ハリーポッターファンの世界
ハリーポッターは、シンプソンズと同じくらい非常に人気があります。ハリーポッターを好きな人もそうでない人もいますし、その詳しさにも個人差があるとはいえ、誰もがある程度は知っているくらい大規模な現象を巻き起こしました。
過去数十年でもっとも有名なこの魔法使いは、世界中のファンの心に深く刻まれています。ここでは、ハリーポッターファンの世界に関し、様々なことをお話していきたいと思います。
『ハリーポッターと死の秘宝』が公開されたのは、ずいぶんと前のことです。それでも、忘却や懐かしさからは程遠く、ハリーは人々の記憶に刻まれ、また信念が強く活発なファン層を維持しています。
この現象はどのようにして起こったのでしょう? この先どのようになっていくでしょうか? 今日は、これらの質問にできる限りお答えします。
ファンとは?
広義では、ある人に憧れたりアイドルとして見る人達であると言うことができます。ある人とは、スポーツ選手、歌手、俳優、メディアで一般的に知られている人達です。また、あるジャンルやシリーズ、映画のファンになることもでき、ここでいうとハリーポッターシリーズが対象になります。
ファンの影響は、アイデンティティが形成されるティーンエージャーの間で特に大きいものです。ファンは、憧れの的を真似したり、追いかけたりするなど、同一化のプロセスが行われます。
ファンは、自分のアイドルにまつわるものすべてに関わろうとします。コミュニティを作り、同じコミュニケーション方法やあいさつが行われます。そして、あこがれの的に関するストーリーや視聴覚グッズを作ることもあります。
ファンの間のコミュニケーションやスペースにおいては、インターネットが活躍しています。インターネットを使い、生産、共有、会話、調査が行われるファンのグループを簡単に見つけることができます。
また、企業や広告代理店もこのことをよく知っています。ファンは消費者であり、ハリーポッターほどまで大きくファンの現象が高まると、ビジネスチャンスが高まることは間違いありません。
自分と同一視できるキャラクター
ファンが誰かに憧れるという現象の同一化のプロセスについてお話しました。そして、このプロセスは思春期でピークに達します。そこで、これをハリーポッターファンに置き換えて考えると、おもしろい事実が判明しました。
まず、話を作り上げる1冊1冊について考えてみましょう。ここから何が分かるでしょうか? ハリーポッターの物語では、それぞれの作品が、ハリーが在籍する学年、そしてその年齢と対応しています。
『ハリーポッターと賢者の石』は、1997年にイギリスで出版されました。マーケティング戦略は、この本を子ども向けとし、1990年代後半の子どもをターゲットにしました。
若い魔法使いハリーポッターの人気はすぐに高まり、本は翻訳されて各国に広まりました。J.K.ローリングは、子ども達に読書の楽しみを取り戻したのでした。そして、その世代全体を読者へと変えることに成功しました。
若い読者達は、続編が出版されるのを心待ちにしました。おもしろいことに、本は次第に、より暗く複雑になり、大作になっていきました。そしてファンと同様、ハリーも成長を続けます。
ハリーポッターファンの世界
映画は1~2年に1本公開されました。そしてプロデューサーは、ある特別なことを成し遂げました。それは、若い読者が思春期に突入し、自分が同一化できる確固たるコミュニティの一員となったことです。
また、映画はファンを保持すると同時に、観客の幅を広げました。そこには、本を読んでいなかった若者が含まれるようになったのです。
ハリーポッターファンは、同年代で同じ悩みを抱えるキャラクターを同一視することができました。違うのは生活の場だけで、ローリングが生み出したキャラクターには、脅威の力や才能がありながら、現実世界に共感を呼んだのです。
また、ローリングは女の子が同一視しやすい女性のキャラクーを作ったことで、フェミニズム思想を高めました。
ハリーポッターは、典型的なヒーローとはかけ離れています。実際は、不完全なヒーローです。そうでありながら、彼は新しい男性のタイプを生みました。男の子や若い男性も、恥ずかしがらずに恐怖を抱いたり泣くことができるということを示したのです。
ハリーポッター:活発で生産性の高いファン
ハリーポッターファンは、特に活発で生産性が高い集団です。ファンが集まるポッターモアなどのサイトや商品にはきりがなく、盛んに活動しています。また、著者自身がインタビューやツイッターを通し、ファンからのたくさんの質問に答えています。
そしてこの大きな集団には、共通の決まりのようなものがたくさんあります。互いを「ポッターヘッズ」と呼んだり、「マグル」などの言葉を使い、死の遺物やダーク・マークなどのバッチやシンボルを使い、自分を示します。
ホグワーツによる「ポッターヘッズ」の組み分けは独特で、またポッターモアなどのサイトでは、自分がどこに属するか確認するため、ファンに「公式グッズ」を買うことを勧め、ファンの中でも新たなコミュニティが出来上がっています。
これは、占星術による分類に非常に似ています。どのグループに属するかが性格の特徴などと結び付けられるのです。例えば、グリフィンドールに属する人は、勇敢あるいはそれを志す人です。また、スリザリンに属する人は、野心家です。これにより所属感が高まり、同一化が進みます。
さらに、「ポッターヘッズ」の生産性には終わりがありません。あらゆるタイプのファンに共通るするファンフィクションの登場だけでなく、並外れてクリエイティブなコミュニティもあります。
単にプロットについて話し合うことを大きく超え、このコミュニティでは独自の映画を作ってしまったのです。それが、『ヴェルデモート:継承者の起源』です。ファンが資金を出し、非公式に作られたスピンオフで、宿敵の人生に焦点が当てられています。
「ポッターヘッズ」のこれから
世代の観点からみるハリーポッターファンについてはお話ししました。では次に、今後のことについて考えてみましょう。新たにファンを魅了することは可能でしょうか?
魔法使いと一緒に成長していったファンと違い、今の若者は全シリーズをいつでも手に入れることができます。本、映画、情報、すべてが簡単に手に入りますが、これではどこか魔法が効きません。主人公達と一緒に成長し、また次の作品を待ち望むことにより、この大きな現象は起こったのです。
発展の可能性について考えるのはまだ早すぎるかもしれませんが、新たなターゲットや将来のファンをつかむためのステップがすでに取られています。『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』シリーズの作成がその一例です。
なぜ、新たなシリーズが作られるのか?
なぜ新たな作品が作られるのでしょうか? それは、今すでにいる大人になったファンに加え、新たな観客へ扉を開くためです。実際、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、ハリーポッターの本を読んでいない若い世代に好評です。
その後、ハリーポッターのテーマパークができたり、またキングス・クロス駅など実在の場所もあります。このような場所は映画や本を超えてファンを楽しませ、そこではJ.K.ローリングが夢みた世界に近づくこともできます。
どのような未来になるかは分かりませんが、ファンの世界はこれまで以上に生き生きとしているようです。私達は夢を見続け、ホグワーツからの入学許可証が届く日を今か今かと待っているのです。