何らかのトピックに対する突飛な懸念につながります。大衆文化の中では、マニアになることとはつまり特定の融通のきかない行動様式に固執し、変化を頑なに拒む態度を意味すると考えられています。しかしマニアックな熱意が強迫観念と化してしまう可能性を避けられない場合もあるのです。
一般的に、マニアックでいることには時間を浪費してしまうこと以外には厄介な点などありません。しかし、もし懸念や趣味が強迫観念に変わってしまったら何が起こるのでしょう?
話し言葉では、「マニアックな」、「強迫的な」、「熱意のこもった」といった言葉は同じような意味だと考えられています。しかし心理学的立場から見ればこれらは全く異なる言葉なのです。実はマニアックな状態とは、過度に多幸感に溢れ、不注意になった精神状態を指しています。これらの言葉「マニアック」と「強迫的」との間で比較を行えばこのトピックを理解しやすくなるでしょう。
一つはっきりしているのは、私たちは思い浮かべることのできるものならどんなものに対してでも強迫的に夢中になったり情熱を持ってしまう可能性があるということです。ほとんど全ての人に、「マニアックに」なる瞬間があります。その時人は、何らかの儀式的行動を行なっているのです。
こういった強迫観念について、皆さんも少なからず耳にしたことがあると思います。例えば、「メロマニア(音楽狂)」という音楽への執念や情熱を示す言葉がありますね。しかし、その他にもまだたくさんの聞きなれないであろう、あるいはご存知無いであろうマニアの種類があるのです。それではその中からいくつかをピックアップして見ていきましょう。
グラゾマニア:リストを作ることへの強迫観念
グラゾマニアとは、リストを作ることに尋常ならざる強迫観念や熱意を持っていたり、魅惑されている状態のことです。しかしながら、リストにより準備や用意をすることができるので、リスト作成は本来物事をより効率的にしたり、ストレスレベルを減らすことに繋がる手段にもなり得ます。
グラゾマニアを抱える人々は、何が何でも全てのことに関してリストを作ります。例えば日々のタスク、行くべき場所、特定のタイミングで言うべきキーフレーズなどをリスト化するのです。
この強迫観念に囚われている人々は、リストを作ることで全てが整っていると感じることができます。しかし、リストへの熱意と強迫性障害や強迫性パーソナリティ障害などの疾患とを区別しておくことが重要です。
強迫性障害の場合、何らかの強迫観念があるせいで強迫行動が起こり、それによって不安を軽減させようとします。この文脈においては、実はリスト作りは強迫行動を止めるための戦略となり得るのです。例えば、リストに書かれた「ドアを閉める」という項目にチェックを入れることで、強迫観念に駆られて何度もドアのところへ戻って再確認してしまうと言う行為を行わずに済みます。
DSM-V(精神障害の診断と統計マニュアル)によれば、強迫性パーソナリティ障害の人々は清潔さや完璧さ、効率性への懸念を抱いているとされています。この障害を診断するために集められた診断基準としては、細かなことやルール、リスト、整理整頓などへの強迫観念が挙げられます。この障害を抱える人々は、その活動のメインの目的を無視してしまうほどにこういった強迫行動を行なってしまいます。このケースで言うと、リストを作成した目的自体がないがしろにされてしまうのです。
どちらの障害にもかなりの苦痛が伴ったり、あるいは社交面、職業面、またその他の生活の重要な側面での損害が伴います。この点が、グラゾマニアというリスト作りへの愛好と上記のような疾患とを区別しているのです。
薬物マニア:薬を服用することへの強迫観念
名前の通り、薬物マニア(薬物狂)とは実際には必要でない状況でも薬を服用することに強迫観念を抱いてしまう状態のことです。この概念は薬物嗜好(薬物恐怖症)という、薬を服用したがる傾向や性質と関連しています。
これに関する病気としては、ヒポコンデリーや疼痛性障害、線維筋痛症といったものが挙げられます。薬物マニアの行動は、「念のために」または問題が起きるのを「回避する」ために薬を服用するというものです。
