ハワード・ガードナーの自然的知能とは?

自然的知能とはどんな知能なのでしょうか?そして何の目的で使われるのでしょう?この知能と自然との関係は?自然的知能を発達させた著名人には、どんな人々がいるのでしょうか?本記事を読んで答えを見つけてください。
ハワード・ガードナーの自然的知能とは?

最後の更新: 11 3月, 2021

心理学者で教育者でもあるハワード・ガードナーのおかげで、知能は単一なわけではなく8つのタイプに分けられるということが今や分かっています。彼の理論が存在する以前は、私たちの関心はもっぱら論理的数学的知能や言語的知能のみに向けられていました。これは特に学校教育の場や、知能評価が行われる場面で顕著だった傾向です。しかし幸運なことに、現在知能には他にもいくつか種類があることがわかっています。そして無論、ガードナーの提唱した自然的知能もそのうちの一つなのです。

このタイプの知能は、人の自然環境やその構成要素と関わり合う能力に関係しています。自然的知能により、私たちは自然を観察し、理解し、秩序立て、分類することができるのです。さらに、その構成要素(例えば動植物)との間に関係性を築くことも可能になります。

数ある知能タイプの中でも、おそらく自然的知能の知名度は最も低く、学業に関わる場面での評価も低いと思われます。しかしこれからご覧いただくように、私たちの先祖はこの知能を持っていたからこそ自然環境について学び、生き抜く術を身に付けることができたのです。

ハワード・ガードナー 自然的知能

ガードナーの自然的知能とはどんなもの?どんな目的のために使われる?

自然的知能は、心理学者で教育者のハワード・ガードナーが提唱した多重知能理論の中に含まれる知能です。彼は1980年代に自身の理論を構築して普及させましたが、具体的に言うと多重知能理論が生まれたのは1983年のことでした。ただし、彼がこの理論モデルに自然的知能を加えたのは1995年になってからのことです。では、自然的知能という概念は何を指すものなのでしょうか?実はこれは、自然環境の要素を、それぞれの違いを認識したり互いの関係性を理解しながらカテゴリー分けする能力のことなのです。そうすることで、私たちはこの情報を使って自分たちに利益になるような形でそれらの要素と触れ合えるようになります。

さらに、この知能を使うことで私たちは様々な環境要素と繋がり、相互作用を及ぼし合うことができます。すると、身の回りの環境全体とより良い関係性を結べるようになるのです。実際には、単なる「自然環境」の意味合いだけでなく、都会や郊外、そして農村地域の文脈もこの概念に包括されています。

元々の目的は、生き抜くこと

自然的知能はおそらく、数ある知能の中でも人類の先祖が進化し、環境に適応していくにあたって最も役立った知能だと言えるでしょう。この理由から、この知能の起源が旧石器時代にあるものと推定している専門家もいます。

生存に関わるという一面はさておき、現代社会における自然的知能とは、私たちが自然をより深く理解し、自然体系の中に階層を作ることを可能にする能力です。これは例えば、生物学などの特定の学問領域で特に役立ちます。

優れた自然的知能を持つ著名人たち

優れた自然的知能を持つ人、あるいは持っていた人と言うとどんな人がいるでしょう?チャールズ・ダーウィン(1809年にシュルーズベリーで誕生、1882年にダウン村で死去)や、地理学者で博物学者のアレクサンダー・フォン・フンボルト(1769年にベルリンで誕生、1859年に同地で死去)などはおそらく確実に高い自然的知能を持っていたはずです。

こういった学者たちは自然環境へ入り込み、そこから学びを得ました。そして動物や植物の種を特定し、それぞれの特徴を定義した上で、この情報を自分自身や社会の利益のために用いたのです。この例こそまさに、自然的知能の何たるかを指し示しています。

ガードナーの自然的知能の特徴

ガードナーは自然的知能を定義するにあたり、獲得される情報を使ってどんなことをするかよりも、その情報の種類の方を重視しました。確かに、自然的知能を一つのプロセスとして語ることは可能ですが、実際にはこの知能が扱っている具体的な要素の方が重要なのです。

前述の通り、これらの具体的な要素と言うのは自然を構成する要素のことを指しています。つまり、例えば目の前にいる植物あるいは動物の解剖学的特徴なども要素の一つです。要するに、様々な形態の生命を有する自然環境あるいは空間に直面した時、人の脳は自然的知能を作動させるのです。

自然的知能に関与するプロセス

自然的知能が用いられている時、人の頭の中では他にどんなプロセスが作動しているのでしょうか?作動するのは主に、観察、選択的注意、持続的注意、分類化やカテゴリー分けのスキル、推論の実施、関係性の特定などのプロセスです。さらに、環境に関連した仮説を立てるという作業も行われます。そしてこの仮説が今度は、自然をより深く知り、より正確に評価することを可能にするのです。ここで少し哲学的な考え方をしてみると、自然的知能とは実は、美しさを認識する手段であり、環境への真の愛情を持つための手段でもあるということが言えるでしょう。

“自然への愛情を持ち続けなさい。それが芸術をもっと深く理解するための真に正しい方法なのだから”

-フィンセント・ファン・ゴッホ-

自然的知能はその他の知能と重なり合っているのか?

自然的知能は、場合によってはガードナーの提唱したその他の知能と重なることがあります。その一例が、言語的知能のケースです。例えば私たちが、自分の特定した要素を概念化しようとする時、それが自然界の要素だったとしても、「自分は言語的知能を使っている」と主張する可能性がありますよね。

さらに、論理数学的知能を用いれば階層やカテゴリーを理解することができますが、そもそもその階層やカテゴリーと言うのは自然的知能のおかげで確立されているものです。そのことからもお分かりいただけるように、これら二つの知能は互いに補完し合っています。また、空間的知能に関しても同じことが言えるでしょう。この知能は、自然的知能によって獲得した知識を、何らかの具体的な環境に対してリアルタイムで適用する役割を果たしています。

最後になりますが、自然的知能が数ある知能の形態の中でも有名な部類に入らないことは確かです。しかし、生き抜くことや環境に適応することに関して私たちの先祖が最も恩恵を受けた知能であることに疑いの余地はありません。自然的知能には多数の脳領域が関与していますが、興味深いことに、概して左脳よりも右脳の方がこの知能との関係性が深いと考えられています。

“自然は決して急がない。原子のレベルで少しずつ、自身の仕事を成し遂げるのだ”

-ラルフ・ワルド・エマーソン-

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知能の発達は、個人差に関する心理学の一部として広く研究されてきました。しかし「知能」という用語の曖昧さは、いくつか問題を生んできました。そのため知能について説明しようとするモデルは多数存在し、それぞれが非常に様々な観点から組み立てられています。



  • Gardner, H. (2006). Schaler, Jeffrey A., ed. “A Blessing of Influences” in Howard Gardner Under Fire. Illinois: Open Court.
  • Gardner, H. (1998). A Reply to Perry D. Klein’s ‘Multiplying the problems of intelligence by eight’. Canadian Journal of Education, 23 (1).
  • Gardner, H. (1989). To Open Minds: Chinese Clues to the Dilemma of American Education. Nueva York: Basic Books.