傲慢症候群:権力を持つ人は要注意!

11 9月, 2020
傲慢症候群は、元政治家のデイヴィッド・オーウェンと精神科医のジョナサン・デイヴィッドソンが最初に語った表現です。行き過ぎた権力に関係するもので、傲慢症候群は多くの場合、権力がなくなると弱まっていきます。

傲慢症候群を持つ人は、リーダーの立場につくと性格が変わります。これはビジネス、政治、その他階層のある世界で起こることです。

過剰なプライド、自信過剰、他人の軽蔑が症状として表れます。そしてこれらの特性により、衝動的で破壊的な行動をとることがよくあります。

傲慢症候群を説明できる神経科学的証拠は今の所ありません。つまり、傲慢症候群の人に、生理的変性はみられないのです

傲慢症候群は病気ではなく、自己愛性パーソナリティ障害の一種でもありません。大きな権力のある立場についた時に表出し、その発展の仕方はパーソナリティ障害とは異なります。

傲慢症候群

傲慢症候群と権力

傲慢(hubris)という言葉は、ギリシャ語で「過大」を意味するhybris (ὕβρις, hýbris) に由来します。これは平静や節度の反対を表す言葉です。ギリシャ人が傲慢と呼ぶ人は、非常にプライドが高く、人に対し横柄な態度をとり、人を軽蔑する人です。そしてこのタイプの人は権力を利用することで快楽を得るのです。

傲慢症候群の研究は、ジェームズ・キャラハンの労働党で大臣を務めたデイヴィッド・オーウェンと精神科医ジョナサン・デイヴィッドソンにより行われました。傲慢症候群は、権力を求める人が必要とする野望と自信の(少なくともいくらか期待される)自然な流れであると考えられがちであるとオーウェンは言います。一方で傲慢さは、リーダーのもつ残念な性格であると考える人も多く、またいいリーダーになるためには、一定の傲慢さが代償として必要であるとも思われています。

権力は強力な薬のようで、すべてのリーダーがこれに抵抗する強い性格をもっているとは限りません。これと中和するためには、常識、ユーモア、品位、懐疑が必要です。また皮肉も、権力のありのままの姿を見ることに役立ちます。権力とは影響を与えることのできる特権的な機会であり、権力があれば自分の周りで起こっている状況をどうするかを決めることも多くの場合できます。

より詳しく言うと、傲慢症候群は、特殊で後天的なパーソナリティ障害であり、リーダーがある一定期間力を持った後に進行するとオーウェンは言います。また、精神疾患などの症状の病歴がある場合、傲慢症候群には当てはまらないということを知っておくといいでしょう。

傲慢症候群の症状

デイヴィッド・オーウェンの傲慢症候群14の症状の中からいくつかご紹介します。

  • 優越感を得るための権力の利用
  • 個人のイメージを強迫的なほどに気にする
  • アドバイスや人の評価を軽視する過剰な自信
  • 現実との繋がりを失う
  • 自分が救世主であるかのように話す
  • 無鉄砲で衝動的な行動
  • 無力でありながら傲慢で、極度に過剰な自信から細かい事を気にしなくなる

オーウェンとデイヴィッドソンはこれらの症状を研究し、パーソナリティ障害、特に自己愛性パーソナリティ障害と重なっていることが多々あることに気づきました。

14の症状の内7つは、自己愛性パーソナリティ障害と同じです。さらに、傲慢症候群の症状2つは、反社会性パーソナリティ障害や演技牲パーソナリティ障害にも共通します。

有名なケース

オーウェンとデイヴィッドソンは、過去100年のイギリスの首相とアメリカの大統領の精神的特性を分析し、傲慢症候群に当てはまるケースを認めました。

アメリカでは、2人のルーズベルト、ウッドロウ・ウィルソン、ジョンF・ケネディ、リンドン・ジョンソン、リチャード・ニクソン、ジョージ・ブッシュの7人の大統領に傲慢の明らかなサインが見られました。その中で、傲慢症候群と考えられるのは、ジョージ・ブッシュの1人だけです。

一方で、イギリスの首相の中で、過度のプライドと傲慢さを示すとオーウェンとデイヴィッドソンが考えたのは、ハーバート・ヘンリー・アスキス、デイビッド・ロイド・ジョージ、ネヴィル・チェンバレン、ウィンストン・チャーチル、アンソニー・イーデン、マーガレット・サッチャー、トニー・ブレアです。この中で、傲慢症候群のすべての項目に当てはまったのは、デイビッド・ロイド・ジョージ、ネヴィル・チェンバレン、マーガレット・サッチャー、トニー・ブレアです。

傲慢症候群

傲慢症候群は政治の世界のみの話ではない

首相や大統領に関しては、個人に関する情報が幅広く得られるため、簡単に分析できます。しかし傲慢症候群は、政治家だけに大きく影響するものではありません。すべての権力に関するものです。そのため、大企業のCEOなど権力のある人も傲慢症候群の可能性があります

偉大なバートランド・ラッセルは、権力のある地位についた人の精神的安定性に何が起こるかに関し語っています。権力と異常行動の因果関係に関するもので、彼はこれを「権力中毒」と呼びます。

そのために、立派で道徳心のある人も、長年権力を積み重ねるとそれが崩壊する可能性があります。そこで、発達した社会が、誰もがもつことのできる権力を制限する体系をつくり、このような人を制御することが非常に大切です。