ヒポコンデリーのケースでは、病気で苦しむことへの恐怖心が、生理学的機能を維持したり改善するための過度な薬の服用を引き起こします。例えば、腸の動きを正常に保ち、腸閉塞という自身が非常に恐れている事態を予防するために毎日便通を良くする薬を飲んでいる、という患者がこれに該当するでしょう。
しかし、ヒポコンデリーに関しては副作用を恐れるあまり薬を服用することを断固として拒絶するという正反対の影響が見られる場合もあります。
休息に関連するマニアと強迫観念:カシソマニアとクリノノマニア
横になることや座ること、眠ることなどの休息の様々な側面に関する強迫観念がいくつか存在しています。どれも非常に似通って見えますが微妙な違いがありますので、詳しく見ていきましょう。
カシソマニアは座ることへの強迫観念ですが、単に座ることを楽しむだけの状態ではありません。そうではなく、座りたいという抑えきれない衝動なのです。実は、バスで高齢者や妊婦に席を譲ることを拒否したり、列に並んで待っている間に床に座り込んでしまったり、買い物中に衣服の陳列棚に座ってしまうような人々はこの障害の影響を受けています。
しかしこれをクリノマニアという横になることへの強迫観念や、ヒポマニアという眠ることへの強迫観念と混同してはなりません。クリノマニアに関しては、この強迫観念を抱える人はベッドに横たわったまま日々の生活を送ります。
タノレクシア:日焼けすることへの強迫観念
タノレクシアとは、暗めの肌色になりたいという強迫的なニーズのことです。中にはこれを中毒症状(日焼け中毒症)あるいは身体醜形障害のサブタイプだと見なす人々もいます。身体醜形障害の人は自らの欠点(それが本物であろうと空想上のものであろうと)を過度に気にかけており、タノクレシアに関するケースでは白い肌を欠点と考えるのです。そして日に焼けた肌を美しいと思い込みます。さらに、こういった人々は自分は日焼けや紫外線なしには生きていけない、と信じているのです。
彼らは日焼けするために日焼けサロンで長時間肌を焼いたり、太陽の下で長い時間を過ごしますが、これには健康へのリスクが伴います。適切な日焼け止め製品を塗らずに陽に当たったり日焼けをすると皮膚にダメージが与えられ、健康問題を引き起こす場合があるのです。
日光には健康に良い側面もある一方で、あまりにも長くあるいは対策を取らずに陽に当たることで、皮膚関連のトラブルの危険性が高まります。これらの問題は、皮膚のやけどから皮膚ガン、メラノーマ、早老まで多岐に渡ります。
タノレクシアの治療は、その根本原因に応じて異なります。つまり、依存症として治療されることもあれば、身体醜形障害として治療される場合もあるということです。一方で、日光浴を季節性うつが自己調整されて現れた季節に応じた形態だ、と見なす専門家もいるようです。
また、日光にはエンドルフィンの放出を促進し、リラクゼーションやウェルビーイング、多幸感といった感覚を生み出す力があることがわかっています。そのため、心理学的療法に加えて、過度の日光浴をエクササイズや音楽鑑賞、笑うこと、食べることといった別のエンドルフィンを高める手段に置き換えることも治療に含まれるのです。
マニアと強迫観念についてじっくり考えてみよう
ここまでにお話しした5つの強迫観念は、たくさん存在するマニアのうちのほんの数例に過ぎません。全体として、これらはそれほど深刻なものではなく、実態よりも大げさに捉えるべきではないでしょう。実は、こういった強迫観念を抱いたり「少しマニアック」になることは、日常生活に支障が出たり不安の元になってしまわない限りそれほど悪いことではないのです。
しかし、自分をユニークな存在にしてくれている独自性が、手に負えないマニアとなってしまうのを防ぐことは大切です。このための最善な方法は、柔軟性と寛容性を持つことです。
一方で、自身の持つマニアのせいで誰かと共に暮らすのが困難になったり、他人の行動をコントロールしたくなってしまうといった事態は避けるべきです。もしすでにそれが起こっているなら、あるいはマニアのせいで生活の質が落ちているのなら、専門家に相談すべき時がきているということでしょう。