外的感情制御:感情的影響の作用の仕方

「私はここにいるよ。あなたを支えているし、理解しているよ」、このような愛する人からの感情的なサポートほど好ましいものはなかなかありません。しかしながら結局は、自らの身に降りかかる日々の問題や試練を解決する責任は自分自身で負うしかないのです。
外的感情制御:感情的影響の作用の仕方
Valeria Sabater

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Valeria Sabater.

最後の更新: 21 12月, 2022

外的感情制御(他者の感情の制御)は、私たちにとって非常に馴染み深いプロセスを指した言葉で、誰かからサポートしてもらったりそばにいてもらうことで心の平和や落ち着き、そしてウェルビーイングの感覚が得られるような状態を指しています。驚くべきことに、このように人から人へと贈られる心のギフトは、時に依存の対象となってしまう場合があります。

このことについて、一つ例を用いて詳しく見ていきましょう。何か問題が発生したり嫌なことがあったりすると、いつもあなたに泣きついてくるようなご友人をお持ちではありませんか?そのような時、きっとあなたはそれまでしていたことを中断してその人に注意を向け、何があったのか聞いてあげて慰め、理解者がいるという安心感を与えてあげねばならないはずです。たまにならば問題ないのですが、四六時中他人に頼らねば生きていけないような人々も存在します。

そういった人々こそが、他人からの精神的なサポートに「依存」している人々なのです。実は、他人にすがり、彼らが提供してくれる避難所に逃げ込む以外に、自らの精神状態を処理する方法を知らない人々が世の中には存在しています。「あなたがいてくれなかったら私はどうなるかわからない」などという言葉が飛び出すほどです。したがって、あなたご自身は必要とされれば是非とも相手の力になってあげたい、とお考えかもしれませんが、そのような状況は100%理想的なものとは言えません。

私たちは、自分自身で感情をコントロールする方法を学ばねばなりません。結局は誰しもに自分自身に対する責任があります。痛ましい状況を解決すること、抱えている問題の出所を探ること、そして感情制御戦略とコーピング手法を学ぶことは私たちの使命なのです。外的感情制御のみに頼ることは解決策とは言えません。

それでは、このトピックをもう少し掘り下げていきましょう。

外的感情制御:その構成は?

外的感情制御は、比較的新しい研究分野です。これまでに心理学界が関心を示してきたのは、自らの感情状態を自分自身で制御するメカニズムを知ることでした。しかし、人間が非常に社交的な生き物であり、他者にサポートを求めても何らおかしくない、という事実を私たち全員が忘れてしまっていたようです。

外的感情制御というモデルは、基本的にはジム・コーンによるソーシャル・ベースライン理論とともに始まりました。このアプローチにより、孤立した状態でいると脳はストレスを感じるということ、そして仲間との親密さが私たちにウェルビーイングをもたらしてくれることが立証されています。

他者と感情を共有することで、困難に陥った時に私たちが通常経験するような、脅威に晒されているという感覚を和らげることができます。さらに、話を聞いてもらえている、理解してもらえている、という感覚を得ることもできます。私たちが生きていく上で、このプロセスが必要不可欠であることは間違いありません。

ただし、外的感情制御の枠組みには他にも微妙に異なる意味合いが含まれていますので、それについても学んでいきましょう。

外的感情制御 感情的影響

外的感情制御という言葉が意味するものとは?

外的感情制御とは、人が他者の感情状態に影響を与えるプロセスのことです。また、これは意識的かつ自発的に行われ、相手の気分を調整することを意図しています。

ここで、最初に紹介した例に戻ってみましょう。あなたは、大変な時期を経験しているご友人の感情を制御してあげる役割を担っています。

  • これは、感情の伝染が起こるような状況ではありません。まず、あなたが相手の感情状態に浸ってしまうことはないですし、一方であなたの感情状態が相手に感染るということもないのです。ここには、相手が今現在抱いている感情を変えてあげよう、という明白な意志が存在しています。
  • ここに存在するのは計画的意図です。つまり、「違う観点から物事を見させることで、相手の気分をマシなものにしてあげよう」という意欲があります。

他者からの感情的影響は様々な形で及ぼされ得る

ここまでは、外的感情制御をサポートを提供するための理想的なメカニズムとしてお話ししました。しかし、心に留めておかねばならないことが一つあります。それは、この感情制御は良いものにも悪いものにもなり得るということです。つまり、わざと悪質なやり方で他者に影響を与えて苦痛を感じさせるという事態も考えられます。

例として、誰かにあなたの感じていることを伝える場面を想像してみてください。相手は、「うーん、きみが嫌な気分でいると、俺の方まで気分が悪化するよ」あるいは「あなたはいつも問題ばかりを抱えているけれど、自分の人生との向き合い方がわかっていないんじゃないの?」などという返答をするとしましょう。この種のセリフが、悩みを打ち明けた側の人物の感情をネガティブな形で制御してしまうことは確実です。

ネガティブな外的感情制御の一番厄介なところは、それが常にみなさんが想像しているほどわかりやすい形で行われるとは限らないという点です。実は、カモフラージュされたやり方を用い、気づかれることなく密かに相手の精神を傷つけるような人もいます。

外的感情制御:感情的影響の作用の仕方

他者からのサポートに依存するのは良くない

恋人との破局、失職、家族の死去、計画の失敗、これらは全て困難な状況の具体例です。誰もがこういった経験をするものであり、そうなると他者からの感情的サポートが必要になるのは間違いありません。しかし、本当の意味で自分にとって有益な経験をし、悲しみや苦境、あるいは生きていく上での問題(重大なものであれ些細なものであれ)を乗り越えるためには、外的感情制御の正しい活用法を学んでおくことが大切です。

自分で自分の感情をコントロールする方法を習得できておらず、常に誰かに気分を変えてもらえるのを待っているような人は、やがて依存状態に陥ってしまうでしょう 。他人に不快感を和らげてもらうことを期待するなど、わがままな話だと思いませんか?もちろん、その効果は得られるかもしれません。しかし結局、それは傷跡に暖かな布を被せるような行為なのです。つまり、痛みは取り除かれますが、トラウマは消えずにそこに残り続けます。

良い感情であれ悪い感情であれ、日々自分が感じる感情を管理し、処理するのは私たち一人一人の責任です。人間には他者からのサポートが必要不可欠であり、時折であればそれを頼りにしても問題ないでしょう。しかしながら、それに慣れてしまってはいけません。結局、心の成熟度は、自らの痛みを自分で解決して乗り越えられるくらい自立できているかどうかで決まるのです。


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