ダニエル・ゴールマンと「こころの知能指数」

· 2017年12月26日

もしも、人に共感することを知らなかったり、自分や他人の感情を読み取ることが出来なかったり、自分の心を他人事のように感じていたらどうでしょう?あるいは人とつながることや、恐れをコントロールすること、自己主張することなどを学ぶ社会意識の中で根無し草の状態だったら?そういう人が、素晴らしい頭脳や高いIQを誇ったとして、何の役に立つでしょう。幸せをつかむ真の秘訣は、好むと好まざるとにかかわらず心の知能指数なのです。

今日、知能とは何で、何が知能ではないかの議論に結論は出ていないようだと言っても、だれも驚かないでしょう。実証的に、例えば、スピアマンのg因子(全ての知的行動を定義づける基本的な因子)の存在が明らかにされています。また、ロバート・スタインバーグの三角理論や、高い評価のあるハワード・ガードナーの多重知能理論もあります。

「高い集団的知能指数に達する秘訣は、社会の調和である」

-ダニエル・ゴールマン-

すると、ダニエル・ゴールマンの「こころの知能指数」はどこに位置するのでしょうか。面白いことに現実には、この考え・コンセプト・本質は、心理学の歴史の中に常に存在していました。ゴールマンは、この言葉を作ったわけではなく、1995年に『EQ こころの知能指数』を発表して一般に広め、この書籍はすでに500万部以上が販売されました。

1920年にはエドワード・L・ソーンダイクが、他者を理解しやる気を引き出す基本的能力を「社会的知性」として定義しました。また、デイヴィッド・ウェクスラーは40年代に入り、感情面を考慮しない知能テストは有効ではないと主張しました。後に、ハワード・ガードナー自身が、心の知能指数と非常によく似た対人的知能と呼ばれる7番目の知能を加えた初期の基本理論を唱えました。

しかし、「心の知能」という言葉が初めて使われたのは1985年、ワイン・ペインの博士論文『感情の研究-心の知能の発達』によるものでした。そのわずか10年後、アメリカの心理学者でジャーナリストであるダニエル・ゴールマンが、自分やその行動、人間関係の作り方においての心の偉大な力を世界中の人々に示し、現在もそれは続いています。

ダニエル・ゴールマン

ダニエル・ゴールマンと「こころの知能指数」

ダニエル・ゴールマンは、元々ニューヨークタイムズのジャーナリストでしたが、現在は心の知能指数の第一人者です。すでに古希を迎え、人生の穏和な秋を生きる彼は、静かなほほ笑みとまっすぐな視線が印象的です。小さなことも見逃さず、ほかの人が感じえないことを見抜く力があるような人物です。

彼の心理学への情熱は、精神医学が専門のソーシャルワーカーであった母親から受け継いだものだと、いつも話しています。彼女は神経心理学や、人間の心と行動科学についての書籍をたくさん持っていて、彼の子供時代の日々もその本たちと共にありました。

ある時期には、説明できない魅力を感じて挑戦してもほとんど解読不可能なテキストだったものが、のちには、社会的知能の、教育・組織的・リーダーシップ関連などどの側面においても最大の伝道者である現在の彼にたどり着くためのモチベーションと道筋となりました。

心の知能指数とは実際のところ何なのか

この問題に答えるには、知能というものを、記憶や問題解決能力などの認知的側面以外に広げて理解しなければなりません。まず何よりも、他人や自分へ効果的に向き合う能力、つまり自分の感情と向き合いコントロールする、自己の動機づけをする、衝動を抑える、フラストレーションに打ち勝つ…といった能力です。

ゴールマンの考えでは、こころの知能指数には4つの基本的要素があります。

  • 自己認識…自分の感情・価値観・本当の自分を理解しているということ。
  • 動機づけ…目標に向かう能力・失敗を乗り越える力・ストレスをコントロールすること。
  • 社会意識と共感能力
  • 社会的能力…こころの知能指数の中でも間違いなく最も哲学的要素。他人と肯定的で敬意ある関係を作るための、伝達能力・同意形成能力。
心の電源を入れる

ダニエル・ゴールマンは著書の中で、この4つの要素において万遍なく力をつける必要があると述べています。そうでなければ、例えば心の知能の訓練を受けた管理職といっても、自己認識のみ強くなり他人との共感能力に劣っていれば、自分の必要性や価値観以外の世界を理解できない古いタイプの人物になってしまいます。つまりこの4つの要素を1つとみなさなければならないのです。

こころの知能は、学び、強化することができる

『EQ こころの知能指数 (1995年)』『SQ 生きかたの知能指数(2006年)』のいずれの著書でも、この能力の一部はエピジェネティクスにあると説明しています。つまり、育ち教育を受ける感情的社会的環境によって、スイッチが入ったり入らなかったりするのです。

「IQが成功の決定的要素に占める割合は、良くてわずか20%である」

-ダニエル・ゴールマン-

しかし、ここに真の不思議が存在するのですが、こころの知能は、刺激や継続的な訓練、体系的な学習によって変化する柔軟な脳に反応し、前述の4つの要素一つ一つにおいてさらに力をつける結びつきや新しい領域を生むのです。

様々な色を放出する脳

ダニエル・ゴールマンは、子供たちをこの視点で教育する必要があるとも指摘しています。家庭も学校でも、こころの知能にとって有意義な環境をつくるべきです。一方、大人の世界では日々、自己の成長のためのさまざまなコースが開講され、セミナーや講演が実施され、あらゆる書籍や雑誌が手に入ります。

成功のカギは、意志と継続、そして彼の著書にある以下のポイントを実践する本当の自覚です。

  • 自分の行動一つ一つの裏にある感情を察知する。
  • 感情を詳しく言語化する。(「悲しい」というだけでは不十分な時もある。より具体的に、例えば「がっかりして、腹立ちと戸惑いが混ざって悲しい」)
  • どうふるまうかをコントロールするために、考えをコントロールする。
  • 他人の行動の理由を探し、他人の期待や感情を理解する。
  • 自分の感情をはっきりと表現する。
  • 社会的能力を高める
  • 自己の動機づけを学び、真の幸せに近づけてくれる目標に立ち向かう。

要するに、昔からのスタンダードな知能テストが示す数字を超えたところに、成功に結び付けてくれる別の世界・別の側面・別の知能というものが存在するのです。行動と感情を適合させ、他人とより良くつながり、自分の能力・自由・幸せ・自己実現を感じながらバランスと調和の中に生きるという人間としての成功です。この成功は、日々成し遂げてゆく冒険だと言えます。