恐怖という感情が存在する意味とは?

28 12月, 2020
私たちはみな、生涯のいずれかの時点で恐怖というものを経験してきました。しかし、あなたは恐怖の存在理由について考えてみたことはありますか?

恐怖は、1872年にチャールズ・ダーウィンが特定した6つの基本感情のうちの1つで、楽しみ、悲しみ、嫌悪、怒り、そして驚きが残りの5つです。目が大きく見開かれる、口元が震える、当惑を感じるなど、恐怖を感じた時の身体表現は容易に特定することができます。人間なら誰しもが恐怖を感じたことがあるはずで、「恐れる」というのがどういう感覚なのかを知っているはずです。では、恐怖の存在理由とは何なのでしょうか?

ありふれた感情であるにも関わらず、私たちはなぜ恐怖を感じるのか、理由はあるのか、そして恐怖が伝えようとしているメッセージは何なのかを知っている人はほとんどいません。恐怖という感情が無かったら自分はどんな人間になっていただろう、と想像してみたことはありますか?恐怖から解放された人生など実現可能なのでしょうか?一緒に掘り下げていきましょう。

恐怖の存在目的は、生存を確かなものにすること

全ての人間の感情には目的があります。例えば、怒りは境界線を設けるのに役立ちますよね。驚きは何かを認識したり発見するのに重要ですし、幸福は共有の心を育みます。嫌悪は拒絶を動機付け、悲しみは熟考を後押ししてくれる存在です。そして、恐怖心は危険から身を守るのに一役買っています。

ウェブスター辞典では、恐怖(fear)を「危険を予期したり危険に気づいたりすることで引き起こされる、不快で、しばしば強烈な感情」と定義しています。この語源は「fær」という、「大きな不幸、突然の危険、災難、突然の攻撃」などを意味する古期英語です。恐怖と似た意味を持つ言葉は、alarm(危険に突然気づいて生じる不安)、dread(これから起こると予想されるものに対する強い恐怖)、fright(ぎょっとするような突然の恐怖)、panic(突然の、わけのわからない恐怖)、horror(ショックや不快感を伴う強い恐怖)、terror(極端な恐怖の感情)、phobia(恐怖症)などたくさんあります。

恐怖 感情 意味

したがって、恐怖とは生物学的に受け継がれてきた反応であり、脅威から身を守ることを可能にしてくれます。

  • 恐怖は、何世紀にも及ぶ進化の中で形成された遺伝的なものです。素早い自動的な反応を通して、危険や潜在的に危険な状況から自らの身を守ることを可能にします。言い換えれば、生存を助ける感情だということです。
  • これは本物の、あるいは想像上の恐怖の知覚によって生じる、強烈で不愉快な感情です。危険を前にすると、地球上の全ての動物が恐怖を経験します。

恐怖は適応を容易にしているほか、各個体が苦境的状況に素早く、かつ効率的に反応できるように発達してきた生存メカニズムや防衛メカニズムの構成要素でもあるのです。その意味で恐怖は、個人の生存のみならず人類全体の生存に効果的な、正常でメリットの多い感情だと言えるでしょう。

恐怖は、その強度が脅威の深刻度に見合うものである時には「正常」と見なされます。つまり、恐怖の対象物に人の生命を脅かしかねないような特徴がある時、ということです。

恐怖と頭脳との関係性

fear(恐怖)が最大限に高まって現れた状態が、terror(極端な恐怖の感情)です。しかし病的な恐怖の領域内では、恐怖の度合いとその人が直面している実際の危険との間に関連性はありません。これは例えば、フォビア(恐怖症)や、鳥や無毒のクモなどをはじめとする非脅威的な動物への恐怖といったケースです。また、大抵の場合この種の恐怖は不安感と関連しています。

一方で、恐怖とは特定の行動や複雑な生理学的反応の発達に繋がる主観的な感覚です。命に危険が及んでいる緊急事態においては、例えば、人間を含めて全ての動物に備わっているであろう警報システムが作動します。皆さんも聞き覚えがあるかもしれませんが、この警報システムは「戦うか逃げるか反応(闘争か逃走か反応)」と呼ばれるものです。

