カリメロ症候群:文句を言ってばかりの人

カリメロ症候群とは、自らの境遇がいかに不運かについて四六時中不平を言っているような人々を指す言葉です。しかし、そんな不平の裏側には深い痛みが隠されています。
カリメロ症候群:文句を言ってばかりの人
Cristina Roda Rivera

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Cristina Roda Rivera.

最後の更新: 21 12月, 2022

世の中には、常に何か文句や愚痴を言い続けているような人がいることは誰もが知っています。こういった人たちは、どんなことに対しても正しいと思えず、あらゆることに退屈してしまうのです。ここまで読んでいただいただけでもすでに、みなさんの心の中には特定の人物が思い浮かんだのではないでしょうか。精神分析医サベリオ・トマセッラが、自著『The Calimero Syndrome』のなかでこれについて説明しています。

その中で彼は、『カリメロ』というイタリア生まれで日本でアニメも制作されたシリーズに登場する不機嫌な(けれど魅力的な)ヒヨコたちに触れています。冒頭の画像を見ていただければ、そのかわいらしさがわかりますよね!彼はアニメをコミカルに引用してこの症候群について説明していますが、実はその内容はかなり深刻です。

彼は、こういったあらゆる不平不満の背後には特定の文脈が隠されているはずだ、と考えています。具体的には、非常に繊細な社会経済的状況にある場合や、かなり困難な人生を歩んできた場合などが考えられます。これが文句を言い始める引き金となっているのです。実は、彼らの言葉の裏側には本物の苦痛、つまり繰り返し無視され続けてきた情緒面の不満の種が隠されていることが多い、というのが彼の見解です。

そのような理由が多く潜んでいる一方で、大半の人が、特に身近な人々にとって腹立たしい存在となり得ます。そのあらゆることが暗闇の中にあるかのような見方・考え方の傾向からは、頑なな悲観主義が伝わってきます

しかし、常に誰かから注目されていたいというニーズを持つタイプの人もおり、この場合扱いがかなり難しいことがあるのです。

カリメロ症候群 文句

カリメロ症候群とは?

カリメロ症候群は、今にも内部崩壊してしまいそうな社会における、現代ならではの現象です。トマセッラは、「不公平さの存在はどんどんわかりやすくなっています。1789年のフランス革命以前の世界のパラレルワールドが作られているのです」と述べています。

特権を享受している人々がいる一方、暴力などに苦しむ人々も存在します。私たちの社会という生地にこういった側面が縫い込まれた結果、多くの人々が大きな不公平感を抱き、文句を言わずにはいられない状況になっているのです。

もっと深刻な何かを隠してしまう不平や不満

不平不満をよくこぼしている人々はほぼ常に、本当に不公平感を感じており、再び不正の犠牲者となることを恐れています。例えば、「カリメロ」たちの中にも、恥ずかしいという気持ちや侮辱されたり拒絶されたり見捨てられた経験に苦しんでいる人々がいます。

深刻な家族関係のトラウマ(相続問題、破産、国外追放、経済移民)もまた、人の心に一生ものの傷を残します。こういった人々はその家族のスポークスマンのようになり、家族を代表して不平を頻繁に口にしたり、時には家族と対立する場合さえあります。したがって、表に発せられる不平不満や愚痴は、周囲の人が初めの印象で考えるよりももっと根深い問題を覆い隠しているのです。

しかし、そういったデリケートで個人的な事情について話すのではなく、その不満は電車が遅れた、コーヒーが冷めている、などの表面的な問題に集中している場合がほとんどです。このように、隠し持つ痛みや恥の感情は、社会的あるいは情緒的結果を伴わずに自由に、そして公に表現できるような当たり障りのない内容に関連づけられています。

それにもかかわらず、こういった文句は何度も何度も繰り返され、他の人々も我慢の限界に達してしまうことが多いのです。

不平不満がその人の生き方になってしまうとき

タイミングの良い不満、つまり本当に心の傷に触れるようなポジティブな不満が発せられる可能性もゼロではありません。それは、職場や人間関係、あるいは家族間に問題がある時には状況を変化させる一つの手段になり得ます。しかし、多くの人々が自らの人生で待ち受ける運命に対して何度も悲しい思いをしているのです。

カリメロ症候群が襲ってくるのは、不平不満を言うことがその人のモノローグのようになり、他人との交流の仕方になってしまった時です。

こういった人のうちのほとんどが、他人に自らの苦しみを認めてもらえるように話を聞いて欲しい、と言うニーズを抱えています。それ以外にも、ただ文句を言い続けられるようにするためだけに状況が悪化していくのを放置してしまうようなある種の怠惰が原因になっている場合もあります。また、少数派ですがシンプルに他人から注目されたいと考えている人々もいます

その人の不平不満をバカにしてはならない

子どもも十代の若者も、そして大人でさえも、自分が不公平な扱いに苦しんでいるのに誰にも声を聞いてもらえなかったと感じている人々は、カリメロ症候群と呼ばれる状態に進んでいきかねません。こうなると、不平不満を何度も繰り返し発するようになってしまうのです。

しかし、他人から痛みや不満をバカにされたり笑われてしまうと、新たな不正が起こったように感じます。

苦しんでいる人々をあざ笑うと、愚痴や文句を言いがちなその人の傾向をさらに強めてしまう恐れがあるのです。

疲弊した心が生む不平不満と、助けを求めること

中には、自分がいかに「ドラマの主役」のように持て囃されているかについて不平を言い、演技のような生き方をしている人々もいます。これは、状況や他人をコントロールするための彼らなりの方法なのですこういった人々のことも「カリメロ」と呼ぶことができるかもしれませんが、実際には彼らの心の殻は壊れてしまっているわけではありません。そのような人々に出会った時に備え、見極める力を持っておく必要があります。

しかし、あまりにも頻繁に不満をこぼすような人々の心の中には、大抵の場合何か壊れたり破壊されてしまったものが潜んでいます。それに加えて、その悪習から抜け出す方法や、生活を立て直す方法もわかっていません。そのため、私たちはその人に対して辛抱強く接する努力する必要があります。何度も不満を聞かされて疲れてしまうかもしれませんが、私たちを傷つけたり苛立たせたりするつもりはないのです。

こういった態度の原因は、家族から認識してもらえなかった幼少期の痛みである場合が多いのです。基本的に、こういった人々は「私のことを気にかけて」とは言いません。むしろ、「私の話を聞いて」と言います。不平不満にとらわれていながらも、どれほど自分が苦しんでいるかを聞いて欲しい、見せたい、というニーズがあるのです。

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カリメロ症候群:助けを求めるための解決策は存在する

私たちはこういった人々に対して思いやりを持って接しなければなりません。なぜなら、多くが本当に不当な状況を経験してきた人々だからです。敬意を感じることができ、しっかり話を聞いてもらえていると感じられれば、その人も前進することができるかもしれません。

過去を思い返したくない、あるいは家族との問題を深堀りしたくないという場合には、瞑想や日常的な運動を取り入れることから始めていくのがいいでしょう。これにより、緊張状態を緩和することができます。そうすると少しずつセラピーを受ける準備が整っていくのです。

文句や愚痴を、情緒表現に変えることは可能です。また、過去の困難を乗り越えて前に進むことの妨げとなっているそういった不満の理由も変えることが可能なのです。その人を助けたいという強い願いがあれば、不満の背後にある物語に耳を傾け、その内容を深く掘り下げて解決策を探そうとしてあげるといいでしょう。


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。