青い目と茶色の目:ジェーン・エリオットの実験

ジェーン・エリオットの青い目と茶色の目の実験は社会心理学の分野において分岐点となりました。この記事ではこの実験で何が起こったかを説明していき、その結果どうなったかについて話したいと思います。
青い目と茶色の目:ジェーン・エリオットの実験
Francisco Roballo

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Francisco Roballo.

最後の更新: 21 12月, 2022

マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの暗殺の直後、ジェーン・エリオット教授は最小条件集団パラダイムを使って自分の生徒に人種差別というものを教える実験を行いました。最小条件集団パラダイムとは、社会心理学において実験方法そのものを形作ってきたものです。基本的には、一被験者集団を別々のグループに分けて、集団間での差異を確立するものです。研究者たちはこの方法で、定義するグループを作るのに何種類の特性が必要になるかを提示し、その後被験者の所属グループ内での行動を分析できるようになりました。

 

60年代、アメリカは社会的人種危機の最中にありました。ジェーン・エリオット博士は生徒と共にグループ実験を行い、それは生徒にとって一生忘れられない実験となりました。アイデアは単純ですが、奥深いものでした。エリオット博士は、曖昧に確立された差異が人を分離させ、お互いを競い衝突させ得ることを生徒に教えたかったのです。

ジェーン・エリオットの実験

教師であり、反人種差別運動家のジェーン・エリオットは、自分の教室内にいる生徒で直接実験を行いました。エリオット博士は生徒達に「茶色い目の人の方が青い目の人よりも優れている」と言い聞かせました。また、博士は茶色い目の生徒に画用紙で作った腕輪を青い目の生徒に取り付けさせました。

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目の色

エリオット博士は、分かりやすくかつ曖昧な例をいくつか使用して、茶色い目の人の方が優れているというケースを作り上げました。生徒達は驚いていましたが、反論はしませんでした。このようにして、エリオット博士は教室内で2つの差別化されたグループを生み出しました。

  • 茶色い目の人のグループ:教室には茶色い目の人の方が多くいました。この生徒達は優越感と共に権力者(エリオット先生)からの支持を得ていました。また、茶色い目の生徒は青い目の生徒に対して腕輪をつけた時にある種の力を行使しました。
  • 青い目の人のグループ:こちらは少数派でした。エリオット博士は、「青い目の人は茶色い目の人に比べて知性で劣り、清潔感でも劣っている」と言いました。青い目の生徒は数が少なかっただけでなく、権力者から反感も買っていました。

差別

最小条件集団実験の結果は、すぐさま明らかになりました。権力者によって定義され確立された目の色というシンプルな差異が生徒間に亀裂を生んだのです。

茶色い目の子供達は青い目の生徒に対して攻撃的で意地悪な態度を取るようになりました。青い目の生徒達は茶色い目の生徒から差別を受けていると感じました。

差別はどんなものだったか?

通常、「青い目」というのは侮蔑を意味する語ではありません。ですが、この教室では、青い目をしているということが劣等条件となりました。その結果、茶色い目の生徒達は「青い目」という言葉を侮蔑語として使い始めました。茶色い目の生徒は、休憩時間に「青い目」の人達と遊びたいと思わなくなりました。また、定期的に青い目の生徒に脅すようになりました。

実験の結果

生徒間における曖昧な分離は実験が進むに従って強まる一方となり、その結果、実際に身体的な暴力が起こるに至りました。子供というのはよく喧嘩や口論になったり、時には殴り合いをしたりしますが、今回ばかりは目の色が動機でした。二日目になって、エリオット博士はグループの優劣を逆にしました。博士は「茶色い目の生徒は劣等生だ」と生徒達に告げ、同じ実験を繰り返しました。結果は同様のものでした。

教室から現実世界へ

この実験を知ると、レッテルに対して疑問を抱かざるを得なくなります。このエリオット博士が数時間の間だけ行使した曖昧な分離が教室内だけでも実に多くの問題を生んだなら、大規模で起こった場合にはどうなるのでしょうか?この世に存在するあらゆる偏見や先入観というものを考えると、一体、どのような被害がこれまで生まれてきたのでしょうか?

民族や宗教、文化という理由で、ある社会集団が別の集団を差別するということは誰にとっても驚くことではありません。こうした差異が戦争や憎悪につながっています。家族間でさえ、ある日突然権力者がこうした差異を問題だと決めたなら、お互いに反発し合うようになるでしょう。

「学校を辞めたいと思った。怒りを感じた。それが差別された人の気持ちなんだ。」

―青い目と茶色い目の実験に参加した子供-

育ちという疑問

ジェーン・エリオットは、この最小条件集団実験の結果について、よくよく振り返ってみました。彼女は、「普段はお互いに優しく接し、協力し合い、仲良くしていた子供達が『優等』グループに所属したとたん、突如、傲慢になり、差別的になり、敵意をむき出しにしたことは衝撃だった」と語っています。

大人に見る憎悪や差別というのは彼らの育ちに起因しています。社会が、肌の色や性別といった曖昧な理由から自分は他者よりも優れているのだと大人に信じこませているのです。

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今日の最小条件集団

このパラダイムは差別に関する現在の問題を理解するのに役立ちます。民族移動が増える今日、それは異なるバックグラウンドを持った人同士がお互いに接触し合う機会が増えるということであり、また往々にして衝突の原因ともなります。

その土地に既に居住していた人や文化は新しく来た移民によって脅威を感じることがよくあります。こうした現地にずっといた人達は、優劣という二極的な反応を生みがちです。こうした分離の結果、人種差別や果てにはテロまで起こったりするのです。

差別のない教育の重要性

この最小条件集団パラダイムの目的は、主観的な差異を確立し、えこひいきという空気を生み出すことです。そのため、権力から支持された支配的な集団が常に上位となります。この経緯は実に微妙でそうした支配が起こっていることに誰も気づかないこともあります。こうした効果を回避、または撲滅していくためのガイドラインがいくつかあります。

  • 差異を通常化させる。教育という場において、子供の表面上の差異を通常化することで、優越感を緩和させることができます。
  • 融合活動。違った特性や信条、文化といったものを持つ個人をできるだけ混ぜて、共通の目標に向かって取り組ませることが大切になります。
  • 教師の役割。権力的な環境において、権力者(この場合、教師)に近い集団は優越感や正当性を感じます。そのため、教師は扇動者ではなく、仲介者とならなければいけません。

結論として、ジェーン・エリオットの実験は共生と協力が脆いことを示すものとなりました。また、曖昧で主観的なことがいかに友人や家族、市民を互いに衝突させるものであるかということも示すものともなりました。

「慈善は恥ずかしいものだ。なぜなら、縦に上層から行使されているものだからだ。しかし、結束は横であり、相互の尊重を示唆するものだ。」

―エデュアルド・ガレアーノ―


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