何らかの刺激(普通、聴覚刺激あるいは視覚刺激)の感覚から得られた情報は視床に向かいます。この視床というのはある種の情報再配信ステーションのような、脳がその刺激が危険か否かを評価するための部位です。

そして危険だという判断がなされると、脳は扁桃体という脳内の警報ベルのような部位と、視床下部 – 下垂体 – 副腎系(HPA軸)とを活性化させます。すると今度はこれが引き金となって大量のアドレナリンが放出され、有害事象を切り抜けるのに役立つような反応を取れるようになるのです。

恐怖の存在目的は、体内の重要システムを活性化させること

恐怖は心臓血管系を活性化させるので、これにより血管が収縮します。すると血圧が上昇し、四肢への血流量が減少します。そして身体は超過した血液を骨格筋へと送り直し、緊急事態の間に必要になった場合に備えて生命維持に必要な器官が血液を使用できるようにしておくのです。

恐怖を感じている人は、皮膚への血流が減少した結果顔が青ざめることが多くなります。また、震えが起きたり毛が逆立ったりといった現象も引き起こされますが、これらは血管が収縮している際の熱を維持するのに役立ちます。こういった防衛反応により人は暑さや寒さも感じますが、これは極端な恐怖を感じたことのある人なら経験したであろう感覚です。また、呼吸のスピードが早まり、大抵の場合深くなるので、必要な酸素を血液内でより素早く循環させられるようになります。

血圧の上昇により脳へもたらされる酸素量が増えると認知プロセスや感覚機能が促進されるので、警戒態勢が強化され、緊急事態にも迅速な判断を下すことが可能になります。

  • 肝臓も血液中へのグルコースの放出量を増やし、筋肉や脳などの重要な器官へより多くの血液を供給しようとします。
  • 瞳孔が拡張します。これは危険が及んでいる状況でより視覚を研ぎ澄ませるためだろう、というのが専門家たちの考えです。
  • 聴覚は鋭くなる一方、消化は停滞し、これにより口内の唾液量が減少します。
  • 短期的に見ると、無駄を省いて消化活動を一時停止させることで、身体を次の行動や集中に備えさせることができるのです。その結果、強烈な恐怖を感じている人は尿意や便意を感じたり、嘔吐すらしてしまう場合もあります。
恐怖という感情が存在する意味とは?

闘争か、逃走か、あるいは硬直か

人間の戦うか逃げるか反応は、生存に欠かせない重要なメカニズムでした。私たちの先祖は四六時中危険と隣り合わせで暮らしていたため、脅威に素早く反応できた者たちの方がかなり生存確率が高かったのです。

狩猟生活では、特に動物からの攻撃という脅威に常に晒されることになります。その結果、ほぼ毎日扁桃体が目まぐるしい働きを見せていました。

危険に直面すると、人はそこから逃げ出すかもしくは試練に立ち向かうという選択をします。両者は全く異なる反応ですが、その前兆となるのはどちらの場合も硬直です。硬直が起きるのは先ほど説明した認知プロセスや神経生理学的プロセスが起こっている時で、この瞬間まさに身体は行動を起こすための備えをしているのです。

この短時間の間に、脳は視覚と聴覚を鋭くさせます。心拍や呼吸が早まるのが感じられ、筋肉は緊張し、内臓のあたりに違和感が生じます。突然全ての焦点がより定まってきて、発汗と震えが起き、頭の中は悲惨な考えで埋め尽くされるのです。

恐怖の存在目的の一つは、人に決断力を持たせ、即座の行動(闘争か逃走)を起こさせることです。そして恐怖によって引き出される表情は周囲の人々に危険が差し迫っていることを伝えるシグナルにもなるので、これによって全員の生存確率を高めることができます。

まとめると、恐怖は非常に有用性の高い感情だということです。生存のためには絶対に欠かすことができないものであり、不快な感情であるとはいえ、即座に拒絶すべきではありません。結局、一番古い世代の先祖たちが危険から身を守り、厳しくて脅威的な環境を生き抜いて来られたのは、恐怖の助けがあったからなのです。